2024年01月30日

No.1675 もしイオンによってツルハの非公開化TOBが阻止されたら、それは機関投資家のせいだ!!!

「なんでオレらのせいやねん!」と機関投資家の方々がおっしゃるかもしれませんが、間違いなく機関投資家のせいです。正確に言うと「平時型買収防衛策に論理的な理由なく反対してきた機関投資家のせい」ということです。

イオンによるオアシスからのツルハ株取得に関して、詳しいことはわかりませんし開示されていませんが、仮にイオンがオアシスのみからツルハ株を取得することを想定し、そして仮にツルハが全株買収の非公開化を目的にしたTOBを検討していた場合、TOBが不成立になる可能性があります。なぜかと言うと、非公開化のためのTOBはおそらく66.7%以上の応募がないと不成立ですよという要件が設定されるでしょうし、イオンがオアシスからツルハ株を取得し、所有割合が26%強になってしまうと、下限を超える応募が集まらない可能性が高まるからです。

以下のように2023年11月以降のツルハの株価は非公開化のTOB前提でついてきたように見えます。

本日のツルハの株価はかなり下がりました。イオンがオアシスから株式を取得すると、非公開化のための全株買収TOBが実行されなくなる可能性が高くなると見なしたからでしょう。

「ツルハが有事型買収防衛策で対抗すればいいじゃないか?我々は平時型には反対するけど、有事型には買収条件次第では賛成することもあると言っているじゃないか!」と機関投資家はおっしゃるでしょう。

でもツルハが有事型買収防衛策で対抗できることに気づかず、あれよあれよと言う間にイオンがオアシスから株を買い取ってしまったらどうなりますか?

有事型買収防衛策を検討している間に、有事型買収防衛策のプレスを準備し公表する前にオアシスがイオンに株を売っちゃったらどうなりますか?

当社の一連のコラムやツイッターを見たオアシスが「マズイ!ツルハが有事型買収防衛策で対抗するかもしれない!有事型を導入・発動される前に13,000円でいいからイオンに速攻で売るぞ!」と判断して売ってしまったらどうなりますか?

機関投資家の皆さん!有事型買収防衛策ってのは、導入のタイミングが非常に難しいし、非常にあやうい対抗策なんですよ。いざ有事!というときに導入して対抗できるタイミングが残されているのかどうかわからない対抗策なんです。

私が「買収者との交渉ツールになる買収防衛策はきちんと平時に導入しておくべきである」と考える理由がここなんですよ。これ、ホントにイオンがオアシスからツルハ株を相対で買ってしまい、ツルハが検討していた全株買収の非公開化のためのTOBが実施されなかったらどうなりますか?オアシス以外の株主はみんな利益を手にすることができなくなるんですよ。

もしツルハが平時型買収防衛策を導入していたらどうでしょうか?イオンがオアシスから相対で株を買って保有割合を20%以上にするためには時間と情報が必要になりますし、ツルハは代替案としての全株買収の非公開化のためのTOBを株主に提示する時間を確保できます。

そして株主はイオンの案とツルハの非公開化案を比較検討し「イオンはオアシスからしか買わないんでしょ?ツルハの非公開化案は全株主からTOBで買うんでしょ?だったら当然ツルハの非公開化案を支持するよ」となるでしょうね。

機関投資家の皆さん、これが皆さんが平時型買収防衛策を感情的な理由で反対し、目先の利益に固執し続けた結果ですよ。いざというときは有事型でいいとおっしゃるけど、いざというときに有事型を導入・発動できないじゃないですか?有事型導入・発動のタイミングがあるかどうかわからないんですよ。当然買収者は有事型を導入・発動されないよう、電光石火で株を相対でアクティビストから買おうとするんですよ。アクティビストも有事型買収防衛策でジャマされないように速攻で売ろうとするかもしれませんね。

はっきり申し上げますが、有事型買収防衛策は株主のためにならない。そもそも有事型買収防衛策は買収提案の実現をまさに阻害するための買収防衛策です。一方平時型買収防衛策は時間と情報を確保するための事前警告型ルールです。機関投資家の皆さんはこれを機に、平時型買収防衛策⇒平時の買収への対応方針に対するスタンス・議決権行使基準を見直すべきです。

なお今回のツルハに関しては有事型買収防衛策は買収防衛策としては機能せず、交渉ツールとして機能すると思うので、株主の信を問うためにも導入したほうがよいと思いますよ。

平時型買収防衛策は買収者の買収意欲をそぐようなルールにはもうなりえませんよ。機関投資家を含めた株主の中長期的な利益を守るためのルールです。みなさん、目先の利益を追い求めすぎなんですよ。

 

 

 

 

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