2017年04月20日

No.80 ベジからの手紙

と言っても、私が受け取ったわけではありません。おそらく2016年9月末の株主名簿をもとに送付しているものだと思います。株式掲示板に掲載されていました。以下、主な内容を抜粋しますが、全文見てみたいという方がいらっしゃったらお送りしますのでお申し付けください。けっこう正しいことを主張しています。

 

 これは1枚目です。右上にあるとおり、5回も送っています。「富士通はソレキアを買収しようとしているが、私は買収しようとはしていない」と主張しています。一見?と思ってしまいますが、佐々木ベジ氏はソレキア議決権の過半数を取得することを目的にしていないから「ソレキアを買収しようとは思っていない」という理屈です。全株買収ではなく、上場を維持することから、間違ってはいませんし、富士通と比較すれば理屈としてもとおると思います。

 確かに、富士通は全株買収して上場廃止と主張しているので、強圧的と言えば強圧的です。ですので、TOB価格は非常に重要です。

 「全株買収して上場廃止すると富士通は主張している。一番最初のTOB価格3,500円の提示から3週間も経っていないのに、富士通は5,000円に引き上げた。最初の提示価格はいったいなんだったんだ?」と。上場廃止にするのだから、本来富士通は1円でも高くソレキア株主から買い取るべきではないのか、と。また、「5,000円というTOB価格は富士通の株主にとって経済合理性に適っているのか」とも主張しています。まあ、富士通にとっては大きなお世話でしょうが、ここはポイントですね。

 ただ、富士通としてみたら、1円でも安く買うことが自社の株主の利益を考えれば正しい行為です。この場合、責められるべきは富士通ではなく、富士通のTOBに応募推奨したソレキア経営陣です。富士通のTOB価格が3,500円のときに、ソレキア経営陣はソレキア株主に対して、富士通のTOBに応募するよう推奨しました。にもかかわらず、富士通はTOB価格をどんどん引き上げました。ソレキア経営陣は「いったい富士通とどういう交渉をしたんだ?不当に安く会社を富士通に売却しようとしていないか?」「どうして価格の高い佐々木ベジのTOBに応募推奨しないんだ?富士通に助けてもらって、役員としての地位を約束してもらってないか?保身じゃないのか?」と批判されるかもしれません。

 佐々木ベジもちゃんと考えていますね。ここで、ソレキア経営陣の責任を追及しています。そもそもBPSを大幅に下回る価格でのTOB、かつ、上場廃止という条件に対して「応募してください」とソレキア経営陣は推奨しました。本来は株主のために1円でも高い値段を富士通から引き出す義務があるはずです。いったい3,500円で応募してくださいと推奨したのはなぜですか?と聞かれたらどう答えるのでしょうか。

 今回の対応は保身と見なされても仕方ありません。今回のソレキアを巡る攻防はまだ終わっていませんが、今回の対応はかなりお粗末です。富士通を引っ張り出してきたら、TOB合戦になるのはわかりきっていました。であれば、一番最初のTOB価格はある程度高い価格を引き出しておかないと、ソレキア経営陣は後々、説明に困ってしまいます。ソレキア経営陣は、今かなり恥ずかしい対応をしているという認識がないのかもしれません。

以前にも指摘しましたが、ソレキアの経営陣が感情的になり過ぎた結果だと思います。上場している以上は敵対的TOBの対象になることはどの会社にとってもあり得ます。普段から「うちに敵対的TOBが仕掛けられたら?」という準備をしていなかったのでしょう。

 貴社に対して、市場株価に30%上乗せした価格でTOBを仕掛けられたとして、どう反論しますか?これを考えることが有事対応に備えた平時の準備です。「30%上乗せか。だったらこういう経営施策や株主還元策を公表すれば30%以上株価が上がるかな」とお考えになりましたか?だとしたら、有事ではなく平時にその経営施策を実行してはいかがでしょうか?有事を考えることが平時の経営施策につながり、企業価値向上につながります。買収防衛策の仕組みを考えることなどは、私のようなコンサルタントにまかせておけばよいことです。大事なのは有事に備えて企業価値向上策を考えること、です。

 

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