2018年02月19日

No.271 上場企業に対して順守か説明かを求める前に、株主は勉強すべき

 昨日2月18日 日経2面の社説に「株主との対話を深める会社法の改正に」とあります。個人的には下の「心配なモルディブの政治危機」のほうが気になります。モルジブ、2回行きました。きれいで、いいとこでしたよ~。

 今回の会社法改正の狙いは、企業と株主が対話を深めるための仕組みを整えることにあるそうです。「試案のひとつは株主総会の活性化だ。そのために、事業報告書などの総会資料をインターネット上で早めに開示し、株主が時間をかけて経営状況を点検できるようにする案を示した。」と社説にあります。また、「企業の間には、新制度の導入によって実務の負担が増えることへの警戒もあるという。ただ、株主に会社をよく理解してもらうことは経営にもプラスのはずだ。」とあります。こういう考え方が私には理解できません。インターネットでの早期開示は別に構いません。ただ、「会社をよく理解してもらうため」ですか?そんなもん、総会書類を早期開示しなくても、決算短信見たり、会社のホームページ見たりすればわかるでしょう?そもそも、株主との対話って何ですかね?株主総会における質問と回答のことを言っているのでしょうか?意味ありませんよ、あんなの。皆さんが一番わかっているのではないでしょうか?「この個人株主、なんでこんなにレベルの低い質問してるんだ?」と思った社長はたくさんいらっしゃることでしょう。そんなものを充実させることに意味などありませんね。

しかし私はインターネットで総会書類を早期に開示したほうがよいと考えます。なぜかと言うと「ちゃんと総会書類を早期に開示しているのだから、機関投資家の皆さんもきちんと自分たちで議案の賛否を真剣に考えてください。議決権行使助言会社を使わないでください。」と言えるようになるからです。機関投資家、特に海外の機関投資家はISSが反対推奨している議案に賛成するのはなかなか難しいです。なぜなら「ISSが反対推奨しているのに、なぜ賛成するのか?」を社内で説明しなくてはならないからです。ISSの言うとおりに議決権行使をしたほうがラクなのです。私は、そんなの間違っていると思います。だからきちんと早期に総会書類を開示し「議決権行使助言会社を使うな」と声をあげるべきだと思います。

 株主提案の個数が一人当たり10個までに制限される方向のようですが、これ、意味ありますかね?10個以上も株主提案されている企業って、そんなにないですよね?

http://www.moj.go.jp/content/001244905.pdf

 そもそも108個もの株主提案をされた某企業が市場の番人としての責任を果たすために、「こんなものは株主提案として受け付けない」と毅然として蹴っ飛ばせばよかった話です。訴えられたら、正々堂々と裁判すればよかった話です。社外取締役の選任義務付けとも関連する話ですが、私は「取締役会の過半数を社外取締役としている企業は、株主提案が株主総会で可決されても、取締役会の責任で提案を拒絶できる」とする改正の方がよいと考えます。そうすれば、取締役会の過半数を社外取締役にする会社はかなり増えると思います。ムチだけじゃなく、アメもつけた会社法改正にしていただきたいと考えます。

 「順守か、説明か」(コンプライ・オア・エクスプレイン)・・・私は、株主こそ勉強不足であると考えます。何かというと「説明が足りない!」と言う。どこかの国の国会じゃあるまいし・・・。ちゃんと株式投資や会社法、金商法について個人株主も、そして、機関投資家も勉強すべきでしょう。これ以上、上場企業にコストばかりかかることをやらせるべきではない。また、金融庁が事業会社の持ち合いにまで口を出すべきではない。日本企業はIRもちゃんとやっているのですし、これ以上、株主との対話と口うるさく言われる必要はありません。金融庁は事業会社に文句を言う前に機関投資家に対して「助言会社を使わずに真剣に議決権行使をしろ」と指導しろ。です。

しかし、そうは言っても止めようがないので、上場企業はこれを機会に持ち合いを見直し、意義のある持ち合いへと舵を切るべきではないかと考えます。株主との対話、持ち合い解消などと絵空事の机上の空論に真剣に付き合う必要などないと考えます。

企業防衛は新しい時代を迎えようとしているのではないでしょうか?新しい時代の企業防衛体制を早期に検討し、構築する必要があるのではないでしょうか?そうしないと、会社がいろんな登場人物に食い物にされます。食い物にしようとしているのはアクティビストだけではないのですから。

 

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