2016年12月09日

No.33 今日は個人株主に関する記事が多いです など2コラム

■今日は個人株主に関する記事が多いです

・「株高で投資余力 個人売買活況」

・「積立型NISA 18年新設 個人の長期投資促す」

・「株主優待、金券が半数弱 長期保有の個人に的」

株式市場で個人投資家の売買が活発になってきたようです。本日2016/12/9(金)の日経に「個人投資家の売買は回復」「相場上昇で個人の信用取引は含み損が縮小」というグラフが掲載されています。記事には、ソフトバンクグループや東京電力の名前が出ています。ソフトバンクは孫さんとトランプさんとの面談を手掛かりに個人の売買が膨らみました。東京電力は、政府が融資枠引き上げの方針を固めたとの報道が材料になったそうです。

 このような記事を見ると「うちの株式を個人投資家は買っているのだろうか?」という気持ちにならないでしょうか?

 個人株主比率の低い会社の皆さん、残念ながら買っていません。東京電力などは歴史的に見て、個人株主比率が非常に高い会社です。電力はもともと配当銘柄として見られており、各電力ともに個人株主比率が高いです。もともと比率が高いので、何か材料が出れば個人投資家が買います。もともと個人株主比率が低い企業は、おそらく何か材料が出たら個人が買うのでしょうが、それほど多くの個人投資家が買うわけではないのでしょう。

 NISAの使い勝手が向上するそうです。毎年40万円までの投資から得られる売却益などを20年間非課税にできる新制度を設ける。個人投資家に長期間投資してもらうことで「貯蓄から投資へ」の流れを後押しする。これは理解できます。私は証券会社にいましたが、個人のお客様への営業をしたことがありませんでした。若いころは「なんで株なんて買うんだろうか?」と本気で悩みました。今はそんなことありません。最近、株価が上がってきましたが、一時期の金融機関の配当利回り、5%くらいありましたよね。今では「なんで普通預金に置いとくんだ?わからん」と悩んでいます。

 最後に、「株主優待、金券が半数弱 長期保有の個人に的」です。たまに「個人投資家を増やしたいのだが、株主優待についてどう思う?」というご相談をいただきました。機関投資家からすると「やめてくれ。だったら配当増やせ」です。記事にもありますが、現金代わりに使えるプリペイドカード、クオカードなどを株主優待として配るというのは、どうなのかと思います。配当増やしませんか?「いやいや。配当増やすよりは金額的負担が少ないし。何よりも個人株主を増やしたいんだよ」とお考えになるかもしれません。

 私、株主優待にはあまり賛成できません。日本だけですよね?自社商品や割引券を贈るのはまだ理解できます。売上増につながるかもしれませんから。でも、消費者との接点が薄い事業を行っている企業が、個人株主を増やすために金券を配るのは、ちょっと違うんじゃないかなと思います。

 この記事の最後に「自動車部品商社のSPKは個人株主比率は45%と高いが株主優待はない。今期は19年連続の増配を計画しており『増配に魅力を感じてもらえているのでは』(SPK)と話している。」とあります。

 おっしゃるとおり。金券を配るという策は、私にとってはどうしても「小手先」の戦略に見えてしまいます。個人株主を増やすもっとも効果的な施策は、個人株主に直接株式を売却すること、すなわち、売出しです。安定株主が「どうしても売りたい」と言ってきたときに、他の安定株主を探せない場合、苦肉の策として「準安定株主」である個人投資家に株式を売却する、ということです。

 もう一つ。「長期保有の個人に的」についてです。記事にもありますが「昨年導入されたコーポレートガバナンスコードでは保有意義の薄い持ち合い株式の解消を求めている。持ち合い解消した分の受け皿として個人投資家の獲得を目指す企業は少なくない」です。つまり、長期保有をしてほしいのでしょうか?安定株主の代わりになってほしい、が本音ではないでしょうか?長期株主ではなく、議決権を白紙で行使し、経営には口をはさまない「放置株主」になってほしいが本音ではないでしょうか?

 全然悪いことではありません。そりゃそうです。ただ、私が申し上げたいのは、株主優待や個人投資家向けIRをいくらやっても、個人株主が増えない会社は増えません。安定株主が売るというなら、それをとりまとめて売出ししたほうがよいです。いくらコストをかけて個人株主を増やそうとしても増えるものではありません。

 以前書きましたが、キヤノンがよいケースではないでしょうか?一桁台だった個人株主比率を18%程度まで上昇させています。キヤノンが「個人株主を増やしたい」と思っていたのかどうかはわかりません。しかし、いろいろな経営施策を行った結果、個人株主比率の上昇にもつながったのではないでしょうか。

■海外勢、日本株「なお割安」

 これも本日12月9日(金)の日経記事です。マーケット面に出ています。「日経平均が年初来高値 欧米投資家に聞く」です。ここで、米国のハリス・アソシエイツの最高投資責任者のデービッド・ヘローさんへのインタビューが少しおもしろいです。ハリス・アソシエイツは日本株をけっこう買っている投資家です。大量保有報告書を提出されている企業もあります。皆さんの会社の株主ではありませんか?日本株のことをよく知っている投資家だと思います。

 このインタビューの中でヘローさんは「野村ホールディングスなどを保有しており、金利上昇や規制緩和が追い風だ」「(上昇を続ける日本株は割安でしょうか)投資指標でみれば割安だが、改革のスピードが遅い。国際株ファンドでは日本株の配分を平均より少なめにしている」と語っています。

 また、「日本企業はROE目標を10%と掲げるが、世界平均は15%だ。トヨタ自動車の自社株買いは株主として歓迎するが、持ち合い解消などまだ改善余地が残っている」とも。

 ここから答えが見えてきませんか?つまり、持ち合いを解消し、ROE15%を目指す施策をうっていけば、投資家は株を買ってくれるということではないでしょうか?ついでに言うと、社外取締役も増やしてガバナンスもちゃんと意識しているということをアピールしていけば。投資家が納得する施策を打って行けば、必ず買ってくれます。

 これは、海外の機関投資家だけのことでしょうか?よく外国人投資家は順張り、個人投資家は逆張りと言われています。でも、個人投資家も株主還元を充実させたり、ROEを上げる施策を打っていけば、買ってくれるのではないでしょうか?個人株主比率の低い会社が一気に個人株主比率を増やすのはムリがあります。でも、外国人投資家が納得する施策は個人投資家も納得するはずです。まずは個人投資家に貴社の株主になってもらうことが重要です。

 しかしながら、個人投資家は株価が上がれば売却します。だからと言って「やっぱり個人は売るじゃないか!」と嘆く必要はありません。重要なポイントは「貴社の株式を個人が買った」ということです。その個人株主のアタマの中に貴社の名前が刻まれました。インプットされたということです。個人投資家のアタマの中にあるポートフォリオに一度組み込まれたのです。

 貴社の株価が下がった時にその個人投資家は「お!●●㈱の株価が下がってきたな。そろそろ買い時かな」と思ってくれるはずです。

 個人投資家を増やすための奇策はありません。ROEを上げるための施策を打つ、配当を増やすなど王道しかないと思います。まずは買ってもらうことです。買ってもらってもいずれ売却するものの、株価が下がったらまた買ってくれます。

 個人投資家に長期保有してもらうのではなく、長期にわたって貴社の株価を見続けてもらうことが重要です。長期保有を目指すのではなく、リピーター化しましょう。

 

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