2018年01月17日

No.249 ファンド主導の業界再編は単なる思い付き

 旧村上ファンドが電子部品商社業界に目をつけています。1月5日にまたUKCホールディングスの変更報告書を提出しており、多少買い増したことがわかりました。1月11日にはエクセルの保有割合も24.33%から25.29%に上昇したことがわかりました。旧村上ファンドは電子部品商社をどうしたいのでしょうか?黒田電気に対する株主提案を振り返ってみましょう。

 これは、旧村上ファンドが行った社外取締役選任に関する株主提案に記載されていた「提案の理由」の一部抜粋です。売上高3,000億円以下の企業が乱立していること、競争力を向上するためにも構造改革が必要であること、規模の利益を追求するために経営統合が必要であること、を主張しています。はー、なるほど。「電子部品商社業界は数が多すぎるから、一緒になれ!」ということですね。素人の意見ですね。こんなことなら誰でも言えます。私でも言えます。でも、電子部品商社の方にそんなことは言いません。なぜならプロだからです。恥ずかしくて、こんな誰でも言えるようなことをプロに言ったら笑われますからね。電子部品商社業界は代替わりの時期に来ているのかもしれませんし、そういう時期にくれば経営統合が実現されても不思議はありません。ただし、それは理由の一つであって、すべてではありません。旧村上ファンドは大事なことをさらっとしか触れていません。もっとも重要なのに・・・。それは「当社と経営統合シナジーが見込まれると思われる会社」です。ここが一番重要ですよ。黒田電気だって考えていない訳がないでしょう。でも一番重要なことだから時間がかかるのです。結婚と同じです。お付き合いをしてから、結婚に至るまでには時間がかかるでしょう?

 旧村上ファンドは電子部品商社業界の再編について「オレたちが出したアイデアだ!」と思っているのかもしれません。でも、代替わりの時期に来ており、かつ、誰が見ても数が多いと思われる電子部品商社の経営統合など、誰でも考え付きます。そんなのはアイデアではなく、「単なる思い付き」と世間では言います。

 コラムNo.241でも触れましたが、旧村上ファンドの投資先は以下のとおりです。EDINETで調べたものですから、抜け漏れがあるかもしれません。見てみると、電子部品商社にたくさん投資しています。

 彼らは黒田電気をMBKパートナーズに売り渡しました。黒田電気を売り渡したものの、他にもたくさん電子部品商社業界の株式を持っています。特に三信電気やエクセルについては、保有割合はかなり高くなっています。黒田電気を主軸にした電子部品商社業界の再編が進んでいくのでしょうか?しかし、そこには本当にシナジーはあるのでしょうか?もしかして、ホールディングスを作って、その傘下に会社をぶら下げるだけの再編ではないのでしょうか?

 振り返ってみると、阪急と阪神の経営統合は本当によかったのでしょうか?プロに聞いてみたいものです。単に、両社とも同じ関西だから、という思い付きだけで旧村上ファンドはくっつけたのではないでしょうか?

 電子部品商社業界は、旧村上ファンドが主張するとおり、本当に業界再編が必要な時期に来ているのかもしれません。しかし私は、業界再編の主役はファンドではなく事業会社であるべき、と考えます。

 

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