2022年10月18日

No.1411 セントラル硝子や西松建設、その他自己株TOBで買い取った会社は被害者ではない

以下、旧村上ファンドに投資され最終的に自己株TOBで買い取った会社です。これらの会社は旧村上ファンドの被害者でしょうか?こういう言い方をすると村上さんに失礼ですね。別に旧村上ファンドのみから自己株取得をしたわけではありませんし、TOBという手法で広く全株主から取得する行為なのですから。ただ、大規模な自己株TOBを実施した会社は「やらされた」という思いを持っているのは事実でしょう。

あらためてみると、けっこうな規模の自己株TOBをやっていますねえ(マクセルHDは自己株TOBではなく、自己株取得と特別配当です)。三信電気なんて2回もですよ。1回目は自主的にやったことであり、旧村上ファンドと相談のうえでやったわけではありませんが、旧村上ファンド登場前の時価総額が300億円程度の会社が2回あわせて約350億円の自己株TOBですよ・・・。

これらの会社は「我々は被害者だ!」と思っているかもしれませんし、旧村上ファンド被害者の会でも結成してはどうかと思いますが、当然、被害者ではありません。厳しいことを言えば、株価を割安な状態にしておいたために旧村上ファンドに投資されたのです。株価が割安でなければ旧村上ファンドは投資しません。バリュー株と見なされてしまったのですから、投資されて当然なのです。そういう意味では被害者ではないのです。社員は被害者だと思いますが。

また、別の意味でもこれらの会社は被害者とは言えないのです。むしろ私は「ある意味、加害者」と見なしています。どうして加害者かと言うと・・・

皆さんから回収した資金で、別の会社が被害者になったからです。

旧村上ファンドに投資される

効果的な対抗策を打たずに大量に株式を取得される

旧村上ファンドにプレッシャーをかけられる

にっちもさっちもいかなくなり、大規模な自己株TOBを実施して買い取る

旧村上ファンドが大金を得て、新たなターゲットに投資する

旧村上ファンドの行動はこれの繰り返しですよ。旧村上ファンドに株式を取得され、大量に買われる可能性が高いのに、具体的かつ効果的な対抗策を打たず、20%も30%も買われ、どうしようもなくなって大規模な自己株TOBで買い取って出て行ってもらう。当然、株価が安い会社だったのであり、おそらく株主の期待を上回るような株主還元をしてこなかったのだから、どこかで株主還元を強化せざるを得ない会社ばかりだったとは思いますが、20%も30%も大量に買われるまで何もしないというのは、やはりおかしいんですよ。保有割合が低いうちに効果的な対策を打てば、ここまでの大金を払う必要はなかったのです。

大規模な還元をし、大金を旧村上ファンドに支払い、そしてそのお金をもとに新たなターゲットに投資する。新たな被害者を生んでいるのです。

私はなにも、旧村上ファンド対策としていっさい株主還元をしてはいけない、と言っているわけではありません。そもそも旧村上ファンドに狙われた=株価が安いということですから、株価を上げる努力として株主還元をすることは大切です。でも「それには限度があるやろ?」と言いたいのです。

旧村上ファンドに狙われないようにするにはどうすればよいか?株価を上げることです。普段から企業価値のことをちゃんと考えて、実行すべきです。そして、企業価値の議論だけではなく、企業防衛の議論も必要なのです。

それでも旧村上ファンドに狙われたら?そのときは徹底的に戦うんですよ。その覚悟を持つために、ちゃんと平時から議論しておくんですよ。

 

このコラムのカテゴリ

関連する
他のコラムも読む

カテゴリからコラムを探す

月別アーカイブ