2016年11月21日

No.22 最適な株主構成とは など2コラム

■最適な株主構成とは

 現在の貴社の株主構成はどうでしょうか?安定株主30%(取引先、従業員持株会、銀行・生損保など)、外国人株主25%、国内機関投資家25%、個人株主20%・・・・なんとなく理想的です。

 安定株主比率が30%を確保できていれば、通常、株主総会の普通決議が否決されるようなことはないと考えます。また、安定株主比率30%に加えて、個人株主比率が20%程度あれば、おそらく特別決議も大丈夫でしょう。議決権行使率はだいたい80%に満たない程度でしょうから。

 最適な株主構成とは?というご相談をいただいたことがありました。答えは最初から決まっています。「そんなのありません」です。

 ただ、2つの点から最適な株主構成を検討することはできます。まずは、株価形成面から見た最適な株主構成とは?答えは「外国人、国内機関投資家、個人投資家に保有してもらい、安定株主比率ゼロ」です。そして、買収防衛の面から見た最適な株主構成とは?答えは「安定株主比率66.7%。その他はどうでもよし」です。

 ちょっと乱暴な分析ですが、最適株主構成を考えている経営者・CFOは「安定株主比率が低下していく中、今後、安定した経営、株主総会運営をする上で、どういう株主構成がよいのか」ということを考えているのではないでしょうか。

 であれば、最適株主構成を考えることは「どれだけ安定株主比率の低下を許容できるか。そして、安定株主が売却する株式を誰に持ってもらうのが適切か」ということです。

 安定株主比率の低下をどこまで許容できるか?なかなか難しい問題です。他の株主構成にもよりけりなのですが、感覚的に申し上げると25%程度は確保しておきたいですね。買収防衛策の更新についてご相談を受けるとき、だいたい安定株主比率が20%を下回る企業は買収防衛策の更新を断念する傾向があるように思います。25%程度確保していると、事務方は「まあ普通決議は大丈夫だろう」と判断し、買収防衛策を継続します。

 まずは、現在の持ち合い株式を徹底的に見直してください。特に片持ち株は売却できるのであれば売却しましょう。貴社の安定株主比率にはまったく影響がありません。売却で得た資金を新たな持ち合い株式につぎ込みましょう(あくまで説明のつく持ち合い先です。念のため)。特に、金融機関の株式。持っている意味ありますかね?全株売却してしまっても全く問題ないのでは?

 安定株主比率をなんとか引き上げる施策はうっておいたほうがよいと思います。それでもいかんともしがたい場合は、準安定株主である個人株主を増やす施策をうっていくべきと考えます。

 最適な株主構成に対する答えはありませんと申し上げましたが、少なくとも、株価と株主構成について議論し続ける価値はありますし、議論し続ける必要があると考えます。

■なぜみなさん長期保有株主を求めるのか?

 先日の新聞記事にもありました。私は長期保有株主を作ることが悪いとは言っていません。

 まず、みなさん、なぜ株主に長期保有してもらいたいのでしょうか?そこが問題なのだと思います。最近は短期売買=悪ととらえる風潮があるように思います。

また、長期保有してもらうための施策をどうお考えでしょうか?「きちんとIRを通じて情報提供して、我が社のことを理解してもらう」と考えていませんか?そこが違うのだと思います。

 いくら自社の魅力をIRで訴えても、株主は何を目的に株式を買っているかと言えば、当然、利益を得るためです。その利益は、インカムゲイン、キャピタルゲインです。

 株主が株式を長期保有する理由は2つだと思います。1つは、ずっと増配してくれそうだから。もう一つはずっと株価が上がりそうだから、です。売却コストを考えると、売るより持ち続けたほうがよい、という判断です。

 長期保有してくれる株主を増やすには、ずっと配当を上げ続ける、株価を上げ続ければよいのです。ただ、現実には難しいです。

 そもそも、みなさん、本当に「長期保有株主」を増やしたいのでしょうか?違いますよね?本当は、安定株主を増やしたいのではないでしょうか?

 今の世の中、コーポレートガバナスコードが制定され、経営の効率化が求められる中、おおっぴらに安定株主対策を進めることはやりにくくなっています。だから、言葉を変えて、長期保有株主を増やす、とおっしゃっているのではないでしょうか。そして、株主総会で白紙投票してくれる個人株主を長期保有化させたい、と。

 であれば、きちんと社内で目的を明確にすべきです。もちろん、社外的には言えません。ただ、なぜ長期保有株主を増やしたいかという目的を社内で明確化すれば、IRや総務部の方が戸惑いません。「なんで長期保有株主を増やしたいんだろうか」と考えながら行動するよりも「ああ、長期ではなく安定的に議決権行使を白紙でしてくれる個人を増やしたいということか」と。「であれば、長期保有でなくてもいいじゃない。ようは個人株主を増やせばよいということだな」と。

 では、個人株主ってどうやったら増えるのでしょうか?はい、直接個人株主に株式を売ってください。ようは売出しです。どうしても売却したいという株主が出てきたら、個人向けに売出しをしましょう。それが一番効果的です。あとは、エクイティファイナンス。これは資金使途があっての話ですが。

 それ以外の方法は???

 私も検討中です。テレビCMを変えてみたらどうでしょうか?例えば「本日の株価●円(前日比●円高)」をずっと流す。企業のイメージCMを流すのと同じように。専門家の意見を聞いてみたいところです。

 

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