2016年09月23日

No.2 30%以上株式を取得されてしまうと・・・など3コラム

■30%以上株式を取得されてしまうと・・・

昨年の9月にエフィッシモキャピタルマネジメントが川崎汽船の株式を6.18%取得しました。以降、継続的に買い増しを続け、今年の8月5日時点では37.13%保有している状態です。37%という水準ですが、一投資ファンドが持つ水準としては、非常に高い比率であると思われます。

株主総会の特別決議に対する拒否権を持ってしまいました。川崎汽船が、例えば、定款変更を行ったり、ほかの会社と合併など経営統合をしたりする際、エフィッシモが反対すると、株主総会議案が否決されてしまう、という事態です。

よく、「過半数を取得するのは厳しいんじゃないの?」とか「さすがにこれ以上は買えないだろ?息切れじゃないか?」などの意見を聞くことがあります。

答えは、「いや、買えるでしょ?」です。

2016/3期末の株主構成は、以下の表のとおりです。これは、川崎汽船が公表している有価証券報告書に記載されているデータです。

金融機関は、銀行、信託銀行などの株主です。その他の法人は、法人株主です。この2つのセグメントに属する株主は、いわゆる「安定株主」が存在すると思われますので、この人たちはエフィッシモには売却しないでしょう(正確には、川崎汽船の了承なく、市場で売ったりしないでしょう、という意味です)。

一方、外国人と個人はどうでしょうか?外国人は約40%ですが、期末時点でエフィッシモが約30%保有していましたから、実質的には10%です。この株主は株価次第で、売ってしまう可能性があります。

では、個人株主は?

よく証券会社の方は、「個人株主に御社のファン株主になってもらいましょう!長期で持ってもらいましょう!」とおっしゃいますが、本当にそうでしょうか?

今後のエフィッシモの持分比率の変化次第では、個人株主が本当に長期で持ってくれる株主なのかどうか、の答えが出るような気がします。

■川崎汽船の株主構成

以下、2015/3期末と2016/3期末の川崎汽船の株主構成の変化です。有価証券報告書に記載されている公表データです。これを見ると、おもしろい変化が見られます。

外国人株主比率にあまり変化は見られません。2016/3期末のエフィッシモの持分比率は約30%ですので、想像ですが、外国人株主が売却した分をエフィッシモが市場で買ったと見られます。

個人株主比率は上昇しました。エフィッシモがどんどん持分比率を上昇させることで、「何かイベントが起きるかも??」と期待した個人投資家が川崎汽船株を買ったのではないかと想像できます。

一方、その他の法人の比率が約5%から10%に上昇しているのが特徴の一つです。その他の法人、とは、事業会社ですね。なぜ、事業会社の持分比率が上昇しているのでしょうか?

個人株主比率の上昇と同様、エフィッシモが買うことで何か起きる!と期待して、事業会社が買ったのでしょうか?

まず、それはないと思われます。事業会社には、上場会社もあれば、未上場会社もありますが、上場会社の場合、昨今、持ち合い解消の必要性が声高に叫ばれている状況で、わざわざ新たに株式を保有するメリットはないと思われます。それこそ、自社の株主から「なんで株式に投資してるんだ!本業に必要な投資をしろ!」と言われかねません。

何かしら、「お願い」されないことには、事業会社がわざわざ川崎汽船株を買わないのではないでしょうか?エフィッシモ対策として、安定株主を増やすために、例えば取引先などにお願いして株式を買ってもらった、というストーリーはあると思います(あくまで想像です)。法人株主の比率を5%も1年で上昇させるのって、けっこう大変です。今の時価総額で計算すると、5%だと金額としては120億円くらい必要ですから。その他の法人株主の数も331社から390社に増えてますね。

でも・・・37%を持たれてしまった今、「焼け石に水」のような気がしてなりません・・・

有事に安定株主対策をやった会社はいくらでもあります。でも、発射台が違うんです。川崎汽船は外国人株主比率がとても高く、安定株主比率が低すぎたんです。平時のうちから、やるべきことがあります。

■じゃあ、どうすればよかったのか?

まず、もう時すでに遅しですが、買収防衛策は廃止しなかったほうがよかったと思います。「でも、去年の株主総会に買収防衛策継続の議案をはかっていたとしても、否決されていたのでは?」という疑問が出てきます。

それはあります。去年の時点で外国人株主比率が約40%ですし、おそらく、ISSは買収防衛策には反対推奨していたでしょう。ですから、否決された可能性は否定できません。

だからと言って、自ら廃止するという選択をする必要はなかったのではないでしょうか?例え否決されたとしても、「当社としては必要と考えているんだ!」と確固たる信念を持っていれば、今年の株主総会でも議案にかけられたはずです。

実際にカプコンは、一度否決された買収防衛策を、翌年の株主総会にはかり可決されています。

ただ、「でも、エフィッシモが30%持っていたんだから、今年の株主総会に買収防衛策を議案としてはかったとしても、否決されたんじゃないの???」と考える方もいらっしゃると思います。

おっしゃるとおりです。株主総会にかけたら否決されます。「じゃあ、どうすんの?」と思われるでしょう。

方法はあるんです。簡単です。もちろん、リスクはあります。まったくリスクなしに買収防衛策を継続することは不可能ですが、きちんとした買収防衛策の設計、適切な票読みさえ行えば、不可能ではないのです。方法を知りたい方は、個別にお願いします。

買収防衛策を導入しているが、外国人株主比率が高まってしまい否決されてしまうかもしれないとお考えの会社様、本当は買収防衛策を入れたいんだけど、外人株主比率が高いし、今さら感があるかなあとお考えの会社様、ぜひ一度ご相談ください。

また、買収防衛策を廃止してしまったけど、川崎汽船のケースを見ていると、「やっぱり、あったほうがよかったんじゃないの?」とお考えの方も。

 

 

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