2018年03月28日

No.298 コーポレートガバナンス・コード改定案~持ち合い開示は再検討すべきです~

 昨日公表されています。詳しくは以下をご覧ください。

■金融庁「コーポレートガバナンス・コードの改訂と投資家と企業の対話ガイドラインの策定について」の公表について(26日)http://mm.shojihomu.co.jp/c/brzxab6xsA2Layag

■東証、「コーポレートガバナンス・コードの改訂と投資家と企業の対話ガイドラインの策定について」の公表について(26日)http://mm.shojihomu.co.jp/c/brzxab6xsA2Layah

 政策保有株式の縮減に関する方針・考え方など、政策保有に関する方針を開示しろと言っています。また、取締役会での検証内容も開示しろと言っています。補充原則も追加されています。持ち合いに対する包囲網が完全に形成され、狭めようとされつつあると思った方がよいです。

 やっぱり、政策保有株式に関する開示は全面的に見直したほうがよいと考えます。取引関係の維持ってあっさり書いている会社が多いから、保有目的が適切かと指摘されたり、補充原則が追加されたりしたのではないでしょうか。そもそも持ち合いって悪いことなんですかね?「そりゃそうでしょ!資本コストに見合わないものを持つことは説明できないでしょ?」 でも、資本コストだけを考えて経営する訳じゃないですよね?資本コストを意識した経営はあくまで株主主権論の世界の話ではないでしょうか?つまり、会社経営は株主だけを意識して行うものではないと主張する必要があるのではないでしょうか?

 だとすると、なぜ会社は持ち合いをするのでしょうか?株主利益のみを考えたら持ち合いなど必要ないどころか、持ち合いは悪です。でもやらなきゃいかんと皆さんは本音では考えているはずです。それはなぜかと言うと「株主至上主義の現在において多少の不合理はあるけれど、会社を守らなければならない局面があるから」ではないでしょうか?

 多数の従業員を解雇するおそれのある買収提案がなされたら?買収者はリストラしないと言っているけどとてもじゃないが信用できない買収者だったら?会社の資産を切り売りするような買収者だったら?グリーンメイラーだったら? 保有理由をこう書いてみたらどうでしょうか?

東京高裁4類型に該当するような買収者やいわゆる反社会的勢力などによる会社の価値を中長期的に毀損させるような濫用的な買収提案や株主提案、または株主総会における妨害行為に対して、中長期的な会社の価値を守ることを目的に、会社間での話し合いを経た上で、相互に株式を保有しています。当然、株主として相互に経営を監視していますし、当社の中長期的な会社の価値の確保・向上に資するかどうかの観点から議決権行使をしています。当社の政策投資株式の保有は会社の危機管理上、必要な行為であると考えております。

 もう持ち合いって認めちゃいましょうか?みんながウソつくから外野がやいのやいの言う訳です。ウソの開示内容をアドバイスしたことに関しては私にも責任があると思っています。しかし、政策投資株式の開示については、今年の有価証券報告書でも記載することを想定し真剣に検討する必要があると思います。「真剣に」です。今回は「とりあえず、取引関係の維持でよくね?」とか「同業と歩調をあわせよっか?」とかでは持たないと思います。なぜ持ち合いをするのか?を突き詰めることが必要です。

 そもそも取引関係維持のために株式を持つのって、取引関係維持のために接待するのと何が違うんですか?突き詰めていったら持ち合いというのは「会社間の円滑な関係維持」でしょ?株主による持ち合い不要論は「取引関係を維持するのになぜ接待が必要なのか?」と言っているのと同じことではないでしょうか?仮に保有目的を「取引関係維持のため」と書くのだとしても、「取引先に対して接待をするのと同じ意味合いで株式を保有することもあります。会社間の関係を維持し、相手先から具体的な依頼がない場合でも、相手側の状況を忖度し株式を持つことも営業上は必要であると考えております。」とか。丁寧に書く必要があると思います。

 また、持ち合いに関しても徹底的に議論して、「何が悪いんだ!」と言うくらいの気持ちで開示に臨まないとダメなように思います。皆さんが金融庁や東証の言うがままになっていると、本当に持ち合いがダメになります。そうなると日本の上場会社は全世界から食い物にされることは間違いありません。株懇の事例を待っているようではダメです。

 最後に一つ。皆さんは持ち合いをしていますよね?でも、買収防衛策を導入していない会社もしくは廃止した会社の皆様、なぜ持ち合いをするのに買収防衛策を導入しない・廃止するのでしょうか?矛盾していませんか?責めるつもりはありません。ご自身の胸に手を当てて考えていただきたいのです。「本当は会社を防衛するための策って大切だよな」ではないでしょうか?あえて「企業防衛」ではなく「買収防衛」でもなく、「会社を防衛するための策」と書きました。皆さんは「株主のためだけ」に経営している訳ではないはずです。買収防衛策ではなく「会社防衛策」はどの会社にも必要な施策です。その一つがいわゆる買収防衛策であり、持ち合いなのです。

 今回のコラムは金融庁から改定案が出されたこともあるのですが、あるお客様から「鈴木さん、なぜ保有目的として安定株主確保のためって書いちゃいけないんだろうね?書いてもいいんじゃないのかな」とご指摘いただいたことをきっかけとして書きました。なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?となぜを5回繰り返しました。常々思うのですが、やはり当社の「会社価値」の源泉はお客様との密接な関係、お客様の声にあります。そのような会社価値の源泉を守るにはどうすればよいのか?何度も申し上げますが、自らの身や従業員をはじめとした会社のステークホルダーを守るのは皆さんです。

 ただ、皆さん、やっぱり開示するに当たっては不安があるのではないでしょうか?特に「第1号はイヤだな」とか「うちだけ先進的な開示をしてたらイヤだな」とか「目立つのはイヤだな」とかです。この持ち合い開示については私なりの案があります。300回の記念号でお伝えしますが、開示案ではありません。自分で記念って言うのもヘンですね。

※東京高裁4類型とは・・・

https://www.nomura.co.jp/terms/japan/ko/kousai4.html

野村證券の証券用語解説集をご覧ください。

 

このコラムのカテゴリ

関連する
他のコラムも読む

カテゴリからコラムを探す

月別アーカイブ