2018年03月26日

No.296 古今東西 お家騒動を起こすとロクなことにならない

 筆頭株主である古河電工に役員人事の見直しを要求されたUACJですが、エフィッシモが株式を取得し大量保有報告書を提出しました。保有割合は6.79%で、保有目的は「純投資」です。まあ、保有目的などいつでも変更すればよいだけの話です。とりあえず、UACJの株主構成を見ておきましょう。

古河電工は24.9%を保有しており、第2位株主で7.74%を保有する新日鐵も古河電工に同調していると報道されています。古河電工は社長に関しては異論がないものの、会長と副会長に異論があるようです。実はUACJの「お家騒動」に関しては、少し前にコラムを書きかけていました。私の感想は「これ、表に出してやる話なんですかねえ・・・。」です。なぜこんな状態になってしまったのでしょうか?

答えは簡単です。古河電工の持分比率が中途半端だからです。古川電工がUACJの株式の過半数を保有していたらこんなことにはなりません。当然、水面下ではもめたかもしれませんが、過半数保有していればUACJサイドは文句を言えません。だって人事権を握られているのですから。24.9%しか持っていないからこんなことになるのでしょう。また、24.9%しか持っていないのに「社長はいいけど、会長と副会長は気に入らん!」って言っていいんですかね?ファンドならわかりますよ。気に入らなければ株主提案もするでしょうし、プロキシーファイトもするでしょう。しかし、わざわざグループ会社の人事に反対しているというプレスまで出しますかね・・・。当然、事業会社と言えども投資しているのですから、株主としての権利があるのは当たり前です。でも、プロキシーファイトなんてやったら、UACJは大変です。対応に手間とコストがかかります。そんなことはやらずに、水面下で処理すればよいのに・・・。というのが私の第一印象です。

やるとしても、同じ記事の中にある商社のように、株主提案すればよかったんですよ。株主提案は適時開示事項ではありませんから、提案してもUACJ側に開示義務はありませんし、開示しないでしょう。招集通知が発送されるまでは株主提案されたことはわかりませんから(1点補足しますが、増配提案の場合はちょっと異なります。決算発表のときに会社の配当案を出しますから、増配の株主提案をされている場合は会社としての配当案を公表する際に何らか触れなくてはならないと思います)。古河電工サイドの今回のやり方は、ちょっとヘタだったように思います。

そして、エフィッシモが出てきちゃいました。金のにおいを嗅ぎ取ったのでしょうね。記事には「このファンドが思い描くのは、古河電が対案人事の株主提案→委任状争奪戦→古河電側の勝利→企業統治の改善期待による株価上昇、というシナリオだ。」とあります。まあ、こういったファンドが考え付きそうなシナリオです。それにしても古河電工はこういうリスクを考えなかったのでしょうか?もめ事が起きているところにアクティビストが入り込んでくるのはあり得ることです。古河電工と新日鐵住金の持株比率の合計は32.64%です。これだけでも人事をひっくり返すことはできるかもしれませんが、厳しいという見方もできます。そこに、6.79%を保有するエフィッシモが突如として浮上してきました。キャスティングボートはエフィッシモが握ったと言っても過言ではないでしょう。さて、古河電工と新日鐵住金はエフィッシモと協調行動を取るのでしょうか?ないでしょ~。少なくとも新日鐵住金はしないでしょ?だってアクティビストのことを毛嫌いしてそうですから。その昔、東京鋼鐵と大阪製鐵の経営統合議案がいちごアセットのプロキシーファイトにより否決に追い込まれました。当時、大阪製鐵株式の約60%を保有していたのが新日鐵です。そのような経緯を考えれば、新日鐵住金がエフィッシモというアクティビストと対話をして協調行動を取るとはとても思えません。まあ、結果的に同じ投票行動をすることはあり得ますが。

今回の古河電工の行動は、はっきり言って「あさはか」ではないでしょうか。ファンドのマネをよーーーく考えずにやってしまった結果、UACJはエフィッシモに目をつけられてしまいました。株価が上がってすぐにEXITしてくれればいいですよ。でもそんなに簡単にEXITしてくれますか?長い付き合いになるかもしれませんよ。また、古河電工自体がエフィッシモのターゲットになるかもしれませんよ。古河電工の時価総額ってたった4,000億しかないのですから。財務はさほどよい会社ではなさそうですが、投資有価証券を1,252億円も保有しています。「他人のガバナンスに文句を言うのだったら、古河電工さん、あなたも持ち合いをやめませんか?」ってエフィッシモに言われたらどうするんですかね。

さて、エフィッシモですが、どういう行動に出るでしょうか?大量保有報告書を提出したのが3月23日(金)です。そして、6月総会における影響力を高めたいのであれば、権利付最終売買日である3月27日(火)までに株式を更に取得する必要があります。最近のUACJの出来高を見てみると、古河電工がUACJの役員人事に反対していると公表したのが2月27日ですが、3月に入ってから出来高が増えています。エフィッシモが大量保有報告書を提出したのは3月27日ですが、報告義務発生日は3月15日(木)です。3月16日以降も出来高が多いですし、特に3月20日、22日、23日はかなり増えています。推測に過ぎませんが、エフィッシモが買っているように思います。また変更報告書が提出される可能性はあると思いますし、3月27日までドンドン追加取得していけば、更にまた変更報告書を提出するかもしれません。

3月23日の株価は29円安の2,656円です。PER9.17倍、PBR0.67倍です。PBRの水準は低いですから、アクティビストがこれから買い増しても不思議はない状態です。

これがお家騒動を公にした結果です。はっきり言って、読みが甘いです。こんなことをやれば、アクティビストみたいな輩が寄ってくるリスクがあるとなぜわからなかったのか。いくら言うことを聞かないグループ会社とは言っても、エフィッシモのターゲットにさせちゃあいかんでしょ?古河電工だって困ったことになるかもしれませんよ。エフィッシモが目を付けたのはUACJではないのです。古河電工・新日鐵住金ともめているUACJなのです。もめているグループとして目を付けたのです。一応、古河電工の株主構成も見ておきましょうか。

法人株主6.87%、みずほ信託銀行みずほ銀行口3.42%、朝日生命保険1.93%、の合計12.22%が安定株主比率です。低い~。

そもそも、古今東西、お家騒動があった会社はロクなことになっていません。大塚家具とか出光興産とか・・・。他にもたくさんあります。少なくともグループ会社を公衆の面前で血祭りに上げるようなマネはしないほうがよいと思います。

 

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