2017年06月14日

No.106 一定程度の株式を取得されることで起きる弊害

 佐々木ベジに約45%保有されてしまったソレキア、村上ファンドグループに約35%保有された黒田電気、エフィッシモに約38%保有された川崎汽船・・・どこも大変そうですね、としか言いようがないのですが、特定のファンドなどに保有されてしまうと思わぬリスクが生じることがあります。

 「過半数を取られることはないだろうから、長期にわたる持久戦だ!」と考えて、ソレキアはホワイトナイト戦略しか実施しなかったのかもしれません。早めに増配を打ち出しておけば、これほどの株式を佐々木ベジに保有されることはなかったでしょう。黒田電気や川崎汽船も。なんで買収防衛策を導入しなかったのか、廃止してしまったのか。

過半数を握られていないから大丈夫なのか?もちろん、過半数を取られなければ役員のクビが飛ぶことはありません。一方で、様々な株主権を手に入れますから、ソレキアや黒田電気、川崎汽船としては対応するのがとても大変です。また株主総会における議決権行使率を考えると、特にソレキアは、実質的に支配権を握られたと考えることができますので厳しい状況です。

 あまり注目されないリスクもあります。皆さんがこれから業務提携をしようとしている会社を想像してみてください。その会社が、佐々木ベジや村上ファンドグループなどに議決権の約40%を持たれたら、皆さんどうしますか?「え・・・業務提携となるとうちの技術の内容なども話すことになるだろうし。もしアクティビストファンドの人間が取締役として送り込まれたら・・・うちの内部情報をアクティビストファンドが知ることになるのでは?」と考えないでしょうか?アクティビストファンドとは関わり合いになりたくない。だから、アクティビストファンドに株式を持たれている会社とも関わり合いになりたくない、と考える企業もあるでしょう。

 また、ソレキアの日々の株価を見ていると、気になることがあります。TOBが終了してから、佐々木ベジ氏が市場で株式を追加取得しました。最近の株価は毎日大きく変動しています。流動性がかなり低い、市場参加者がかなり少ないので、少しの買いでも株価が大きく動きます。これだけ変動していると、ソレキアの株価が本当に適正価格なのかどうか怪しくなってきます。そうすると、仮にソレキアが「資本市場から資金調達をしたい」と考えたとしても、調達できるのでしょうか?日々の出来高が少なく、日々の株価が本当に適正価格なのかわからない。引き受ける証券会社が存在するでしょうか?おそらくいないでしょう。ソレキアは上場しているにも関わらず、資本市場からの資金調達ができない、ということです。また、日々の株価が適正価格かどうかわからない状態であれば、自社株式を使ったM&Aなども難しいのではないでしょうか?

 このようにアクティビストファンドなどの特定の株主に大きな割合の株式を保有されてしまうと、いろいろな障害が発生します。経営に一定の影響を与えるということも重要なことですが、株価や流動性に与えるインパクトも考慮すると、やはり一定割合を持たれてしまうということはリスクがあるということです。

 

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