2018年05月09日

No.325 ストラテジックキャピタルが図書印刷に株主提案

 村上ファンド創業メンバーの丸木氏の会社「ストラテジックキャピタル」が図書印刷に株主提案をしました。http://www7.webcas.net/mail/u/l?p=7ntsnn04uHhqpZT1X

 株主提案の内容は、「配当280円」「任意の指名委員会及び報酬委員会の設置に係る定款変更」「政策保有株式売却に係る定款変更」です。図書印刷の予想配当金は8円ですから、大幅な増配ですね。発行済株式総数が43,133千株ですので、配当総額は約120億円です。図書印刷の連結B/Sを見ると、現預金5,395百万円+有価証券26,500百万円+投資有価証券29,978百万円-有利子負債800百万円=61,073百万円です。時価総額が43,220百万円ですので、時価総額以上の現預金や有価証券を保有している状況です。

 そりゃまあ「現金と有価証券持ちすぎ!」と言われるでしょうね。さて、この株主提案ですが、可決できるでしょうか?図書印刷の株主構成は、

 はい。図書印刷は凸版印刷の子会社です。株主提案は否決されます。では、凸版印刷の株主構成は?

 法人株主17.79%、日本生命4.29%、第一生命2.81%、従業員持株会1.98%、三井住友銀行1.79%、三菱東京UFJ銀行1.79%の合計30.45%が安定株主比率です。凸版印刷の時価総額は約6,400億円ですから、まあまあ高い比率だと思います。

 ストラテジックキャピタルの狙いは?凸版印刷による図書印刷の完全子会社化、でしょうね。ストラテジックキャピタルは東レの子会社である蝶理にも株主提案をしていることはコラムNo.317でお伝えしましたが、図書印刷の親会社である凸版印刷にも同じようなリスクがあると言えます。図書印刷には凸版印刷という親会社がいるから安全なのですが、凸版印刷には安定株主が約30%しかいません。外国人株主が22%います。上場子会社をグループに有している会社はコラムの読者には少ないかもしれませんが、「こういうリスクがあります」「だから完全子会社化すべきです」とは言いません。私は「会社は上場していてこそナンボ!」と思っていますので。ただし、リスク対策は真剣に検討しておく必要がありますし、その検討過程において完全子会社化もしくは売却という話に至ることもあり得ます。一方で、資本上位会社が存在する会社は「そういう話が検討されているかもしれない」という想像を膨らませて、対策を検討しておくことも重要です。

 

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