2017年02月09日

No.54 富士電機と富士通の持ち合い解消など3コラム

■富士電機と富士通の持ち合い解消

 富士電機と富士通が株式の持ち合いを解消すると発表しました。富士電機が11.1%持つ富士通株式の8.21%を売却します。富士通も10.41%持つ富士電機株式の一部を売却します。富士電機が保有する富士通株式については、海外の機関投資家に売却するそうです。富士通のプレスリリースは「当社株式の海外市場における売出し及び主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ」となっており、SMBC日興証券が引き受け、米国・欧州及びアジアを中心とする海外市場における投資家に販売するとあります。

 四季報を見ると、主幹事は日興です。売出しの引受が日興なのは順当な流れなのでしょう。でも、なぜ富士通は海外における売出しを選択したのでしょうか?安定株主である富士電機が株式を売却するのであれば、議決権行使に関しては白紙で投票してくれる国内個人投資家に売出しを行うことも考えられました。おそらくひとつにはディスカウント率の問題があったのかもしれません。国内個人に販売するよりも海外の投資家に販売した方が、ディスカウント率が低かったのかもしれません。  

もう一つは、あまり議決権行使に関心がないのかもしれません。なぜか?富士通の株主構成を見てみます。個人株主比率が比較的高く、富士電機が11.03%保有していたことから法人株主比率も高いです。上位大株主を見てみると、富士電機以外にも安定株主がいます。合計すると、19.35%です。富士通の時価総額は約1兆3,000億円なので、時価総額を考慮すると高いほうだと思います。

しかし、一般的に言うと、決して高い水準ではありません。また、富士通の外国人株主比率は上表のとおり、39.33%です。かなり高いですね。財務を見ると、特にアクティビストファンドに狙われるような状態ではないので心配する必要はないのかもしれません。

ただ、少し気になるのは、富士電機が長い間株式を保有していたという点です。長い間、まとまった株式を持ってくれている安定株主が存在すると、株主総会運営などに困ることなどあまりなかったのではないでしょうか。アクティビストファンドなど意識したことはあまりなかったのではないでしょうか。

しかし、これからは違います。富士電機が8%の株式を売却するということは、ストレートに安定株主比率が8%減るということです。富士通の安定株主比率は約11%に低下します。これはけっこう低い比率です。

最近は証券会社のビジネスチャンス獲得のためか、外資系も持ち合い解消には目を光らせています。証券会社のビジネスにならないかと虎視眈々と狙っています。外資系のセールストークは「どうせ国内の個人投資家は株価が上がれば売却します。それを買うのが海外の機関投資家ですよ。だったら最初から海外の機関投資家に売出ししましょう」という内容です。これ、「はあ?」と思ってしまいます。

確かに国内の個人投資家は株価が上がれば売却します。しかし、重要なのは一度でいいから自社の株式を買ったことのない投資家に自社の株主になってもらうこと、なのです。いいんです、国内の個人投資家が売却しても。ポイントは、個人投資家に儲けさせることです。儲けた個人投資家は売却しても、株価が下がればまた買ってくれます。一度、個人に株主になってもらうことが重要です。海外の投資家はプロです。彼らは株式に投資することが仕事ですから、銘柄分析をしています。黙っていても安ければ買います。逆にIRをいくらやっても、魅力的ではないと考えれば買いません。

もう国内証券会社の社員ではないので、国内証券会社のビジネスをサポートする意見を言う必要はありません。日本企業の皆さんの今後の株主総会運営、アクティビスト対応を考えると、持ち合い解消対応は慎重に検討する必要があるので言っています。

 なお、現在、国内で敵対的TOBが実施されています。個人株主は、議決権行使は白紙で投票してくれますが、敵対的と言えども、株価が高ければ売却する株主であるということは認識しておく必要があります。

■2017/2/8日経1面「市場の力学 個人投資家のナゼ」

 日経朝刊の1面にあった記事です。NTT株に600万円投資したものの、バブル崩壊、含み損は最大400万円になったという個人投資家の話題が冒頭にあります。また、一方で、2012年にNTT株を買った個人投資家はアベノミクス相場で株価が3倍になったとあります。

 株式投資に対する印象も世代により異なるようで、バブル崩壊を肌で知る40台以上は株式投資に前向きではないようです。ここでおもしろい表現をしています。「差は成功体験の有無から来る」です。

