2017年05月19日

No.90 たぶんこの人はプレスを読んだことがないなど2コラム

■たぶんこの人はプレスを読んだことがない

 季節がら、買収防衛策関連のコラムが多くなっています。先日の日経に「買収防衛策、廃止相次ぐ 投資家の反対姿勢強く」という記事がありました。内容を読んでみると、おもしろいことが書いてあります。「自己資本利益率などの低い企業が買収阻止をすると、株主価値を損なう可能性が高い」(大和住銀投資顧問の蔵本祐嗣投資責任オフィサー)と言っています。日本企業が導入している事前警告型ルール=買収阻止、と考えているようです。たぶん、この方、事前警告型ルールのプレスリリースを読んだことがないのだろうと思います。素直にプレスリリースを読めば、事前警告型ルールが買収を阻止するルールではないことがわかるはずです。にもかかわらず買収を阻止する仕組みと考えているようです。

 ただこれに関しては「投資家の理解不足!」と責めることはできません。日本企業の説明の仕方にも問題があります。投資家に説明する際に「当社が導入する買収防衛策は経営者の保身に使いません」・・・いやいやいや。すでに「買収防衛策」と言ってしまっているところで「絶対保身に使うだろ!」と突っ込まれます。記事にも「買収防衛策は経営者の保身に使われるなどとして、外国人投資家からの批判が以前から強かった」とあります。確かに「買収防衛策を導入します」と説明すれば、「どんな買収提案も拒否するんだろ!」と捉えられてしまいます。

 これは私自身も反省すべきかもしれません。コラムでも「買収防衛策」と説明していますので。本来であれば「事前警告型ルール」と書くべきなのでしょうが、ついつい「買収防衛策」と書いた方がわかりやすいのでそうしてしまっていました。

 いくら社外取締役を増やそうが、投資家は買収防衛策の導入には反対するでしょう。なぜなら「買収防衛策」だからです。投資家に賛成してもらうためには、まず導入企業の意識を変えなくてはなりません。買収防衛策という考えは捨てるべきなのでしょう。買収防衛策という認識を持っている以上、頭のどこかに「買収を阻止する」という発想が残ってしまうでしょうし、投資家に見透かされてしまいます。

 買収の対象になった会社の対応を見ていると、たまに「株主のことを考えて意見表明をしているのだろうか?」と疑問を持ってしまう場面があります。例えば、ソレキアなどのように「絶対佐々木ベジには反対!」といった対応です。お気持ちはわかるのですが、TOBという「株主に対する提案」に関してTOB価格を無視した対応を日本企業が行えば、外国人投資家からの信頼は低下する一方です。

 今後、佐々木ベジやエフィッシモ、村上ファンドなどによる攻勢がますます激しくなると私は考えています。なぜなら持ち合いが減るからです。これまでは対象にならないと思われた時価総額が大きい企業も買収対象になってきます。

 やはりこれからは、株主のことを真剣に考えた事前警告型ルールを整備することが重要なのではないでしょうか。「買収防衛策だから反対!」などと安易に投資家に反対されてしまう策ではなく「表題には買収防衛策と書いてあるけど、この施策はまさに株主の利益を守るための策だ!」と思ってもらえる施策が必要です。

■さみしい板

 5月19日(金)9:15時点のソレキアの板です。うーん、さみしい。もちろん値段はついていません。

 富士通のTOB期限が来週5月22日(月)です。佐々木ベジのTOB期限は5月23日(火)です。ですので、受け渡し決済を考えると、佐々木ベジのTOBに応募するには昨日5月18日(木)の段階でソレキア株式を約定していないとダメです。受け渡しは約定の日を入れて4営業日目に行われますので。ソレキアの最近1年間の株価推移です。佐々木ベジのTOB価格は5,450円です。これからの佐々木ベジによるソレキアの経営改革を期待して株価がつく可能性がある一方で、TOB前の2,000円以下の価格まで下がる可能性があります。

「アクティビストに目をつけられても、うちの出来高だと買えないだろう」という意見を聞いたことがあります。ソレキアを見てどうでしょうか?買えます。TOBを仕掛けられたら出来高が急増します。

火曜日にTOBが終了し結果がわかります。ソレキアにとってはこれからが大変です。

 

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東洋経済オンラインに興味深い記事が掲載されています。なお余談ですが、コスモがMoMをやめて普通決議での発動にしたのは指針が理由ではないと思います。単に普通決議で戦えると判断したからです。

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