2023年06月18日

No.1553 アクティビストがやってきた~第1話~

(どうしてうちの会社があのデザート・マネジメントのターゲットに?) IR部の田中は部長の席に走った。

東証プライム市場に上場するエベレテックのIR部に1本の問い合わせメールが届いた。問い合わせメールへの対応はIR部の若手社員である田中の仕事だ。

「えーっと、なになに?『当方は貴社株式を2%保有する株主です。貴社の今後の経営方針について詳しくお話を聞かせていただきたいと思っておりますので、一度ご連絡をいただけないでしょうか?当方のメールアドレスは以下のとおりです。』 ふーん、2%か?けっこう大きいな。なんて投資家だ?ん?デザート・マネジメント?デザートって・・・こいつらに投資されたら過激な要求を突きつけられ、最後には会社に何も残らず、ぺんぺん草すら生えない砂漠になってしまうって言うあのアクティビストのデザートかよ!やばい!部長に報告しなきゃ!」 

山田IR部長と田中は社長である大外山に状況を報告した。

「で、どうして2%持っているってわかったんだ?大量保有報告書ってのはたしか会社の株式の5%を持ったら提出する書類なんだろ?」

山田部長は「ええ、おっしゃるとおりなんですが、今回、デザートは当社のHPのお問い合わせから面談の依頼をしてきたんです。そこでみずから2%を持つ株主だと申告してきている状況です」

「なるほどねえ。アクティビストってのはそんなふうにHPを通じて面談依頼をしてくることもあるんだな。」

「ええ、うちの顧問弁護士の南村総合法律事務所の細山弁護士にも聞いてみたんですが、そういう形で面談依頼をしてくることもあるそうです。ほかにも突然会社の代表番号に電話をかけてきたり、決算説明会で名刺交換をした際の電話番号にかけてきたりといろんなパターンがあるそうです」

「わかった。で、面談をする必要はあるのか?というか、そもそも本当に株主なのか?」

「ええ、一応ですね、弁護士からは急いで対応する必要はないが、明日中には返答くらいしておいた方がよいということなので、正確に何株持っているのか、先方の面談出席者は誰なのか、いつ頃を考えているのかを確認する予定です。」

「わかった。仮に2%の株式を持っているのが事実だとしたら、社長のオレが出たほうがいいのか?」

「いえ、一応弁護士に確認しましたが、初回面談に社長が出るのは避けたほうがよいとのことです。」

「どうして?向こうの代表者が出てくると言ってもオレが出なくていいのか?」

「はい、先生は、初回から社長が出る必要はない、向こうの代表が出ると言ってもとりあえずCFOで対応し、向こうの出方を見たほうがよいとのことです。社長が出るとその場で回答を求められるでしょうし、それに社長が出るのを状態化しないためにも今回はCFOで対応したほうがよいと」

「わかった。状況は適宜報告してくれ。でもなんでうちがあのデザートに狙われたんだ?株価だって安くはないだろう?PBR1倍割れしてないじゃないか」

「ええ、そこは私たちも不思議に思っています。デザートはキャッシュリッチでPBR1倍割れをしている会社をよくターゲットにしていると聞いたことがあります。そのあたりは主幹事証券にも意見を確認中です。」

(デザートねえ。うちも買収防衛策を入れていたけど廃止したんだよな。こんなことなら継続しておけばよかったかな。まあ取って食われる訳ではないだろうけど、何が狙いなのか気になるな・・・)

大外山の嫌な予感は近い将来、的中することになる・・・。

 

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