2018年03月29日

No.299 企業防衛の基本は突き詰めること

 企業防衛の仕事だけではなく、仕事全般に言えることだと思いますが。例えばですが、コラムNo.283「こういう守り方もしてみる~人質とりましょう作戦~」で述べた作戦をアドバイザーに相談したとしましょう。たぶん「いやー、やめたほうがいいんじゃないですかねえ・・・」というアドバイザーが多いでしょう。なぜ?と聞いたら「いやー、株式市場的にはちょっと・・・」とか「投資家から批判される可能性が・・・」とか「いやーどういう理屈で?」とかあいまいなことしか言わないでしょう。なぜダメなのかを論理的にではなく感覚的・感情的にしか説明しないアドバイザーが多いと思われます。

 私は一言申し上げたい。「突き詰めましたか?」と。株式市場的にはなぜダメなのか?投資家からなぜ批判されるのか?なぜ批判されるからと言ってやめなければならないのか?アクティビストに狙われた会社のこれまでの行動を見ていると、本当に企業防衛について突き詰めて考えたのか疑問を感じることがあります。なんで、38%もの株式を買われるまで何にもしなかったのか?できることがたくさんあったのに、なぜ放っておいたのか?「いや、放っておいたのではない。検討したけど、安定株主比率も低いからできることが限られていたのだ」

 そんな訳ない。私には、できることがたくさんあるのに、アドバイスされていない会社が多いように見えます。そして、最終的にはファンドに買われて売り飛ばされた。知恵がないのか、やれることは限られていると最初っからあきらめているのか。

 「突き詰めて考えてないでしょ?」もしくは「お金儲けに目がくらんで、できもしないことを引き受けたでしょ?」と言いたいです。世の中や投資家から批判される企業防衛行動であっても、言い過ぎかもしれませんが究極的には違法行為でなければ問題ないのではないでしょうか?違法行為ではないけど、世の中から批判される方法なのであれば、批判されないような理屈を考える。どうしても批判されるようであれば、せめて訴えられないように(訴えられても負けないように)理屈を考える、とか。そういう難しい理屈を考える力がなければ、企業防衛に関する仕事などしてはいけないのです。会社と会社を取り巻くステークホルダーが不幸になりますから。

 今の時代、買収防衛策なんて時代錯誤ですよ!持ち合いなんてもってのほか!では、時代錯誤ではないという理屈や主張を考えればよいだけです。買収防衛策や持ち合いが必要と判断すれば、あとはお化粧をすればよいだけです。持ち合いを否定することは、丸腰で戦場に行けと言っているようなもんだと私は思います。きれいごとだけでは会社経営はできないし、株式市場で生き抜くことなどできないと思います。

 アドバイザーの仕事は、脳みそに汗をかくことです。世の中、脳みそに汗をかかずに金を稼ごうとする輩が多すぎる。三信電気という会社を覚えていますか?旧村上ファンドに株式を38%も買われてしまいました。最初に大量保有報告書を提出したのは2015年6月29日で、提出者は村上世彰氏です。その後、C&Iホールディングスが加わったようです。最近の変更報告書の提出状況を見ると、11月15日、12月7日、1月25日、2月21日、3月20日となっています。2月21日時点で保有割合は37.27%でしたから、仮に株主提案を提出したとしても十分可決できそうな水準ですが、容赦なくさらに買い増して3月20日に変更報告書を提出し、保有割合は38.28%になりました。勝負ありました。昨年は黒田電気に対する株主提案が可決されましたが、今年は三信電気に株主提案が提出され可決されることでしょう。

 これがアドバイザーが脳みそに汗をかかなかった結果です。とことん会社と議論して突き詰めるアドバイザーが少ない気がしてなりません。やらない理由やできない理由を考えるのは簡単ですが、今の世の中、なんとかやりぬく理由や理屈を考えることに価値があると思うのです。普段からターゲットを模索し、戦略を練った上で投資してくるアクティビストたちと対決するのがアドバイザーですから、普段からトレーニングして脳みそを鍛えておく必要があります。

 

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