 これ、企業の株主づくりにも共通して言えることです。多くの企業は「長期保有株主」を模索しています。本コラムでたびたび話題にしますが、私は個人投資家を長期保有株主化する必要はないと考えています。まさに成功体験をしてもらうことが重要と考えているからです。

 ここでいう成功体験は、NTT株を買ってもうけた個人投資家と同じです。この個人投資家は、いつかまたNTT株を買うでしょう。一方、NTT株を塩漬けして結局損した個人投資家は二度とNTT株を買わないでしょう。

 企業の株価が右肩上がりで上昇し続けることはかなり難しいと思います。いつか下がることもあります。そしてそれは当該企業の要因ではないこともあり得ます。株式を長期で保有してください、と言ったものの、株価が下がっている。個人投資家はどう思うでしょうか?

 怒られるかもしれませんが、個人投資家に銘柄選別能力はない、と思います。だから、株価が下がったら買い、上がったら売るんです。機関投資家は逆です。個人投資家は当該企業のフェアバリューを算出して株式を取得しているわけではありません。もちろん、中にはきちんと銘柄分析をしている方もいらっしゃるとは思いますが。

 だから、個人投資家を長期保有化させることは危険だと思います。上がったら即売って儲けてもらうことが大切です。異論があるとは思いますし、現在の世論とは逆行するとも思いますが、儲けたら売ってもらい、下がったら買ってもらうことが重要ではないでしょうか?長期で保有している訳ではありませんが、常に貴社の株価を見てくれる投資家になるということです。貴社の株でもうけた個人投資家は貴社の株主総会でクレーマーになることはまずありません。繰り返し売買することで、いつも貴社を見てくれる投資家に育てましょう。

■私の履歴書~フロランジュ法~

 先月はゴーンさんでした。2017年1月26日(木)の「私の履歴書」に「株式を2年以上保有する株主に2倍の議決権を与えるという14年春施行のフロランジュ法」という記載がありました。フロランジュ法とはフランス政府が2014年に制定した法律。2つの柱からなり、1つは大企業に対して、工場など生産拠点を閉鎖する場合は事前に売却先を探すよう義務づけたこと。もう1つは、株式を2年以上持つ株主に、2倍の議決権を与えることだ。株主の3分の2が反対すれば、この「2倍ルール」の適用を免れる例外規定もつくった。仏政府はいずれも、国内の産業を守る目的があると説明する。」だそうです(2015/11/6日経)。

 なぜフロランジュ法に触れたかというと、2017年1月21日の記事が気になっているからです。「株主優待 長期保有手厚く」という記事です。以前書きましたが、私は長期保有している株主をなぜ優遇するのかがわかりません。長期保有株主を優遇したい方々はよく「フランスは株式を長期保有すると議決権が倍になるんだぞ!」という点を挙げます。

 そもそも、なぜフランスは2年以上にわたって保有する株主を優遇するのでしょうか?フランスの企業って、政府が株主であることが多いんですよね。それが理由ですね。

長期保有の話になると、割とフランスの例を出す方が多いのですが、一つ申し上げたいのは「アメリカってそんなことしているんでしたっけ?」です。株式市場が発展している米国において、長期保有株主の議決権などを優遇する措置をとっているのでしょうか?もちろん、創業者が普通株式とは異なる議決権の株式を保有しているケースはありますが、保有期間によって一般株主を区別するような施策をとっているかどうか、です。私の経験上、そのような施策を取っているケースは聞いたことがないです。

つまり、フランスは長期保有株主に対する議決権を優遇する措置を取っているが、それはフランスだけであって、米国などでは取っていないということです。

今一度、本当に長期保有株主を優遇すべきかという点については検討する必要があると思います。会社は「できることならみんな長期保有してほしい」と考えているのでしょうか?では、もし本当にみんなが株式を売買せずに長期保有したらどうなるでしょうか?

はい、流動性が低下します。日々の出来高がなくなりますので、売買が成立しません。株価がつきません。

長期保有してもらいたいという考えは、なんとなく理解できなくはないのですが、なぜ長期保有してほしいのか、という点が疑問です。本当は長期保有してほしいのではなく、「黙って持っておいてもらいたい」が本音ではないかと思ってしまいます。だとしたら、長期保有してもらうと、その株主は会社に対してもの言う株主になりかねません。なぜなら「長期で持ってやってるんだからオレの意見を聞け」という気持ちになるでしょう。重要なのは長期で保有してもらうことではなく、常に我が社の株価を見てもらうこと、ではないかと考えます。

 

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