2017年06月16日

No.108 今後、いわゆる買収防衛策の期限を迎える皆様や新規導入を検討中の皆様へ

 継続導入・新規導入してください。何があっても、です。「うちの株主構成だと否決されてしまうんだよ」「今さらなんだよなあ」 否決されても「来年また議案にかけます」と主張してください。もしくは取締役会決議で導入しましょう。また、「今さら」ではありません。敵対的買収が日本で活発化する可能性があるのは「今から」です。

なぜ私がこんなに買収防衛策の継続・新規導入にこだわるのか?理由は簡単です。買収防衛策があるのとないのとでは、有事の対応が大きく異なります。ソレキアに関する私のコラムをご覧になった皆様であればご理解いただけるはずです。導入していない会社であれば、私なら簡単に買うことができます。佐々木ベジしかり。また、買収防衛策を導入しておけば有事にならない可能性もあります。ソレキアは導入しておけば佐々木ベジに仕掛けられなかったはずです。彼はターゲットを変更したと思います。ちなみに、買収防衛策のルールを破ったケースは私の記憶だと1社だけです。

 ただし、株主総会で否決されることのリスクについては、私も感情的には十分理解します。まかり間違ったら、総務の方の責任が問われます。であれば、このコラムを社長やCFOに読んでもらってください。総務を責めるべきではないことを理解してもらってください。

 買収防衛策がないと、貴社はソレキアのようになります。「安定株主がそこそこいるから大丈夫」と思っていませんか?ソレキアの安定株主比率は外から見ても40%程度あったのに、佐々木ベジさんに約45%も買われましたよ。そうなると、どうなってしまうのか?

佐々木ベジさんというどこのどなたかよくわからない方が皆さんの会社のオーナーになる、ということです。そして、役員の方々のクビが飛ぶ可能性が高くなります。うちの会社は時価総額が大きいから佐々木ベジ氏の対象にはならない?いや、甘いです。ソレキアへの敵対的TOBは単なる花火です。佐々木ベジ氏が単にデビュー戦として選んだだけの会社です。次回以降のターゲットになるのは貴社かもしれません。時価総額が大きければ大きいほど、佐々木ベジ氏は闘志を燃やします。また、佐々木ベジ氏のターゲットにならなくても、エフィッシモのターゲットになる可能性があります。エフィッシモの投資先は、第一生命、リコー、川崎汽船、東芝などです。どうです?時価総額の大きな先ですね。貴社も十分ターゲットになる可能性があります。ちなみに、時価総額が大きいほど安定株主比率は低いです。村上ファンドもまだいます。

これが、いわゆる買収防衛策を継続・導入していると、そう簡単には佐々木ベジさんのような方には買われません。なぜか?買収防衛策のルールに定められた質問権をしつこいほど利用することによって、佐々木ベジ氏の人となりが浮き彫りになってしまうからです。この手の買収者は自分自身のことを知られるのを良しとしません。秘密主義の方が多いですから。少なくとも、買収防衛策を導入している会社よりも、導入していない会社を選びます。そっちのほうが買収者としても対応がラクなんです。しつこい質問に回答しなくて済みますから。

え?でも安定株主比率が低いから株主総会で買収防衛策を否決されそう?私の方で否決されにくい新たな事前警告型ルールを考えますが、もし完成させられなかった場合、今の買収防衛策を継続(導入)してください。否決されても構いません。もしくは取締役会決議で導入してください。

買収防衛策は必要なんだ!ということを株式市場や世の中にアピールしておくことが重要です。そして否決された場合、総務部などの株主総会を取り仕切っている部署の方々を責めてはいけません。なぜならなんの責任もないからです。買収防衛策に対しては、特に外国人株主やISSはアレルギーを持っていますから、どういう説明をしても反対されます。反対されることは仕方ないと理解してください。株主構成はいつも変化します。状況次第では外国人株主比率が低下、個人株主比率が上昇する瞬間があります。その瞬間が来るまで、買収防衛策を議案としてかけ続けてください。貴社の信念を見せ続けることが重要です。「俺たちの会社をおかしな連中の食い物にさせてなるものか」という信念です。貴社の安定株主と個人株主が最大瞬間風速で効果を発揮するときに、一気に可決させてください。そうすれば3年間は有効です。目標賛成率は50.1%です。

「否決されたらみっともない」 そうでしょうか?買収者が現れたのに、買収防衛策を導入せずにソレキアのようにオタオタ対応してしまう方がみっともないです。廃止した直後にエフィッシモに買われてしまった川崎汽船のほうがかっこ悪いです。そもそも否決された場合の本当のリスクってなんでしょうか?実は「否決されましたね」という事実が残るだけで、他のリスクはないんですよ。

「否決されたということは安定株主比率が低いということがバレたということにならないか?」 なりません。有価証券報告書の株主構成を見れば安定株主比率など一目瞭然です。

買収防衛策の導入にこだわり続ける方が、わかっている人からは一目置かれると思いますよ。

 

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