2024年02月02日

No.1677 イオンのツルハへの株式取得提案は成功したの???

以下の日経記事をご覧ください。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD317LY0R30C24A1000000/

イオンが海外投資ファンドからドラッグストア大手のツルハホールディングス株式の取得に動き出した。今後の展開によっては、ツルハがイオングループに組み入れられる。

ツルハがイオングループに組み入れられることはもう決まったことなのでしょうか?私は以下のコラムでも書いた通り「ツルハは有事型買収防衛策で対抗すべき」と考えていますが、どこのマスコミもイオンによるツルハのグループ化があたかも成功したかのように報じています。

このイオンによる部分的買収、ツルハが全株買収の非公開化を検討中だとしたら、まさに有事型買収防衛策でいったんストップをかけるべきケースでしょう?イオンがオアシスが保有するツルハ株を取得してイオンの議決権割合が26%強になってしまうと、全株買収のTOBが成立しない可能性があります。なぜなら非公開化のTOBは66.7%以上の応募があることを成立の条件にしていることが多いからです。イオンが26%強もの議決権を持ってしまうと、66.7%もの応募が集まる可能性が低くなってしまい、非公開化を実施しようとするプライベートエクイティファンドが「成立は難しいからやめた」となってしまうかもしれません。

イオンがオアシスから買い取ることで、全株主を対象にしたTOBが実施されなくなってしまうということは、イオンによるオアシスからのツルハ株の買い取りはオアシス以外の一般株主にとってメリットがないのです。だったらツルハは「一般株主にとってメリットがあるTOBが阻止されてしまう」として有事型買収防衛策を導入して対抗すべきでしょう?

当然でしょう。むしろ有事型で「いったん」イオンのオアシスからの買取行為を中止させないと、経営陣の責任が問われませんか?有事型買収防衛策ってのは、このご時世、なにも突飛な行為ではなく、けっこう導入・発動事例があるのです。一般株主が不利益を被るかもしれない買取行為をいったん中止できる措置があるのなら、経営陣はむしろ積極的に活用すべきでは?

この点、もしかしたら私だけが勘違いしているのかもしれません。これだけマスコミが報道しないのですから。ただ、もし私の考え方が正しいのだとしたら、きちんとマスコミはツルハが有事型買収防衛策で対抗する可能性についても報道したほうがよいのではと思います。

なお、有事型買収防衛策で対抗される可能性があることは、イオンのことですから十分承知の上でしょう。そしてもしツルハが「こっちは全株買収の非公開化のTOBをする予定なんだ!イオンによるオアシスからの当社株式の買取行為は、全株買収のTOBを阻止する行為だ!イオンは正々堂々と全株買収で非公開化TOBに対抗すべきだ!」と主張するかもしれません。

しかしそれこそイオンが「待ってました!」と言わんばかりの行動なのかもしれません。巷ではイオンはツルハを全株買収したくない、そこまでの資金を用意することができないのではと言われています。

https://hre-net.com/keizai/ryutu/72718/

でもホントですかね?PEに用意ができてイオンに用意ができないのですかね?このあたりの根拠がよくわからない。ツルハとして「イオンは当社を全株買収する資金を用意できる」という前提で防衛戦略を練ったほうがよいと思います。

ただ大変失礼ながら、イオンが全株買収できるという前提での防衛戦略を練るのはツルハには難しいと思います。現状、世の中で知られている防衛戦略ではイオンに勝つのは難しいでしょうし、短期間で思いつくかと言えば・・・。

さすがに私は「ツルハは有事型買収防衛策で対抗するだろう」と読みます。なぜなら、もしツルハが全株買収の非公開化のTOBを検討しているのなら、株主に対して「イオンがオアシスから当社株を買い取ると、非公開化のTOBができなくなります。株主の皆さん、イオンの行為が株主の利益にかないますか?」と信を問うのが経営者の責任だと思うからです。

なお「いや、非公開化の報道がされたものの、話がとん挫したのでは?ツルハはもう非公開化を検討していないのでは?」というご意見があるかもしれませんが、その場合でも私は有事型買収防衛策で対抗すべきだと思いますよ。オアシスから株を買い取って実質拒否権に近い株を持ち、経営戦略に重要な影響を与えるのであれば、株主に信を問うべきでしょう。これからの経営戦略や資本戦略を株主は把握する必要がありますから。

 

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