2019年12月16日

No.729 東芝・ニューフレアテクノロジー・東芝機械vsHOYA

日経ビジネス東芝に待ったをかけたHOYA、カギ握る東芝機械

日経HOYA、東芝子会社に敵対的TOB 最大1477億円

NHKHOYAが東芝のTOBに対抗

朝日新聞HOYA、ニューフレア社買収方針 東芝のTOBに対抗

対抗TOBと買いている媒体が多いですね。でもこれは敵対的TOBです。

さて、東芝グループによるニューフレアテクノロジーへのTOBですが、確かにキャスティングボートを握っているのは東芝機械です。東芝機械が東芝グループのTOBに応募してしまえば、成立します。でも東芝機械は社名に東芝と入っているものの、もう東芝グループではありません。来年4月には社名も芝浦機械に変えます。

しかも東芝機械の株主には村上ファンドがいます。日経ビジネスによると村上世彰氏は

12月13日に日経ビジネスの取材に応じた村上氏は「HOYAの発表には驚いた」としつつ、「東芝機械は東芝機械の株主価値を最大にするため、きちんと東芝やHOYAと交渉するだろう。単に今のまま東芝のTOBに応じるなんてことはしないはずだ」とコメントした。

だそうです。ただ、HOYAのニューフレアテクノロジーに対する敵対的TOBが成立するかどうかは、東芝グループが応じるかどうかにかかっており、東芝グループが応じないとすれば、TOBそのものが不成立になります。ですから東芝機械は「東芝グループがHOYAの提案には応じないと言っているから、HOYAのTOBは成立しませんよね?確かにHOYAの提示しているTOB価格は12,900円と東芝グループが提示している11,900円より1,000円高いけど、東芝グループが応じない以上、12,900円で買ってもらえない訳です。しょうがないけど東芝グループのTOBに応じざるを得ませんね」としてしまえば東芝機械は東芝グループのTOBに応じることができるのではないでしょうか?

この勝負は東芝グループ次第です。あと、HOYAがどれだけTOB価格を引き上げてくるかにかかっています。たかが1,000円程度の差であれば、東芝グループは応じないでしょう。「その程度のプレミアムであれば応じない。ニューフレアテクノロジーを完全子会社にしてシナジーを発揮すれば、もっと高い価値を産むからだ!」と。

しかしこの理屈をあまり前面に押し出し過ぎると、ニューフレアテクノロジーの一般株主が東芝に対して「ニューフレアテクノロジーを完全子会社にしたらそんなに価値が産まれるのなら、11,900円というTOB価格は安いのではないか?東芝グループはニューフレアテクノロジーの一般株主から不当に安い価格で買おうとしているのではないか!」と主張するのではないでしょうか?東芝がHOYAの提案には応じないと主張すると、ニューフレアテクノロジーの一般株主は「そんなに価値があると思うなら、TOB価格を上げよ」と言うでしょうね。

価格合戦になったとすると、東芝の取締役会はどう判断するでしょうか?12名中7名が社外取締役です。うち3名(4名?)が外国人の社外取締役です。株主価値重視の取締役会です。「そんな価格でHOYAが買うと言うなら、それ以上の価格を出すのは高すぎる。HOYAに売るべきだ」と判断するかもしれません。

東芝はもう日本の会社ではないのです。だって、外国人株主比率が69.79%もあるのです。東芝は上場を継続するために増資をせざるを得なかったのかもしれませんが、株主構成が実は企業価値向上に影響を与えるかもしれないということに気付いていなかったのではないかと私は思います。やはり東芝は一度上場を廃止して、会社の内部体制や株主構成などをきちんと見直すべきだったのではないでしょうか?上場を維持するために、安易にアクティビストに増資などをしたからこんな会社になってしまいました。

 

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