2016年11月23日

No.23 個人株主比率が高すぎる会社の最後など2コラム

■個人株主比率が高すぎる会社の最後

2か月ほど前に書いたソフトブレーンのケースですが、ほとんど話題になりませんでした。昔の上司と話しましたが、「そんなのあったんだ」という反応でした。でも、ちょっと気になっていますので、再掲します。ソフト期間貸しサービスのフュージョンパートナーという会社が、ソフトブレーンの株式を約40%取得。

フュージョン社が提出した大量保有報告書を見ると、ほぼ6日で市場から約35%の株式を取得した模様です。なお、7月12日時点で議決権所有割合が45.57%となり、フュージョンパートナーはソフトブレーンを連結子会社としました。

 フュージョン社の社長は「株の取得を始めた際にソフトブレーン社長と面会し、持分法適用会社にする意向を伝えた」と、突然の取得ではないと強調したそうです。また、ソフトブレーンの社長は「筆頭株主となったフュージョンには真摯に対応していく」とコメントしました(日経記事より)。

 いやいやいや。これって、普通に敵対的買収ですよね。たった6営業日で35%買ったんです。そして、7月12日には持分が45%を超えたんです。ソフトブレーンの社長は「いや、敵対的買収なんです!私たちは反対です!」とは言えません。クビがかかっています。「真摯に対応する」としか言えないでしょう。

 では、ソフトブレーンの株主構成を見てみましょう。

 創業者もいらっしゃいますが、個人株主比率が非常に高い企業です。高すぎるんです。これが、個人株主比率が高すぎる会社のデメリットです。個人は株価が上がると売ります。おそらく冷静な状況分析はしないのでしょう。

 このケースを時価総額が大きい企業にいらっしゃる方と議論すると、「うちはこうはならないでしょう」とおっしゃいます。私もそう思います。ソフトブレーンは時価総額が100億円レベルですから。でも、次のリスクがあります。

■外国人株主比率が高い会社

 先ほどのソフトブレーンと違い、「外国人株主比率が高い会社の最後」とは書いていません。まだ、最後は迎えていませんので。エフィッシモに株式を取得される直前期末の川崎汽船の株主構成です(2015/3期末)。外国人株主比率が高いです。が、高すぎる訳ではなく、時価総額2000億円~3000億円クラスの会社であれば、よくある株主構成です。貴社と比べてみてどうでしょうか???似ていませんか?

 エフィッシモに買い進められたことにより、11月7日時点で38.82%取得されました。ソフトブレーンのケースでは、個人株主比率が高すぎた結果だと言いましたが、これを見ると「外国人株主だって冷静な判断ができず株価が上がれば売るじゃないか」と言われるかもしれません。

 ソフトブレーンのケースと異なっているのは、時間です。ソフトブレーンはほぼ半数に近い株式を取得されるのにほとんど時間がかかりませんでした。川崎汽船は1年以上かかっています。そこが違いです。

 じゃあ、個人が多いのと外人が多いのではどっちがいいんだ?と疑問に思われるかもしれません。安定した経営を実践していくという観点では、どちらもよろしくないと思います。ソフトブレーンと川崎汽船に共通しているのは、安定株主比率が高くなかった、という点です。ですので、いずれの会社も経営に重大な影響をおよぼすレベルの株式を取得されてしまったということです。

 もう一つ共通しているのは、両社とも買収防衛策を導入していませんでした。正確には、川崎汽船は導入していたものの、エフィッシモの取得が判明する直前に廃止してしまいました。

 私は、安定株主はある程度存在したほうがよいと考えています。しかし、時価総額が一定レベルを超えると、やはり安定株主比率は低くなります。時価総額が一定レベルの企業が安定株主比率を増やすのはかなり難しいです。持ち合いで増やすとしたら、自社の時価総額×%の資金が必要になります。時価総額1兆円の企業が安定株主を持ち合いで増やそうとした場合、1%増やすのに自社も100億円の資金を使う必要があります。

 安定株主を速やかに増やすことができない企業は、今こそ買収防衛策の導入を「真剣」に検討した方がよいと考えます。一時期、買収防衛策の導入が盛んでしたが、あれは一種、流行のようなものでした。これから、日本企業は本当に安定株主が少なくなっていきます。例えば、電力・ガス・エネルギー・防衛産業など、国が外為法で守ってくれるような会社以外は、自社で防衛するしかありません。11月21日(月)の日経に「外資の米企業M&A 国防理由に阻止判断も」とあります。そういった企業は国が守ってくれるのでしょう。

 2007年後ごろのアクティビストファンドは株式を取得したとしても10~20%程度でした。でも今は違います。株式市場は常に変化します。今まで見たことのない登場人物が出てきます。

 

 

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