2018年03月16日

No.291 買収防衛策はもう禁止!

 って東証が言ったらどうしますか?「もう買収防衛策を導入するような時代ではない。TOBルールに則って対応すべきであり、東証に上場している企業が買収防衛策を導入・更新することはもう認めない」と言い出したら?

 じゃあ、東証上場をやめてやる! なかなか度胸と根性のある会社ですね。でもそういう会社はゼロでしょう。まあ、新日鐵住金が買収防衛策を導入している以上、東証が「全社廃止!」ということはしないでしょう。しかし、東証も最近は買収防衛策導入を歓迎している訳ではないようです。10年前はそうでもありませんでした。例えば、●●ファンドに買われている際に買収防衛策を導入しようと事前相談すると「あのようなファンドに会社が食い物にされるようなことがあってはなりませんよね。導入するのももっともでしょう」と言ってくれる担当官もいました。でも今はいません。CGコードが制定・導入されている状況ではなかなかそういうことを言いにくいでしょう。

 東証が全社に対して買収防衛策の導入を禁止することは想定しにくいものの、禁止される場面も想定しておく必要があるのではないかと考えます。買収防衛策がないとして、当社に対して突然TOBが実施された場合、どう対処するのだ?どんどん市場で●●ファンドに株式を取得された場合、どう対処するのだ?そして株主提案をされたらどうするのだ?などなどです。

 さてどうしましょうか???答えは簡単と言えば簡単です。株価を上げておけばいいんですよ。常に株価を割高状態にしておけば、少なくともアクティビスト・ファンドは寄ってこないでしょうね。難しいかもしれませんが。

でも買収者が事業会社の場合は別です。貴社スタンド・アローンでの価値が割高であったとしても、買収者である事業会社が、自社の傘下におさめた場合に発揮できるシナジー効果を考えれば割安とみなす場合もありますので。

そうなると「持ち合いか!」 そうですね。でも現実的には難しいように思います。CGコードのおかげで、持ち合いを新たにやるのは抵抗感が強いでしょうね。でも私は、持ち合いは必要であると考えます。もちろん、意味のある、今後につながる可能性のある持ち合いです(念のためですが、本気で防衛のための持ち合いはダメだと申し上げている訳ではありません。対外的に説明する際に、多少のお化粧をすれば説明のつく相手先であればよいという意味です。まあ、本当は今後につながる相手がよいのですが)。

「じゃあ、どうすんだ!」 答えはありません。少なくとも、東証に買収防衛策の導入・更新を禁止させないように上場企業各社が情報発信をしていくことが重要であると考えます。だから、絶対に更新すべきですし、未導入の会社は導入すべきですし(躊躇するなら、検討はしている旨ガバナンス報告書や事業報告に記載すべきです)、廃止した企業は復活させるべきです(難しいなら、ガバナンス報告書は事業報告において、買収防衛策の復活を検討中と記載すべきです)。買収防衛策なんかじゃない、単に時間と情報を確保するためのルールである、経営者の保身には使わないし使えない仕組みである、と。そして、時間と情報がないから、BPSを下回る不当に安い価格で買収されてしまった会社があるじゃないか!と。

「上場している以上、買収されるリスクは常にある」 当たり前です。でも、その買収者が、まるで総〇屋のような人だったとして、受け入れるべきでしょうか?私は、受け入れてはならない、と考えます。会社は株主だけのものではないからです。買収者がどのような人物・団体なのかを見極めるために、買収防衛策は絶対に必要なのです。株主だって総〇屋かもしれない相手に株式を売却なんてしてはいけないのです。反社会的勢力と取引しちゃいけないのは当たり前です。反社会的勢力からお金もらっちゃダメでしょ?

CGコードに振り回されて、企業防衛の本質を見誤っては本末転倒です。企業防衛の本質は「よからぬ買収者/疑わしい買収者から会社を守ること」です。企業防衛はリスク管理です。

経営者には「会社」を守る義務があると思うのです。しかし、本当に買収防衛策が禁止されてしまう時代が来るかもしれません。そういう時代に備えた企業防衛体制も今のうちから議論を始めておく必要があるのではないかと思います。

では「次は持ち合い禁止だー!」と金融庁が言い始めたらどうしますか?

 

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