2017年05月29日

No.96 第2話:第二の失敗~敵艦見ユ、ナレドモ買収防衛策導入セズ~

 ソレキアにおけるバルチック艦隊とは?佐々木ベジさんでしょう。では、バルチック艦隊である佐々木ベジさんは、いつソレキアの前に現れたのでしょうか?公表資料を見る限り、2015年9月中間期の四半期報告書において、第3位の株主であることがわかります(正確には佐々木ベジさんが株主ではなく、佐々木ベジさんが会長をつとめるフリージア・マクロスが株主です)。

ですから、ソレキアは2015年10月中旬くらいにはフリージア・マクロスが自社の株式を取得したことに気付いたでしょうし、「なぜフリージア・マクロスがうちの株式をこんなにたくさん買っているんだ?」ということを話し合っていたと思われます。当然、主幹事にも相談したでしょう。

佐々木ベジさんがソレキアに対して敵対的TOBを仕掛けたのは、今年2017年2月です。フリージア・マクロスが株主に登場してから、1年4か月ほど経過しています。この間、何をしていたのでしょうか?

いくつか考えられるのですが、「しばらく様子を見ていた」ということかと思います。おそらくソレキアもフリージア・マクロスについて調べたでしょうし、主幹事にもどうすればよいか相談したでしょう。その際、もしかしたら主幹事から「まだ5%未満ですから、しばらく様子を見たらどうでしょうか?今後、買い増してくるようなことがあれば買収防衛策の導入も検討しましょう」といったアドバイスを受けていたのかもしれません。

はい、愚かなアドバイスです。なぜか?このアドバイスは何も答えていないのと同じです。様子を見てどんどん買い増してくるようであれば、誰でも「買収防衛策を入れなくては!」と考えます。全く価値のないアドバイスです。「でも、まだ5%も買っていない状況で買収防衛策を入れましょう、なんていうアドバイスをし難いのではないか?」 いや、そんなことはありません。

日建工学という会社を見てみましょう。2016年3月末の株主構成は以下のとおりで、フリージア・マクロスが株主です。

フリージア・マクロスは2015年2月23日に5.26%の大量保有報告書を提出しました。その後、2015年3月10日、3月19日、4月3日に変更報告書を提出しました。4月3日の時点では8.36%保有しています(直近の持分は8.45%)。日建工学は2015年4月24日に事前警告型の買収防衛策導入を公表しました。フリージア・マクロスによる大量保有報告書の提出から2か月以内に買収防衛策を策定し、公表したということです。2か月もあれば十分対応可能です。

フリージア・マクロスに株式を取得された2社の対応はあまりに異なります。日建工学は買収防衛策を導入したのに、ソレキアは導入しなかった。もちろん日建工学の場合、フリージア・マクロスから立て続けに変更報告書が提出されたことも影響しているかもしれません。

ソレキアは日建工学が買収防衛策を導入したことを知っていたのでしょうか?知っていたのに導入しなかったとしたら、大きな間違いです。なぜなら「佐々木ベジは買収防衛策を導入した日建工学ではなく、買収防衛策を導入していないソレキアに触手を伸ばすかもしれない」と考えなかったのでしょうか?「日建工学が導入したのだから、うちも導入しないとまずいぞ」と少なくとも考えるべきでした。もしかしたら「2017年6月の株主総会で導入しようか」と悠長に考えていたのかもしれません。もしかしたら、日建工学の存在や買収防衛策を導入したことを知らなかったのではないでしょうか。

皆さんの主幹事証券の担当者に「エフィッシモや佐々木ベジがうちの株式を買い付けたとわかったら、●●さん(●●証券さん)ならどういうアドバイスをしますか?」と質問してみてください。どんな回答でしょうか?ぜひお聞かせください。なお、「●●さん、ソレキアのケースってどうなってるの?」と証券会社に質問した会社様がいらしたようですが、いずれの会社の担当者も「え?なんですか?ソラキタ?」といった具合の回答だったそうです。

ソレキアは、買収防衛策さえ導入していれば、こんなことにはなりませんでした。繰り返しですが、佐々木ベジも公開買付届出書で以下のように述べています。

 何らかの買収防衛策が導入される可能性があるから、ソレキア経営陣と面談の機会を持っていない・・・つまり佐々木ベジは「買収防衛策を導入されるとやっかいだ」と思っていたということです。だから日建工学ではなくソレキアが買収対象になったのではないでしょうか?買収対象となる候補が2社ある場合・・・当然、買収防衛策を導入していない方を選びます(正確には、フリージア・マクロスが大株主として登場する会社は2社だけではありません)。ソレキアは、株主構成を見る限り、簡単に買収防衛策を導入できました。非常にもったいない。敵艦が見えているのに、何もしなかった。日々の訓練を怠っているから有事の初動を間違えた。雇った用心棒も・・・。

 

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