2016年12月01日

No.27 どうしても守りきれないとき~ホワイトナイト~など2コラム

■どうしても守りきれないとき~ホワイトナイト~

 ある会社に買収提案がありました。アドバイザーは「ホワイトナイトに救出を依頼しましょう!どこの会社に頼みましょうか?」とアドバイスしました。その会社は「うちの安定株主比率知ってる?本当にホワイトナイト、必要?」と答えました。

 なぜアドバイザーはホワイトナイトという防衛手段をすすめたのか?簡単です。通常のアドバイザリーよりも、ホワイトナイトが出てきた方がもうかるからです。TOBがからみますから。ですので、本当にホワイトナイトが必要な状況かどうかは、自社の安定株主比率を検証した上で見極める必要があります。

 しかし、本当にホワイトナイトが必要な場合もあります。例えば、10年くらい前の話になりますが、オリジン東秀(オリジン弁当のオリジンさんです)がドン・キホーテからTOBをかけられたときです。TOBをかける前にドン・キホーテはすでにオリジンの株式を約23%取得していました。オリジンの創業者のご遺族から事前に取得していたのです。まあ、これは公表されていたことですから、オリジンもすでに知っていました。株式取得後、5か月ほど経過してTOBを実施されました。細かくなってしまうのでざっくり言いますが、TOBを実施されると、過半数を取得されるリスクがかなり高い状況でした。ですので、オリジンはホワイトナイトに救出依頼をしました。どこに頼んだか?イオンです。結果、イオンのカウンターTOBは成功しました。

 ホワイトナイトに救出を依頼する際に、最も重要な点は何か?「時間がない」ということです。すでにTOBは始まっています。現在のTOBルール上は最短で30営業日で勝負が決まってしまいます。ですので、早い段階でホワイトナイトにカウンターTOBをかけてもらう必要があります。そのため、ホワイトナイト候補には早めに意思決定してもらう必要があります。

 あくまで外部からみた公表情報での推測です。イオンって、オーナー系ですよね?当然、企業規模は大きいので、オーナーの保有株式比率はそれほど高くはありませんが。オーナー系って、イメージですが、オーナーが即断即決してくれそうですよね?普通の会社みたいに、稟議を図って取締役会にかけて・・・それだけで2週間くらい経っちゃいそうですよね?

 オーナー系であれば、オーナーに意思確認をすればすぐに決めてもらえそうです。ですので、有事になって、どうしても自力では防衛できない場合はホワイトナイトに救出依頼をすることになりますが、ホワイトナイト候補の意思決定プロセスはどうなっているのか、即断即決してくれる会社なのか、ということが非常に重要になってきます。

 逆にホワイトナイトを依頼された場合も同様です。即断即決が求められます。

■カプコンという会社

 2016年11月26日(土)日経「株投資 大株主情報に注目」という特集にありました。テンプルト、ハリスアソシエイツ、両方とも著名な投資家です。ハリスアソシエイツのほうは、比較的「モノを言う」投資家です。カプコンという会社、注目しています。

私の仕事柄、「投資対象」としてではありません。2014年6月株主総会で買収防衛策を否決された会社です。過去の臨時報告書を見ることができないので、新聞報道ベースですが、約52%の反対で否決されたそうです。

 買収防衛策を導入・更新する会社が、買収防衛策が否決されそうになると、株主総会前に議案を撤回することがあります。カプコンはそうしなかったんです。株主総会前に議案を撤回するのではなく、堂々と否決されました。

 でも、そこで終わりませんでした。2015年6月の株主総会にもう一度議案を出しました。

以下、カプコンのホームページに掲載されています。

 信念ですね。

ちなみに、2014/3期末、つまり、否決された時点での株主構成は以下のとおりです。なお、自己株式を除いた議決権ベースだと、外国人株主比率は45%です。

そして、2015/3期末、つまり、再度株主総会にかけて賛成された時点の株主構成は以下のとおりです。外国人株主比率は議決権ベースだと44.5%とほとんど変化はありません。少し減ったくらいです。賛成率は新聞記事によると75%程度だったそうです。

 外国人株主比率が高い会社の皆さん。例えば、「うちにエフィッシモみたいな投資ファンドが現れたとき、買収防衛策を導入できるだろうか?」とお悩みになったことはありませんか?外国人株主比率が高いと買収防衛策を導入しても、株主総会で否決されるかもしれません。でも、カプコンのケースは参考になります。流行に乗って導入(継続)した訳ではなく、信念をもって導入することを決め、きちんと説明すれば外国人投資家であっても納得してくれることはあります。

 また、否決されたから、もしくは、否決されそうだからといってあきらめる必要はないです。堂々と否決されてください。株主構成は毎年変化します。今年がダメなら、来年です。ずっと総会にかけ続けてください。少なくとも「当社は買収防衛策が必要だと考えている」というスタンスを主張していることにはなります。買収防衛策が否決されそうだからと言って、自ら撤回することは避けた方がよいです。自ら「買収防衛策は必要ない」と認めてしまうことになります。必要ないと認めてしまうと、いざという時に取ることができる策が限られてしまいます。

 ちなみに、パナソニックは買収防衛策を株主総会にかけていません。以前も申し上げましたが、「取締役候補者は買収防衛策の導入に賛成しています」と役員選任議案に注を入れて、取締役候補者に賛成してくれれば「間接承認」されたとみなしています。こういうやり方もあります。

 

 

このコラムのカテゴリ

関連する
他のコラムも読む

私はこれから日本はまともな敵対的TOB時代に突入すると見ます。これまでのように敵対的TOBなのに都合よく51%しか買わず、過半数しかもっていないのに好きなように経営する目的の敵対的TOBは成功しにくくなるのではないでしょうか?

続きを読む

昨日、買収防衛策を継続した会社の特徴をまとめましたが、今日は廃止した会社の特徴です。

続きを読む

カテゴリからコラムを探す

月別アーカイブ