2018年06月19日

No.364 合同会社M&S vs神田通信機

ときどきコラムで合同会社M&Sという会社を取り上げています。私はまったく知らなかった会社です。赤阪鐵工所、神田通信機などに投資しており、この2社は買収防衛策を導入しました。合同会社M&Sは2社の買収防衛策導入に対して批判しています。

 赤阪鐵工所に対しては買収防衛策の撤回を求める書簡を送付したそうです。また、増配の株主提案もしました。

https://ms-llc.net/news/akasakatekkoujyo_20180320/

https://ms-llc.net/news/akasakatekkoujyokabunushiteian_20180607/

 神田通信機に対してはプロキシーファイトを実施しています。全然話題になっていません。50円配を193円配にせよという増配提案と買収防衛策導入の否決だそうです。

https://ms-llc.net/news/kandatuushinkisankoushorui_20180607-2/

 ちなみに、合同会社M&Sは「インターネット上の誹謗中傷記事に関して」というのも公表しています。

https://ms-llc.net/news/hiboutyusho_20180605/

 2社の株主構成をざっくり見ておきます。まず赤阪鐵工所。

 上位大株主には、アカサカ共栄会13.02%、赤坂忍氏4.77%、静岡銀行4.17%、みずほ銀行4.17%、東京アカサカ共栄会3.37%、赤阪全七氏2.97%、久門喜久男氏1.65%、明治安田生命1.55%という安定株主と思われる株主がいます。これに法人株主14.34%を加えた50.01%が安定株主比率です。はい、買収防衛策は100%可決できます。

 次、神田通信機!

  

上位大株主には安定株主と思われる個人株主が8名おり、保有比率の合計は35.16%です。これに従業員持ち株会4.86%と法人株主4.12%-合同会社M&S3.56%=0.56%を加えた40.58%が安定株主比率です。高い!はい、これも買収防衛策可決!ちなみに、個人株主比率が非常に高いですから、安定株主比率がもっと低くても可決できるでしょうね。まあ、上位に登場しない個人の安定株主もいらっしゃることでしょうし。

 しかし、合同会社M&Sは神田通信機にはプロキシーファイトを仕掛けたけど、赤阪鐵工所には仕掛けないのですね。なぜでしょうか?それは、株主構成の違いにあるのではないでしょうか?両社とも個人株主比率が高いものの、赤阪鐵工所の安定株主は法人株主や持株会、銀行、創業家などで構成されています。プロキシーファイトをやっても勝ち目はないことが明らかです。一方、神田通信機の安定株主がほとんど個人株主で、かつ、本当に会社側の株主なのかわからない面もあります。

 神田通信機の株主構成って・・・皆さん、似たような会社を覚えていますか?安定株主比率が40%程度あり、個人株主比率が高かった会社です。ソレキアです。ソレキアは安定株主比率がそこそこ高かったけど、高い値段を提示されれば売却してしまう個人株主の多い会社でした。そして佐々木ベジに買収されました。神田通信機は今回の株主提案において勝利します。間違いありません。でも、合同会社M&SがTOBを仕掛けてきたら?神田通信機の時価総額は20億円しかありません。半分買うのに10億円です。30%のプレミアムを付けたとしても13億円です。合同会社M&Sの資金力はわかりませんが、13億円くらい用意できるだろうと考えておいたほうがよいでしょう。

 「だから買収防衛策を導入したんでしょ?」 そうですね。でも、買収防衛策には限界があります。買収防衛策を破るのなんて簡単ですから。

 

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