2016年10月21日

No.12 そもそもエフィッシモってどんな人たち?など3コラム

そもそもエフィッシモってどんな人たち?

 「元村上ファンドでしょ?」

 そうですね。村上ファンドの出身です。高坂さんと今井さんという方々が設立したファンドです。高坂さんは2006年2月に、今井さんは2004年6月にMACアセットマネジメント株式会社(村上ファンド)に入社しています。村上ファンドに入社する以前は、高坂さんはカルフォルニア州立大学を卒業後、米国企業の代表者を務めたりしていたようです。今井さんは、横浜国立大学卒業後、日興アセットマネジメントに勤めています。

 その後、2006年9月にエフィッシモを立ち上げました。経歴の詳細について知りたい方は、http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=980286をご覧ください。セゾン情報システムズのホームページにあります。セゾン情報システムズは買収防衛策を導入しているのですが、エフィッシモがトリガーを超えて株式を取得しようとした際に、買収防衛策のルールに則り、セゾン情報システムズがエフィッシモに対して詳細な情報提供を要請しました。エフィッシモによる回答書の中にあったものです。

「村上ファンドの別動隊」のような言われ方をされていますが、回答書を見る限りにおいては、「村上氏との間にいかなる資本関係、人的関係、取引関係、協力関係もありません」と書いています。

 なお、よくご質問をいただくのは、「エフィッシモが自社の株主かどうかは、大量保有報告書が提出されない限りわからないよね?」という点です。確かに、エフィッシモはカストディアンを使っていますから、実質株主として判明するのは大量保有報告書が提出された時点です。ただ、添付した回答書の中にもありますが、彼らがよく使っているカストディアンがあります。

 そろそろ、9月中間期末の株主名簿が出来上がったでしょうか?では、「ロイヤルバンクオブカナダ」という株主はいませんか?もしいたとしたら、ほぼほぼエフィッシモです。彼らがよく使っているカストディアンです。エフィッシモが取得した株式の上位株主によく登場します。

 もし株主名簿に登場したとしても、焦る必要はありません。しかし、これから買い増してくるリスクはありますから、それなりに対応策を検討しておく必要はあります。

どんな会社に投資してるの?

 以下、大量保有報告書が提出されている企業一覧です。なお、EDINETで調査して大量保有報告書をチェックして羅列したものです。漏れがあるかもしれませんが、その点はご了承ください。

大量保有報告書が提出された順に記載しています。2008年までに大量保有報告書が提出された会社に見られる特徴は、資本上位会社が存在すること、です。つまり、対象企業が上場子会社だったりします。もしくは、創業家が存在したり、持分法適用会社だったり、などです。なお、すでに全株売却したと判明した企業はここには記載していません。ちなみに、私の知る限りでは、市場で売却したケースは少ないと思います。基本的には、資本上位会社によるTOBへの応募、MBOへの応募、買取請求権の行使などにより売却したケースが多いです。(上表のトヨタ紡織やスクウェア・エニックス・ホールディングスなどは市場で売却したのではないかと思います)

なお、最近、大量保有報告書が提出された企業は、資本上位会社が存在する企業はありません。以前にも当コラムで記載しましたが、投資スタンスが変化したのかもしれません。

2007年から保有している銘柄もありますから、エフィッシモ=短期利益を追求している投資家、とは言い難くなっているかと思います。

なぜエフィッシモにこだわるの?

 はい。狙われたら、助からないからです・・・言い過ぎでしょうか。「助からない」というか、相当程度の株式を取得されるリスクがあり、相当程度取得されてからでは、対応が間に合わない、ということです。

 よく、「なんであんなに大量の株式を取得するの?大量保有報告書で取得目的を見ても純投資って書いてある。本当に純投資なの?」と質問を受けます。まあ、例えば川崎汽船の株式を37%も保有していながら、「純投資」と言われてもちょっと・・・と思います。でも、彼らが純投資だと言い続ける以上は、純投資なんです。でも、いつの日か突然、重要提案行為を行う、と主張を変化させることがあり得ます。

 37%もの株式を取得されてしまうと、もう時すでに遅しです。当然、発行済株式総数の過半数を持たれた訳ではないので、「まだ勝負は決まっていない」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、株主総会で議決権は100%行使される訳ではありません。企業によって様々ですが、だいたい、議決権行使率は70~80%程度ではないでしょうか?

 そうすると、37%も持たれてしまうと、ほぼ過半数をとったということになってしまいます。2016年6月10日の日経に『川崎汽船は24日に株主総会を控える。今年3月末の保有比率が基になる今回の総会ではエフィッシモは拒否権を持たないが、同時点でも3割弱を保有し影響力は大きい。「何を言ってくるか分からない。とにかく刺激したくない」(川崎汽船幹部)との声も漏れる。』とありました。よく、ファンドに持たれた企業が使う言葉です。では、刺激しなければ何も言ってこないのか?そんなことはありません。彼らの中では投資戦略はもう決まっています。そもそも「刺激」ってなんでしょうか?おそらく川崎汽船は、刺激はしなかったのでしょうが、結果的に社長選任議案には反対されました。社長の選任議案の賛成率は、56.88%でした。刺激しようがしまいが、エフィッシモの議決権行使はすでに決まっていた、ということです。2016/3期末時点のエフィッシモも持分は約30%でした。現在37%持っていますし、今後も持分を増やす可能性があります。さて、来年の株主総会はどうなるでしょうか。

 川崎汽船は導入していた買収防衛策を廃止してしまったので、もう一度導入するには相当な理屈が必要だと思いますが、まだ買収防衛策を導入していない会社であればどうでしょうか?例えば、10%持たれた段階で買収防衛策を導入してはどうでしょうか?おそらく、「買収防衛策を導入することで、ファンドを刺激してしまうのではないか?」と気にされるのでしょう。

 ファンドにとってそれは刺激ではありません。「あー、導入したのね」と。想定の範囲内です。何度も申し上げますが、投資ファンドは投資戦略を決めています。どの程度の株式を買うかも決めています。

 ただ、買収防衛策があると、20%以上を買うのはハードルが出てきます。けっこう面倒くさいです。いろいろなやりとりが出てきます。どういうやり取りかは、セゾン情報システムズのHPを見るとわかります。

 エフィッシモのことばかり書いていますが、これは単にわかりやすいからです。同じようなことをするファンドはほかにもいます。なぜこだわるか?放っておくと、本当に支配されてしまうリスクがあるからです。もしくは、エフィッシモの持分が第三者に譲渡され、予期せぬ相手に支配されるリスクがあるからです。

貴社は「うちは川崎汽船のようにはならないよ」「うちはアデランスとは違う」と言い切れるでしょうか?

 

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