2024年04月16日

No.1738 次は三菱地所?

以下の記事をご覧ください。

物言う株主が都心高層ビルの「含み益」実現要求-地価上昇で広がりも

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-04-15/SBS09VT0G1KW00

日本最大のデベロッパーである三井不動産は11日、新たに策定した経営計画の中で、今後3年間で固定資産や販売用不動産を2兆円程度売却すると発表した。アクティビストの米エリオット・マネジメントは2月時点で同社株を少なくとも2.5%程度保有していた。

(略)

並んで代表的なのは、東京駅と皇居との間の土地を100年以上前に購入した三菱地所所有の「丸の内ビルディング」だ。同社の有価証券報告書によると簿価は1000億円。これに対しアナリストは時価は5倍以上の5700億円程度とみている。同社はまだアクティビストの標的になっていない。

三井不動産がエリオットのターゲットになったことは大変話題になりました。以下の通り当方の有料コラムでもいくつかまとめています。わりとおもしろいのでぜひお申し込みください。

No.1679 エリオットのターゲットは三井不動産

No.1682 これからは大手のほうが狙われやすい時代

No.1683 エリオットの三井不動産に対する次の一手はこうだ!

No.1684 エリオットの三井不動産に対する主張はおかしい&三井不動産も攻撃しよう!

そして記事では三菱地所について触れており「同社はまだアクティビストの標的になっていない」と書いてあります。

しかし三菱地所はかつて買収防衛策を導入していた会社なのです。時価総額が4兆円近くもある会社なので意外かもしれませんが、以下の通り、かつては企業規模の大きい会社がたくさん買収防衛策を導入していました。以下無料で閲覧可能です。

No.1352 買収防衛策は経営者の保身ではない。だって買収防衛策じゃないから

No.1278 買収防衛策を導入しないことも経営者の保身なんです~時代に逆行するから導入したくない~

三菱地所は2007年6月総会でいわゆる平時型事前警告型買収防衛策を導入しました。そしてそれを2019年5月まで続けました。以下の通り廃止していますが、おそらく本心では継続したかったのでしょうが、三菱地所の株主構成がそれを許さなかったでしょう。

https://www.mec.co.jp/news/archives/mec190514_takeover_defense_measures.pdf

上記記事では「三菱地所はまだアクティビストの標的になっていない」とありますが、これ、本当でしょうか?以下をご覧ください。少し抜粋します。

https://the-owner.jp/archives/8596

有名な例が、1952年の藤綱久二郎という相場師による陽和不動産の乗っ取りだろう。 陽和不動産は三菱地所の前身であり、財閥解体によって分割化され、三菱グループが所有する丸の内一帯の不動産を所有していた。

分割化され資本金が低く、丸の内という不動産を所有している陽和不動産は藤綱の乗っ取りの対象となり、一時は35%もの株式を藤綱が所有することとなる。

結果として、三菱グループが大金で藤綱から買い取ったのだが、この事件を教訓に旧財閥グループは株式を持ち合いにすることで株の買い占めを予防することとなる。

ずいぶんと昔の話です。三菱地所の歴史にこういったことがあったから、買収防衛策を導入していたのかもしれませんね。歴史を学ぶのは大切です。

さてかつては買収防衛策を導入できた三菱地所ですが、昨今、国内機関投資家が買収防衛策に反対する傾向が強いため継続できなくなり廃止したのでしょうけれども、ではアクティビストがやってきたとして対抗できるでしょうか?

三菱地所の事業特性上、三菱地所を狙うのはアクティビストだけでしょうか?アクティビスト的な不動産投資家なんかがアプローチしてくる可能性はないでしょうか?

ちなみに、三井不動産がエリオットのターゲットになり、次は三菱地所もあり得るんじゃないか?と報じられましたが、では住友不動産は???

住友不動産は大丈夫です。買収防衛策を導入していますし、なによりあの規模で買収防衛策を維持できる株主構成を作り上げましたので。

三菱地所はかつて買収防衛策は必要だと思っていた会社です。アクティビストや敵対的買収リスクを肌で感じていたのかもしれません。今のこのアクティビスト時代・てきたいてき買収時代にどう思うでしょうか?時価総額が4兆円もあるからターゲットになることはない、でしょうか?買収防衛策を導入した当初もなかなかの時価総額があり、そう簡単に買収できる規模ではなかったけど、買収防衛策を導入したのです。本当に今丸腰で大丈夫でしょうか?2007年に比べてリスクは高まっています。

三菱地所の企業規模、時価総額、株主構成を考えると、平時型買収防衛策をもう一度導入しようというのは厳しいでしょう。でも買収防衛策というのは平時型だけではありません。いろいろな方法があるのです。時価総額が4兆円もある三菱地所ですら、自社の企業防衛体制をきちんと見直すべき時期に来ていると思います。

三菱書ですらなのですから、全上場会社がきちんと勉強し直すべきです。買収防衛策についてはきちんともう一度勉強しましょう。買収防衛策じゃないですから。

 

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