2018年02月01日

No.260 買収防衛策の再導入は真剣に検討しておくべき。そして、検討していることを・・・

 戦略的に打ち出すべきです。買収防衛策を廃止した会社の皆様、本当に廃止してよかったとお考えでしょうか?旧村上ファンドがこれだけ騒いでいる中、あの日本郵船まで旧村上ファンドのターゲットになっている中、本当に廃止してよかったなあと思うはずがありませんよね。でも、廃止してしまったものは仕方ありません。「だよね。もう考えるのはやめよう。なるようになるさ!」・・・イヤイヤ、それではダメです。ちゃんとアクティビスト対策を考える必要がありますし、そのために買収防衛策は必要なツールです。

 「じゃあどうすんのさ?もう一回入れるの?キミのコラムではもう一回入れろって言ってるけど、株主は認めてくれるの?」とお考えになるでしょう。まあ株主は「一度廃止してまた導入?何を考えてるんだ?」と思うでしょうね。そりゃそうです。でもね、繰り返しますが本当に買収防衛策を廃止してよかったとお考えですか?今の世の中の状況を見て「あちゃー、ミスったなあ」と思いませんか?普通はそう思うはずです。でも一方で、もう一回導入するのはハードルが高いです。安定株主比率がそこそこ高くて票読みもできるのなら、いっそのこと再導入すべきと思います。いっときの恥を我慢するだけです。75日と言わず、1か月くらいたてば貴社が再導入したことなど忘れます。まあ、たまに買収防衛策の特集記事で取り上げられるかもしれませんが・・・。その程度の我慢ですよ。

 でも、安定株主比率がそこそこ高いけど廃止したという会社は少ないでしょう。ほとんどの会社がアドバイザーに「外人は全員反対です。国内機関投資家も相当厳しいです。本当に可決できますか?」という無責任な、アドバイスとは程遠い脅しをされたから廃止した会社がほとんどです。総会を通せないなら廃止しよう!なんといい加減な・・・。そんなアドバイスでお金をいただくなどけしからん!そもそもアドバイスになっていません。

 さて、どうしましょうか?廃止してしまったけど、アクティビスト対策は十分練っておきたい。更に言えば、廃止してしまったからアクティビストを寄せ付けたくない。であれば「うちは廃止したけど、十分な策を練っているぞ!ちゃんと準備しているぞ!何なら再導入するからな!」というスタンスを見せておいたらどうでしょうか?どこでどうやって見せるか?

 はい。コーポレート・ガバナンス報告書の「買収防衛策」の項目と招集通知(事業報告)の「会社の支配に関する基本方針」に記載しましょう。どうやって?「昨今、時間と情報が十分に与えられず、BPSを下回る安い価格で敵対的TOBが成立してしまったケース(ソレキアですよ!)がありました。また、詳細な目的もよくわからないまま市場で大量に買い占められるケースも数多く発生しています。金商法が整備され浸透したことで時間と情報が確保されるようになったと考えていましたし、買収者もちゃんと情報提供をすると考えていましたが、現実にはそうではありませんでした。ですので、当社は再度、株主のために事前警告型ルールが必要かどうかを議論している最中です。不当に安く買い叩くような株式の買い占めなどが発生した場合は、躊躇なく事前警告型ルールを株主のために再導入する可能性があります。」でどうでしょうか?事前事前警告型、といった感じですかね。

 買収防衛策を導入していないけど、何か起きたらちゃんと対応するからね、とコーポレート・ガバナンス報告書で記載している例があります。以前お伝えしましたが、東京急行電鉄や名古屋鉄道です。以下、東京急行電鉄のガバナンス報告書の抜粋です。

 https://www.tokyu.co.jp/ir/manage/pdf/governance_1706.pdf

 簡単に言えば「うちは買収防衛策を導入してねーけど、おかしなヤツがきたらケンカする準備はしとるからな!なめんじゃねーぞ!」ってことですね。

 こういうことを、買収防衛策を廃止した会社も書いておけばいいんですよ。「廃止したけど、もう一回導入すべきか検討しているぞ!買収防衛策はやっぱり必要かもしれないと思っているぞ!なんかあったら即導入するかもしれないぞ!それは株主のためなんだぞ!」と。多少は買収防衛策を廃止した不安が解消されるのではないでしょうか?ちょっとしたサメ避けにはなるでしょ?ようはアクティビストに「この会社をターゲットにしても面倒くさいことになるかもしれない。儲けるのに手間と時間がかかりそうだ。」と思わせることが重要なのです。

 買収防衛策の再導入について、私は即座にやるべきだと考えています。なぜなら買収防衛策を廃止した会社こそ、アクティビストのターゲットに最もなりやすいからです。株式を買い占めたとしても、途中で買収防衛策を再導入されませんからね(やろうと思えばできるけど、多くの会社がしないだろう、という意味です)。私がアクティビストなら真っ先に狙います。だから即再導入すべきです。しかし現実的には難しいでしょう。だって、廃止したのに再導入って、社内を説得するのも大変でしょうし、何よりマスコミや株主から「なに~!」って怒られるでしょうから。私の申し上げていることが「理屈は正しい。でも現実的には難しい」と考えている会社もいらっしゃるのではないでしょうか?だとするとこの「事前事前警告型」のアイデアは現実的な落としどころと考えることができます。どうでしょうか?このアイデア、けっこう自信ありますよ。

 なお、僕に何かしらの権利がある訳ではありませんので、廃止した会社の皆様、どうぞご自由にお使いください。再導入に踏み切るのは「ちょっとなあ・・・」とお考えの会社も、これならやりやすいんじゃないでしょうか。買われてからでは遅いですから、ちゃんと準備はしておくべきです。

 あ、それと、コーポレート・ガバナンス報告書や会社の支配に関する基本方針以外でも、アピールすることは可能じゃないですかね。例えば、毎年、「事前警告型ルールの再導入に関する検討状況」と題したプレスリリースを公表し、日本企業を取り巻くM&Aや敵対的TOB、株式の市場買い占めなどの状況や自社の経営環境の変化、それらに対する会社としての見解、買収防衛策の再導入の必要性の検討状況を報告するんです。そういったアピールをしておけば、ちゃんと企業防衛・株主利益について検討している会社だなと見なされ、狙われにくくなるのではないかと考えます。これって、廃止した会社でなくとも、買収防衛策を導入したことのない会社でもできそうですね。

 当社は教科書に書いてあるようなアドバイスはいたしません。教科書を踏まえた上で、実戦的なアドバイスをします。

 

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