2016年09月28日

No.3 議決権行使助言会社の説明責任など3コラム

■議決権行使助言会社の説明責任

少し前ですが、日本経済新聞の「大機小機」にありました。最後の部分を引用すると、「助言機関を登録制にし、助言株主の取引頻度の開示などを義務づけ、日ごろどのような株主のために助言しているのか説明責任を果たすべきではないだろうか」とあります。

説明責任???誰に対する説明責任なんでしょうか?

私も、議決権行使助言会社は好きではありません。なぜなら、助言できない議案にまで助言するし、場合によってはとんちんかんな助言だからです。大塚家具のプロキシーファイトの際、ISS、グラスルイスともに大塚久美子社長を支持したと記憶しています。久美子社長の経営計画を支持したということです。

 

ヤフーファイナンス

最近の大塚家具の株価です(正確な株価データはご自身でご覧ください)。右肩下がりですねえ。既存店売上高がだいぶやられているみたいですね。これが、ISSとグラスルイスが支持した経営者の結果です(もちろん、中長期の結果が出ていないので何とも言えないところはあります)。なんとなくですが、助言会社ってあのとき、「うーん、お父さんって、株式市場とかIRとかわかってないよねえ。がんこ親父って感じ。経営者っていうより、昔のあきんど、って感じだよねえ。それに比べて久美子社長は銀行出身だし、IRわかってるしー。やっぱ久美子社長だよね!」的な助言してません?気のせいだといいのですが・・・

それと、あるアクティビストがある会社に大規模自社株買い、大幅増配を株主提案したケースがありました。グラスルイスは簡単に言うと「自社株買いや配当は、会社の内情が正確にわからないと判断できないから、経営陣に賛成推奨している以上、経営陣が決めること」として株主提案を支持しませんでした。一方ISSは「提案されている自社株買いや配当は可能」として株主提案を支持しました。

ちなみに、提案された自社株買いと増配の両方を実施すると、ウン千億円の資金が必要になります。会社の手元資金だけではムリです。お金、借りてこないとダメです。まあ、その会社であれば、お金を引っ張ってくることは可能だったのかもしれませんが、それって、外部の人間にわかることですかね?会社の財務担当者が、銀行や証券会社と協議しないとムリですよね。貸さないってなったらどうすんの?表面上の財務諸表だけ見て助言してません?資金繰りとか考えてます?

などなど、助言会社にはあまりいい思い出がありません。でも、説明責任はないと思います。そもそも、助言会社って、機関投資家からしたら面倒くさい株主総会議案の検討を、代わりにやってお金をもらっているわけですよね?お金を払ってくれている機関投資家にに対する説明責任はありますが、それ以外の方々に対する説明責任はありません。

問題なのは、助言会社の世界がほぼISSの独占状態ということではないでしょうか?また、助言会社に対する批判勢力がないということも問題かと思います。ISSが言ってるから右に倣え、だとおかしいですし、おかしな助言をされたことで反論する会社もありますが、反論したところでたかが知れています。あまり効果はないでしょう。

企業サイドの総務担当者でなんか団体作って、毎年毎年、助言会社の助言内容をレビューして、機関投資家にレポートを送ってみたらどうでしょうかね?株懇とか、そういう機能を担えないんですかね?経団連とか?

■相談役って、ダメなの?

ISSが2017年以降、定款変更を伴う相談役制度の導入に反対するそうです・・・

何もそこまで・・・と思います。顧問だといいのかな?

通常の上場企業は、すでに定款において相談役などの役職を定めている企業が多いとは思います。たまーに、「取締役相談役」という役職の方がいらっしゃるので、こういう場合はどういう判断をするのでしょうか?ISSの意図としては、「社長経験者など有力OBが相談役として残ると、事業撤退などの経営判断が遅れる恐れがあるため」だそうです。

じゃあ、会長・社長の経験のない、副社長や専務が相談役になるのはどうなんでしょう?まあ、相談役設置に関する定款変更は一律反対するんでしょうね。

東芝の不適切会計問題では相談役の影響が大きく、不採算事業の見直しが遅れたことが一因と見られていることも、相談役反対の要因の一つのようです。

ただ、いつも思うのですが、こういった東芝などのケースをもとに、相談役制度も諸悪の根源の1つだ!!としてしまうのはいかがなものでしょうか。

相談役をなくしてしまうと、逆に、会長の在任期間の長期化につながっちゃったりしませんかねえ・・・会長ポストを譲って相談役に退こうと思っても、相談役ポストがないと、「もうちょっと会長職にとどまるか」なんてことになったり・・・そうなると、次にISSは、●年以上会長職に留まっている人には反対を推奨する、などの基準を出してくるのでしょうか?

そもそも、ほとんどの上場企業はすでに相談役制度を定款に入れているんじゃないでしょうか。そうすると、次にISSはどうするのでしょうか?「相談役制度を採用している企業の会長・社長選任議案に反対推奨!」ってことを言い始めるのでしょうか。

ISSって、日本社会の変化を促したいのでしょうか?ISSの言わんとすることもわからんでもないのですが、議決権行使助言会社って、議案の助言をする一民間企業ですよね?そこまで言うのは、言いすぎという気がします。

■エフィッシモの投資先

「エフィッシモって、第一生命とかリコーの株も持ってるんでしょ?なんで?時価総額大きいよね?」という質問をいただいたことがあります。

そうですね。エフィッシモって、上場子会社とか資本上位会社が存在する会社の株式を買ってましたから。上場子会社の株式を買って、いろいろと経営に対して注文し、親会社が完全子会社化するときに売り抜ける、というイメージでしょうか。ダイワボウ情報システムの株式を約40%買い増し、資本上位会社だったダイワボウが結果的にTOBを実施して、エフィッシモは応募しました。その際、かなりの売却益を得たと言われています。

思うに・・・過去の投資は、広告宣伝だったという見方ができるかもしれません。つまり、ダイワボウ情報システムや他の銘柄である程度設ける、新聞で報道される、名前は売れる・・・金が集まる。。。

エフィッシモって、アクティビストなんでしょ?けっこう厳しい要求してくるんでしょ?どんどん買い増してくるんでしょ?ということになると、エフィッシモの大量保有報告書が出ただけで、株価が急上昇することもあります。現に、最近、大量保有が出た先の株価はけっこう上がりました。

上場子会社や資本上位会社が存在する会社は、そうはいっても限られますし、規模もさほど大きくはないでしょう(ドコモなどもちろん例外はあります)。

もともと、大きな企業に投資はしたかったけど、資金がなかった。だから、ある程度の企業で儲けて名前をうって資金を集めた。

と考えれば、今はいたって普通の機関投資家、と考えることもできますね。まあ、ただ、普通の機関投資家は、特定の企業の株、37%も買いませんけどね。

時価総額が数千億円規模だと、エフィッシモの投資対象となる可能性はあります。「ま、うちは数兆円だから買ってこないだろう」とお考えになる会社もあるかもしれませんが、そうとは限りません。時価総額数兆円の会社は、外国人株主比率がそこそこ高いはずです。1%買って株主提案されたら・・・そうです。議決権行使助言会社が株主提案に賛成推奨してしまうと、持分は1%にすぎなくても、株主提案に賛成する株主はかなりいるかもしれない、という事態になってしまうかもしれません。

 

このコラムのカテゴリ

関連する
他のコラムも読む

2018年06月08日 有料記事

No.356 各社のISSへの反論

カテゴリからコラムを探す

月別アーカイブ