2018年01月16日

No.248 猛犬注意!

 と門に書いてある家と書いていない家だったら、どちらの家を泥棒は狙うでしょうか?外から見る限り、どちらも同じような家です。しかし、「猛犬注意!」の家には、猛犬かどうかはわからないものの、どうやら本当に犬がいるようです。当然ですが、犬がいない家を泥棒は狙うでしょうね。

 買収防衛策もこれと同じことです。財務や株主構成が非常に似た会社があるとします。一方は買収防衛策を導入しています。さて、アクティビストはどっちの企業を狙うでしょうか?当然、買収防衛策を導入していない企業を狙います。当たり前なんです。似たような財務体質、株主構成であれば手間のかからない企業を狙うに決まっています。買収防衛策があると、買収者は対応するのに非常に手間がかかります。大量の質問がなされて、回答しなくてはなりません。回答したと思ったら、追加で質問が投げられます。いつ終わるのかわかりません。時間がかかります。ルールを破って買収を仕掛けようとしたら、おそらく裁判になります。時間はかかるわ、金はかかるわで、買収者にとって買収防衛策は本当にジャマなんです。だとしたら、買収者がアクティビストの場合、当然、手間のかからない買収防衛策を導入していない企業を狙うのです。アクティビストは投資家ですから、合理的です。「買収防衛策を導入しているなんてとんでもない企業だ!オレ達が狙ってお灸をすえてやる!」などとは考えません。金儲け第一主義です。しかも、効率的に金儲けをすることに重きを置いているはずです。

 買収防衛策は、導入している企業と導入していない企業があるからいいんですよ。みんながみんな買収防衛策を導入したら、アクティビストは買収防衛策の破り方を研究してくるでしょう。買収防衛策を導入していない企業は必ずアクティビストのターゲットになると考えておいた方がよいと思います。

 なお、買収者が事業会社の場合は上記の考え方は当てはまりません。時間をかけてでも「あの会社が欲しいんだ!」と考えている場合、買収防衛策の有無は関係ないでしょう。買収防衛策がないほうの会社をターゲットにしよう!などとは考えないはずですから。でも、ファンドは違うのです。財務体質や株主構成がよく似た会社など、株式市場にはたくさんあります。株式投資でお金儲けをするという行為は、究極的な合理性の追求だと思います。ですから、投資家は非合理的なことはしません。これは想像ですが、買収防衛策を導入しているというだけで、ターゲットにはしない可能性があります。だって、面倒くさいですもん。私が投資家だったら絶対にそうします。時間をかけずに利益を最大化したいはずですから、あえて買収防衛策を導入している企業などターゲットにはしません。

 佐々木ベジだって、買収防衛策を導入していないからこそ、ソレキアをターゲットにしたのです。彼自身がソレキアに対する公開買付届出書で言っています。どうでしょうか?買収防衛策を導入しない企業が存在する以上、買収防衛策を導入しておけば、少なくともアクティビストのターゲットにはなりにくい、と思いませんか?私はそう思います。

 加えて申し上げると、アクティビストなどの機関投資家は出資者から要求されている目標リターンがあるはずですよね?買収防衛策を導入している企業なんて、相手にしていられるほど彼らに時間があるとは思えません。買収防衛策への対応で時間をかければ、他の投資対象にかける時間がなくなってしまいます。目標リターンを達成するためには、いかに投資資金や人材を効率的に使うか?が重要なはずです。買収防衛策を導入している企業にかける時間などないのです。「え?あの会社、買収防衛策を導入してるの?ヤメヤメ!だったら他の会社を狙おうぜ!買収防衛策の質問に対応するほどヒマじゃないよ」と考えることでしょう。買収防衛策導入企業をあえて狙うなどという非効率な行動を投資家が取るとは思えません。

 なお、これは、買収防衛策の後出しジャンケンには通用しないと思います。アクティビストに株を買われてから買収防衛策を導入しても、破られる可能性はあります。

 

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