2018年01月22日

No.252 物言う株主、再び攻勢(2018/1/21日経) 企業統治指針も追い風???

 1月21日の日経3面にあった記事です。「企業の経営に影響を及ぼす狙いがある重要提案行為を目的に株を大量保有するケースが相次ぎ、2017年は103件と08年以来9年ぶりの高水準となった。物言う株主は世界的なカネ余りや株高で資金力を増しており、日本で導入された企業統治指針も活動の追い風になっている。」とのことです。「物言う株主が求める資本効率の引き上げに対する意識が日本企業側にも広がり「提案が受け入れられる土壌ができつつある」(野村證券の松浦寿雄氏)という。」ともあります。

 日本企業の意識が変化したから、物言う株主の提案が受け入れられるようになったのでしょうか?違うでしょう。単に、昔よりも安定株主比率が低下し、株主総会で可決されるリスクが高まったと思ってしまったので受け入れてしまった、が正しいと思います。ポイントは、安定株主比率が低下したことで可決されるリスクが高まったと「思ってしまった」ことにあります。全般的に安定株主比率は低下していると思いますが、それでも株主提案が可決されることはまだないと思います。

 でも、日本企業サイドが「可決されるかもしれない」と思ってしまっているのです。だから、「受け入れよう」と考えてしまうのでしょう。企業統治指針は投資家の追い風になっていることは事実でしょう。一方、企業統治指針の適用によって日本企業の意識が変わったということはないと思います。重要な点は、安定株主です。安定株主比率の低下が日本企業の逆風になっています。アクティビストが騒ぐから、企業統治指針の適用でうるさいから、アクティビストの要求に応じよう・・・。さて正しいでしょうか?

 アクティビストが要求するから、増配する?正しい場合もあります。おおむね、正しいでしょう。でも要求する額が正しいかどうかはわかりません。とんでもない額の株主還元を要求され、ISSまで支持した提案がありました。本当に、現在の財務体質でよいのかどうかは、各企業が慎重に検証する必要があるでしょう。何が何でもため込むという姿勢には反対です。きちんと配当などを出すべきです。過度な安全志向はむしろ危険ですから。

 記事の最後に「物言う株主が株を保有する企業の株価は堅調だ」 そりゃそうでしょ?アクティビストの登場で、提灯ついてるんですから・・・。

 このように、アクティビストが物を言い、企業統治指針という当たり前のことしか書いていない指針が適用され、マスコミまでもがアクティビストを過度に礼賛する時代です。日本企業は何をやらなくてはならないのでしょうか?買収防衛策の導入は当たり前です。当たり前なんです。こんなものはさっさと導入しておくべきです。さて、次に大事なことは?安定株主対策です。今こそ、安定株主の中身を検証し、不必要な保有株を削減し、意味のある持ち合い先を見つける必要があります。買収防衛策の導入が必要かどうかなんて議論しているヒマはもうありません。買収防衛策は必要です。考える必要はありません。経営者の皆さんが考えるべきことは、実質的な企業防衛策・企業価値向上策である意味のある持ち合い先を探すことです。証券会社に「持ち合い先を紹介してくれ」と言う旧態依然とした持ち合いは終わりです。これから先は、経営者が意味のある持ち合い先を自らが見つけることが重要なのです。

 1月19日の日経によると、GMOインターネットや日本ペイント、帝国繊維に対して株主提案がなされたようです。明日以降のコラムで詳しく言及しますが、資本上位会社が存在する会社であれ、オーナーがいる会社であれ、安定株主比率が高い会社であれ、今やアクティビストのターゲットになってしまう時代になりました。繰り返しますが、アクティビストと戦わないためには、買収防衛策は必須アイテムです。企業価値を守るために買収防衛策は必要です。そして、そこから企業価値向上策の議論が始まります。

 

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