2019年08月28日

No.656 いっぱい事例が出てきてよい機会なので(無料公開)

今日のコラムは、すでにほぼ同じ内容をお読みになったお客様もいらっしゃるのですが、よい機会なのでまとめます。

今年に入って伊藤忠商事がデサントに対して敵対的TOBを仕掛け、成功させました。そしてエイチ・アイ・エスがユニゾHDに対して敵対的TOBを仕掛け、失敗しました。しかしエイチ・アイ・エスが失敗したのは、ユニゾHDにホワイトナイトが現れたからです。エイチ・アイ・エスの登場により、ユニゾHDは経営の独立性を失いました。そして村上ファンドが数々の会社の株式を大量に取得しています。これは10年以上前の、村上ファンド・スティール・パートナーズ騒動、王子製紙による北越製紙への敵対的TOBが起きた時代以上の状況になっています。

さて皆さん、真剣に企業防衛のことを検討していますか?コラムを読んでいるから検討していることになる、ではありません。コラムはあくまでコラムであり、受動的です。私の意見を読んでも、社内で行動に移さなければ意味がありません。もちろん、どの上場会社よりも真剣に検討している会社を私は知っています。その会社に対しては私から何もアドバイスすることはありません。まあ、そう言ってしまうとその会社様から「じゃ、契約解消ね!」と言われてしまうので、私は次の防衛戦略を日々考えています(笑)

そういう会社はいいんです。ちゃんと考えている会社だからです。時価総額も拡大させ、そして買収防衛策もちゃんと継続している。でもほとんどの会社は、コラムは読んでいるけど、買収防衛策を導入していますか?していませんよね?

私は基本的に「上場会社全社、買収防衛策を導入すべし」と考えています(買収防衛策=事前警告型ルールのことです)。しかし会社によっては「今すぐ導入すべきではない」という会社もあります。なぜなら、買収防衛策のことをちゃんと理解していないからです。買収防衛策の効果と限界をきちんと把握し、それでも買収防衛策は必要だと理解した会社は即導入すべきなのです。

では、買収防衛策を含めた企業防衛体制についてはどうでしょうか?これについては、今すぐ考え始めるべき、常に経営課題の一つとして捉えておくべきと考えています。なぜなら、企業防衛体制の検討とは会社の危機管理体制の検討だからです。危機管理体制を検討、整備する必要のない会社など世界中を探してもありません。これについては今すぐ検討を開始しなくてはなりません。なぜ今すぐなのでしょうか?「これだけ世の中で敵対的TOBが起きているから?」 それもそうです。でもそれだけではないのです。

今すぐ検討を開始しないのなら、いつ開始しますか?今検討をしなかったら、いつ検討を開始するのか?それはアクティビスト・ファンドに株を買われて大量保有報告書が提出され、その後ドンドン株式を買い増されている有事の状況で検討を開始するのです。それだと遅いのです。企業防衛体制の検討というのは、絶対に避けられない経営課題ですし、避けてはいけない経営課題です。「うちの会社が狙われることはないだろ?買収防衛策はもう廃止していいんじゃないか?」と考えてしまい、廃止したのが川崎汽船や日本郵船です。ああなってはダメなんです。でも行動に移さない会社は、ああなるリスクがあるのです。だって今検討を開始しない会社は、誰かに狙われるまで会社としてちゃんと検討しないのですから。誰かに狙われてからでは遅いです。もうツミです。会社が企業防衛体制をちゃんと検討していること、場合によっては買収防衛策もちゃんと導入し公表すること、買収防衛策を導入しない場合でもコーポレート・ガバナンス報告書等で企業防衛体制の検討状況、整備状況について公表すること、などをちゃーんとやっておく必要があるのです。

「うちの会社はちゃんと検討しているし、整備している」ということを世の中に公表する必要があります。「この会社は脇がしまってるなあ。ターゲットにしないほうがいいな」と買収者に思わせることが重要なのです。検討、整備していることを見せないことには、買収者にはわかりません。これからの世の中、IR体制は見直したほうがよいです。買収されるリスクもあるということを念頭に情報発信、収集の方法を考えていく必要があります。

 

このコラムのカテゴリ

関連する
他のコラムも読む

今年も数多くの会社に株主提案がなされましたが、天馬など特殊な状況の会社を除くと、株主提案は可決されませんでした。一方、敵対的TOBですが、佐々木ベジvsソレキア、伊藤忠vsデサント、前田建設vs前田道路などで成功しています。

続きを読む

カテゴリからコラムを探す

月別アーカイブ