2023年06月11日

No.1549 公正な買収の在り方と法改正はセットで考えたほうがよい

以下、6月11日の日経社説です。

企業の成長支える買収制度を整えよう

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK06A490W3A600C2000000/

公正な買収の在り方に関する研究会について私は何度か「主役不在の研究会の意見に何の意味があるのだろうか」と言ってきました。学者、弁護士、機関投資家、金融機関、日立製作所。。。敵対的買収などされるリスクのない人たちばかりです。買収防衛策を導入している会社が1社も委員になってない。

そして以下の「公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループ」

https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tob_wg/shiryou/20230605.html

メンバーは以下。

https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tob_wg/shiryou/20230605/02.pdf

公正な買収の在り方に関する研究会とほぼ同じように見えます。日立に加えて伊藤忠商事が入ってますね。敵対的買収をしたほうの会社です。だったらデサントも委員にしてあげてよ。敵対的買収をされたほうの意見も大事でしょ?研究会の指針や法制度に魂を込めたいのなら、買収される側の意見もきちんと聞いたほうがよいと思います。ちゃんと委員にして。

上場会社を取り巻く環境はかなり厳しくなっています。こういうと「これまで株価を安値に放置していた上場会社の経営者に責任がある」という人がいます。おっしゃるとおりですね。私もそれは思います。なので、東証のPBR1倍割れ改善要請についてはしっかりと対応していきましょう。「アクティビストが来てから考える。だって今やったら損じゃん」といった考えは捨てましょう。やるべきことをやらない会社にはそのうち誰も投資してくれなくなります。

上場会社は、公正な買収の在り方とTOB・大量保有報告制度の見直しはセットだと考えたほうがよいです。何が言いたいかと言うと「ちゃんとTOBルールと大量保有報告ルールは上場会社が不利にならないよう制度を見直した。だから買収防衛策はやめろ。これからは公正な買収に対してはきちんと向き合え!」と言われるようになります。TOB・大量保有報告ルールが整備されたのだから、買収防衛策などやめろと必ず言われますよ。これ、2006年12月のTOBルール改正後も言われたんですよ。だから買収防衛策を廃止した会社も増えたんです。「TOBルールが改正されて買収防衛策の目的とする時間と情報の確保が一定程度担保されたので廃止する」と。

TOB・大量保有報告ルールが改正されたら買収リスクが低下するか?しない!絶対にしない!ルールが改正されても正体不明な買収者、あやしい買収者は必ず現れます。ルールの隙をつくのが彼らの仕事なんですよ。私だって考えますよ。完全に守られるルールなどありません。そしてこれだけ「公正な買収に上場会社は向き合え!」って言われてるんですから、敵対的買収は必ず増えます。そしてアドバイザーも「この買収条件だったら反対するのは難しいです」って言いますよ。上記研究会などの委員になっている弁護士や証券会社はなりふり構わぬ防衛手法をアドバイスしにくいでしょ?

上場会社のみなさんが「公正な買収の在り方?ふざけんな!そんなのは買収される側ではなく買収する側が考えることだろ?買収されたらオレたちは首になって路頭に迷う可能性だってある。大人しく買収されろと言ってるのか?」と考えているとしたら、声を大にしてそれを世の中に主張すべきでしょう。そして今からやれることをやっておくべきでしょう。買収防衛策は必要です。株主にとっては不必要だ!はい、会社はモノではないし、仮にモノだとしても株主だけのモノではありません。ただし経営者は以下のとおり、会社をモノにしてはいけませんよ。

https://ib-consulting.jp/column/4509/

だから株価面でもやるべきことをやる必要があります。そして株価を高めると同時に、買収防衛策を導入したり、・・・をしたり、・・・をしたりする必要があります。詳しく書くと怒られるので書きませんが、興味のある方はご相談ください。

https://ib-consulting.jp/column/4509/

最後に一言。日本で再際の時価総額を誇るトヨタ自動車は日頃からきちんと対策を取っています。トヨタに聞いたら「企業防衛のためじゃない」とおっしゃるかもしれませんが、私には結果的には企業防衛にもつながっているように見えます。

平時から企業防衛行動をきちんととれない会社がいざ有事になって守れるわけがありません。普段からちゃんとやりましょう。

 

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