2018年03月15日

No.290 ファナックを正確に分析してみる

 そうは言ってもファナックはIRやSR活動に関して外注するものの、大胆な株主還元策を公表するなど、株主に対するスタンスを変えたように見えます。なぜでしょうか?株主構成を見てみましょう

 外国人株主比率がむちゃくちゃ高いですね。安定株主なんていませんね・・・。これが株主に対する向き合い方を変えた要因でしょうか?他に要因はないでしょうか?

米サード・ポイント、ファナック株取得を表明2015/2/10付日経

米投資ファンドのサード・ポイントがファナック株を取得していたことが、同社が投資家向けに出した書簡で明らかになった。書簡はファナックについて「株主価値のために何もしない不合理な資本構造を持つ」などと指摘。1兆円規模の手元資金を有効活用するため、定期的な自社株買いをするよう求めた。サード・ポイントは著名投資家ダニエル・ローブ氏が率いるアクティビスト(物言う株主)ファンドで、かつてソニーに対して映画・娯楽部門の分離を求めるなどして注目を集めた。2014年にはIHIやソフトバンク株の取得を表明した。9日付の書簡は、ファナックの株価が安く放置されている理由として「同社が原則として投資家やアナリストと意思疎通しないこと」や「将来の利益見通しが曖昧である」などと指摘した。ファナック株の取得額は明らかにしていない。日経平均株価が小幅安となった10日の株式市場でファナック株は逆行高となり、前日比4%高の2万785円まで上昇する場面もあった。

 これですな・・・。ようはサード・ポイントというアクティビストに株式を取得され、大幅な株主還元の実施を求められていた。仮に株主提案でもされようものなら、ファナックの株主構成だと可決されてしまうリスクがある。だからファナックは自ら大幅な株主還元策の実行を公表した、ということでしょう。

ファナックは「世の中、ガバナンス重視の風潮になっている。当社もこの風潮を重視しない訳にはいかない!これからは株主重視の経営だ!」と考えた訳ではないということでしょう。「うるさい株主に持たれちゃったな。株主提案されて可決されるリスクもある。だったら自分たちで策を公表してしまおう」と考えたということではないでしょうか?

サート・ポイントはファナック株式を5%超保有して大量保有報告書を提出した訳ではありません。何%保有していたのかはわかりませんが、ファナックの時価総額の大きさを勘案すると、せいぜい1~2%程度ではないでしょうか?でもファナックの株主構成を見ると、半分以上が外国人株主なのです。仮にサード・ポイントが大幅な株主還元を要求する株主提案を実施したら?ISSは間違いなく株主提案に賛成推奨するでしょう。そして外国人株主が賛成し、株主提案が可決された可能性はかなり高かったと思います。

つまりファナックが株主還元姿勢を変更したのは、実際に株主還元策の変更を要求されたことと自社の株主構成が要因だったということです。CGコードの制定や世の中の流れなどとは関係ないということです。

いずれコラムでまとめますが、3月14日(水)の日経に「企業と株主の対話通じた統治改革急げ」(2面)という社説がありました。持ち合い解消の動きが進展し、金融機関や事業会社が株式を売却し、外国人を中心とした機関投資家が上場企業の株式を取得している状況を勘案すると、当然、株主主導のガバナンス改革が進むのでしょう。企業にとって果たしてよいことなのかどうかはわかりませんが、進んでいくことは間違いないでしょう。「買収防衛策なんてもうダメ!」「持ち合いなんてもってのほか!」という時代をどううまく生き抜くかがポイントです。

 

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