2017年06月29日

No.117 日経の記事がひどすぎる など2コラム

■日経の記事がひどすぎる

 以下、JFEホールディングスの買収防衛策更新議案の賛成率に関する日経の記事です。記事内容がひどすぎて話になりません。

JFE、買収防止策の継続議案、賛成75%止まり 2017/6/26

 JFEホールディングス(5411)は26日、23日に開催した定時株主総会で会社側が提案した買収防衛策の継続に関する第4号議案が75.50%の賛成だったと発表した。剰余金の配当や取締役選任などの第1~3号議案は全て80~90%台だった。買収防衛策は経営陣の意に沿わない買収を防ぐ仕組みだが、外国人投資家などから「企業価値の向上につながるなら買収は否定すべきではない」との批判が強く、近年では廃止する企業が増えている。

 また株主提案で、社外取締役の廃止を求めた第5号議案は反対が96.16%と反対多数で否決された。〔日経QUICKニュース(NQN)〕

 まず「賛成率75%止まり」という表現ですが、このような株主の間で賛否が分かれる議案で75%もの賛成を得たのは相当高いと言うべきです。特別決議を取れている水準じゃないですか。まさに印象操作!

 そして「買収防衛策は経営陣の意に沿わない買収を防ぐ仕組み」と言い切っていますが、これ、大間違いですよ。日経は訂正とお詫びを出すべきでしょう。日本企業が導入している買収防衛策は経営陣の意に沿わない買収を防ぐような仕組みにはなっていません。単に時間と情報を確保するための仕組みです。日経新聞に書いてあるこの手の記事は、けっこう間違いや誤解があります。この記事はその中でも本当にひどいレベルです。これもまさに印象操作!買収防衛策と言われれば確かに保身に使えそうな仕組みですが、日本企業が導入している仕組みはまったく違います。日経新聞が日本企業の足を引っ張って、いったい何をしたいのでしょうか?

 企業価値の向上につながるなら買収は否定すべきではない、という批判を掲載していますが、そんなものを否定している日本企業はいません。

 皆さんには十分お伝えしていると思いますが、日本企業が導入している買収防衛策は、買収を拒絶するための施策ではありませんし、経営陣の保身で拒絶できるような仕組みにはなっていません。買収防衛策を保身で使ったら、株式市場や世論から徹底的に批判されます。

 買収防衛策を廃止してしまった会社は、医師に相談せずに薬を途中でやめてしまった人です。一度買収防衛策という薬を飲んだ以上、患者の勝手な判断で飲むのをやめることが一番危険なのです。勝手にやめたあとの副作用がひどいです。

■監査役に対する退職慰労金議案が否決

 イリソ電子工業という会社が、昨年8月に亡くなった監査役に対する退職慰労金議案を株主総会にはかったところ、否決されました。イリソ電子工業の株主構成は?

 総議決権は118,345個です。法人株主は12,389個、個人の佐藤氏が13,060個ですので、安定株主比率は21.5%です。時価総額は1,144億円です。時価総額の割には低いですね。外国人株主比率はそこそこ高いです。個人株主比率は高く見えますが、創業者で会長の佐藤氏の持分が高いことが影響しています。

 外部から見た安定株主比率が低いですが、普通決議が否決されてしまうほどの株主構成には見えません。株主総会における議決権行使率はどうだったのでしょうか?計算してみますと、87.5%です。外国人だけの反対ではないのもかもしれませんね。外国人株主比率が高すぎる訳ではなく、また、佐藤氏の持分比率が高いことから「まあ、大丈夫じゃないの?」と油断していたのかもしれません。油断大敵です。

 

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