2017年07月03日

No.121 やるじゃないですか!出光興産!

出光興産が公募増資を公表しました。すごいですねえ。

出光、1400億円公募増資へ 創業家の持ち株比率3割以下に 2017/7/3

 出光興産は発行済み株式の約3割にあたる4800万株の増資を実施し、1400億円を調達する。昨年末に昭和シェル株を取得する際に調達した資金の返済や有機EL事業への投資に充てる。昭シェルとの合併に反対する出光創業家の持ち株比率が3割以下に下がる。 創業家は自らの出資比率が下がる増資に反対する姿勢を示してきた。増資が実現すれば合併が実現するが、先行きはなお流動的だ。

以前、出光興産が現状を打破するには公募増資をやればよい、とコラムで指摘しました。

2017年6月7日IBコンサルティングコラムNo.101をご覧ください。どこの証券会社が引き受けるのでしょうか?出光興産のプレスリリースによると、大和証券とJPモルガンです。やりますねえ。こういう知恵のある行動には敬意を表したいと思います。

 出光興産によると、資金使途は以下のとおりです。

合弁会社への投融資、昭シェル株式の取得に使った借入金の返済資金などが資金使途です。この対抗策、と言ってしまうと出光興産に怒られますが、近年まれに見るすばらしい対抗策ですね。ここでなぜこのタイミングなのか、私なりの分析をお伝えしたいと思います。なお、残念ながら当社はこのファイナンスに関与しておりません。あくまで外部情報からの分析です。

たぶん、株主総会での議決権行使結果を見たかったのではないでしょうか?つまり、創業家が昭シェルとの経営統合に反対している状況において、出光興産の現経営陣を支持してくれる株主がどれくらいいるのか?多数の株主が現経営陣の選任議案に賛成してくれている状況であれば、創業家の持分を希薄化してしまえば、経営統合議案の賛成に必要な2/3を確保することができるのではないか?では、今年の出光興産の株主総会議案の賛成率を見てみましょう。

月岡社長の賛成率は61.1%です。反対個数は551,529個ですね。ではここで、2017年3月末の出光興産の株主を見てみましょう。

 日章興産27,120,000株、出光文化福祉財団12,392,000株、出光美術館8,000,000株、出光正和2,416,000株、出光正道2,416,000株が創業家と思われます。持株を合計すると、52,344,000株です。議決権だと523,440個です。月岡社長の選任議案に対する反対個数は551,529個ですから、大株主に登場していない出光昭介氏などがまだ株式を持っているのであれば、ほぼ創業家の反対ということですね。逆に言えば、創業家以外は反対していないということあり、一般株主は昭シェルとの経営統合議案に賛成すると踏んだのでしょう。そして、今回の公募増資に応じる投資家も当然昭シェルとの経営統合には賛成するでしょう。

実は、公募増資案については、私、1年くらい前からあたためていました。あたためていたものの、孵化したのは別のところでした(笑) 個人的にはくやしい。

 なお、出光創業家は発行差止めする旨公表しています。http://idemitsu-rinen.jp/

「本件株式発行が創業家の保有する議決権比率を希釈化することを目的とすることは明らかですので、直ちに、株式発行の差止めの仮処分を申し立てる方針です。」と主張していますが、果たしてそうでしょうか?これ、第三者割当増資ではないんですよ。割り当てられた多数の株主が出光経営陣を支持するかどうかは現時点ではわかりませんから。このケースは非常におもしろいケースです。注目に値します。

 

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