2018年08月09日

No.400 個人投資家も「もの言う株主」たれ(2018/8/5日経ヴェリタス)

 日経ヴェリタスにタイトルの記事が掲載されています。コラムをご購読いただいているお客様よりご指摘いただきました。主な内容は以下の通りです。

・「ハゲタカ」が再びテレビドラマになった。近年、日本の市場で「もの言う株主」の存在感が高まっていることと無縁ではないのかもしれない。

・機関投資家がもの言う株主の提案に賛成するケースも増えている。

・しかし、株主提案が可決されたり、会社提案が否決されたりすることもない。持ち合いのせいである。

・個人株主はいかに振る舞うべきか。株主総会に行くべきだ。総会は最高のIRの場である。株主として直接経営トップに質問できる。

・総会に行かなくても議決権行使はしよう。個人株主は議決権の数では機関投資家にかなわない。しかし、個人株主からの役員選任議案への否決票が増えれば、経営に一定の緊張感を与える。

・黙って配当や値上がり益を享受するばかりが投資の目的ならばもったいない。投資先企業の経営評価に一石投じる権利を行使するのも投資の醍醐味の一つではないか。

・アクティビストになったつもりで経営陣を評価しよう。

 大変申し訳ないのですが、このような意見を述べても個人投資家の議決権行使率は高まりません。いくらマスコミが報道しても国民が選挙に行かないのと同じです。皆さん、自社以外の株式を持っていらっしゃいますか?議決権行使をしますか?私はします。もちろん白紙です。だって、社長選任議案に反対するなんて、なんだかヒステリックでみっともないじゃないですか。野村ホールディングスの株式をまだ保有していますが、役員選任議案に反対などしません。提案されている候補者以外に相応しい方がわからないからです。代替案がない以上、反対はしません。

 ではここで、株主と経営者の関係について考えてみたいと思います。私が今の事業を行うにあたって、もし資金が必要になった場合、どうしましょうか?銀行を頼るのも一つの手ですが、コラム読者である皆様に出資をお願いすることにします(安心してください。私の現在の事業は資金を必要としていませんので、皆さんにお金を出してくださいとお願いしに行くことはありません)。コラムを400回にわたって読んでくださった皆さんは「よし、㈱IBコンサルティングの事業はうまくいきそうだし、何より鈴木は信用できるから出資してあげよう」と決めたとします。私は皆さんに「10年待ってください。10年以内に必ず上場させてみます!」と宣言します。

 さて皆さん、10年間のうちに私を解任しようとしますか?しないでしょ?「事業を立ち上げたんだから、うまくいくのに10年くらいかかるさ。あせらずにがんばれ!」と声をかけてくださると思います。なぜかというと、新規事業を立ち上げて軌道に乗せるまでに時間がかかることは、経営者・ビジネスマンである皆さんが一番よくわかっているからです。

 そして10年たって晴れてわが社が上場しました。私は皆さんに「今までお付き合いたいだきありがとうございました。ついては皆さんにも利益を手にしていただきたいので、上場時に売出しをしていただきたい」と申し上げます。皆さんもわが社の上場によって利益を手にします。これが株主と経営者のよりよい関係性であると私は認識します。

 上場後、皆さん以外に私の知らない個人投資家がわが社の株主になります。機関投資家も買ってくれるかもしれません。その顔を知らない株主が私に「配当を増やせ」「オマエはクビだ!」とおっしゃいます。私は常に腹を立てています。株主総会でも質問した個人株主に「そんなレベルの低い質問には答えない。勉強して出直してこい!」と一喝します。そして総会が荒れ、株価も荒れ、私はMBOすることを決断します・・・。

 以上、私の妄想です。個人株主は何を期待してわが社の株を買い、そしてどうして配当を上げろとか私をクビにしようとするのでしょうか?簡単です。自分の買った株価よりも値段が下がっているからです。個人株主は、会社の役員選任議案に反対して不満を表明したり、株主提案に賛成してうっぷん晴らしをしたりする前に、自分の銘柄探索能力を上げることを考えたほうがよいです。あと、買うタイミング、チャートを見る目も養いましょう。

 どうしても役員選任議案を否決したり、株主提案を可決させたりしたいのであれば、村上ファンドが投資している銘柄に投資すればよいのです。まあ、そういう投資はどうせ、高いところで掴んで、塩漬け状態になりがちですが・・・。

 力のない個人株主はどうすればよいのか?これも簡単です。個別株などに手を出さずに、インデックス投資してればいいのです。個別株に投資して大儲けしたいのであれば、10年位なにもせずに放っておくのがベストでしょ。個人が議決権行使など考えないほうがいいです。個人株主は会社提案議案に賛成していればよいのです。個人株主は「もの言う株主になろう!」ではなく「会社にかわいがられる株主になろう!」です。会社のことをよく研究し、経営者のことを信じて資金を託す。一度投資した以上、10年くらいは信じてみましょう。

個人株主は会社の応援団たれ。総会に行って質問するのではなく社長に対して「いつもがんばってくれてありがとうございます」と言いましょう。お土産を要求しちゃダメよ。

 

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