2018年05月10日

No.326 日本アジアG(コード3751)の敵対的TOBは成功するか?

 4月26日(木)に日本アジアグループという会社がサンヨーホームズという会社に対してTOBを実施することを公表しました。以前コラムでお伝えしたとおり、まったく話題になっていませんが、これは敵対的TOBです。この敵対的TOBは成功するでしょうか?

答えは「成功するかどうかはわからんが、必ず成立する」です。なぜなら、TOBの成立要件に下限が付されていないからです。以下、3751日本アジアGが設定した今回の敵対的TOBの条件です。

 

公開買付価格                                  :1,200円

※公開買付け実施の公表日の前営業日である平成 30 年4月25 日の終値 855 円に対して 40.35%、同日までの過去1か月間の終値の単純平均値 875 円に対して37.14%、同過去3か月間の終値の単純平均値 900 円に対して 33.33%、同過去6か月間の終値の単純平均値 887 円に対して 35.29%のプレミアムをそれぞれ加えた金額に相当。

公開買付期間                                  :4月27日(金)~6月12日(火)までの30営業日間

買付予定の株券等の数                    :3,702,708株

買付予定数の下限                           :なし

買付予定数の上限                           :3,702,708株

買付前の公開買付者の議決権数      :5,048個(4.00%)

買付後の公開買付者の議決権数      :42,075個(33.34%)

買付代金                                          :4,443,249,600円

公開買付代理人                               :三田証券

決済の開始日                                  :6月19日(火)

 

 ベジさんと一緒です。TOBの下限が付いていないのです。「最低でも●株集まらないと、このTOBは不成立です」という条件がないのです。ですから、100株の応募しかなくてもTOBは成立します。一方、上限は付いていますので、上限を超えて応募があったら按分です。株価を見ておきましょう。

 TOB価格である1200円に限りなく近づいていますが、1200円には届いていません。これは、今回のTOBは、買っても最大で発行済株式総数の30%程度だからでしょう。マーケットは「比例按分になる可能性が高い」と捉えているのでしょう。では株主構成を見ます。

 TOBに応募しないであろう株主は、法人株主68.45%とサンヨーホームズ従業員持株会1.13%の合計69.58%です。上位の個人株主は属性がよくわかりません。まあ、これだけ安定株主がいたら、とてもじゃないけど過半数など取れるわけがありません。なお、今回のTOBで取得する予定の株数は3,702,708株です。発行済株式総数12,620,000株から安定株主保有分である8,778,757を引いた3,841,243株が浮動株です。つまり浮動株のうち96.39%を今回のTOBで集めようとしています。

 「今回のTOB、上限は付いているものの、安定株主が応募しないことを考えると、実質的には全部買い取ってもらえるんじゃないか?」と考えてもよさそうですが、市場株価は1,200円から少し遠ざかっているように思います。サンヨーホームズは今年の2月19日に

「第三者割当による第1回及び第2回新株予約権(行使価額固定型)の発行並びに 第三者割当契約の締結に関するお知らせ」を公表しています。

http://www.sanyohomes.co.jp/ir/news.html

 割当先をUBS AG London Branchとする第1回新株予約権12,000個(発行価額645円、行使価額1,000円)、第2回新株予約権10,000個(発行価額529円、行使価額1,200円)を発行しており、これによる潜在株式数は2,200,000株です。これが日本アジアGの狙いかと思いましたが、この予約権には行使停止指定という条件が付いており、「当社は、割当予定先に対して、本新株予約権の全部又は一部につき、行使することができない期間を指定することができます。よって、通常時においては原則割当予定先の裁量によって行使がなされていくものの、当社の裁量により、停止指定の期間(3取引日以上、60取引日以内の期間)及び停止指定の対象となる本新株予約権の数を決定することができ」となっています。TOBが公表された4月26日の翌日27日には、さっそくサンヨーホームズが新株予約権の行使停止指定を行ったことが公表されています(行使停止期間は5月1日から7月26日までの60取引日)。なお、新株予約権そのものの譲渡については、サンヨーホームズの取締役会の承認が必要です。

 サンヨーホームズの株主構成を見る限り、安定株主でガチガチです。日本アジアGの業績推移はあまり芳しくないようです。サンヨーホームズを持ち分法適用会社にして業績をよくしたいのでしょうか?

 いずれにせよ、また日本で敵対的TOBが起きました。時価総額は現在140億円とさほど大きいわけではありませんが、ソレキアよりもずいぶん大きいです。徐々にターゲット企業の規模が大きくなっているような気がします。

 余談ですが、日本アジアグループって10年ほど前、アジア航測の株式を買い占めませんでしたっけ?

 

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