2022年11月26日

No.1433 ジャフコが実施する自己株TOBをわかりやすく解説します

以下のとおり、ジャフコが旧村上ファンドから株式を買取るために、自己株TOBを実施すると公表しました。ジャフコのプレスを読んだ上での私の考えや感想です。細かい点が異なっているかもしれませので、詳しくは以下のジャフコプレスをご覧ください。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/8595/tdnet/2210540/00.pdf

今回のジャフコの自己株TOBのポイントは「TOB価格がまだ決まっていない」というところです。自己株TOBの総額は420億円と決まっていますが、では1株いくらで買うのかというのはまだ決まっていません。そもそも自己株TOBの実施に当たってはある条件が充足されることとしており、価格もその1つです。では、どうやって決まるかというと、2022年11月30日から12月7日の価格決定期間で自己株TOB価格が決まることになります(プレスの書きぶりとしては、価格決定機関でのVWAPが2,525円以上2,828円以下の場合に自己株TOBを実施するとしています)。そしてジャフコはTOB価格を2,500円~2,800円になる予定と言っています。※ここ、のちほど詳しく解説します。実施に当たっての充足条件を放棄できることもあります。つまりVWAPが2,828円超になっても、自己株TOBを実施する可能性があります。

「どうして自己株TOBを公表した11月25日とか前日の24日の株価がベースにならないの?普通、そうやって決めているのでは?」と思った方がほとんどではないでしょうか?なぜジャフコが11月24日の株価をベースにして自己株TOB価格を決めず、上記のような決め方にしたのかと言うと、旧村上ファンドが「そんな価格じゃ売らないよ」と言ったからですね。

11月24日のジャフコの終値は2,391円ですが、ジャフコが公表したプレスリリースによると旧村上ファンドは「現在の市場株価はPBR1倍を下回っており、それをディスカウントした価格では応じられない。PBR1倍の水準の価格でないと応じない」と言っています。PBR1倍にあたる株価は2,651円64銭です。ジャフコ(と野村さん)はなんとか市場株価を旧村上ファンドが納得する水準にあげて、自己株TOBを実施できるようにしたかったのでしょう。

だから、通常、自己株TOBの実施時において当然TOB価格を公表するものの、11月24日の株価2,391円をベースに2,500円~2,800円のTOB価格を設定すると、TOB価格が株価に対して109円~409円上回るプレミアム価格になってしまいます。ジャフコ(というより野村さんかな?)はこれを避けたく、自己株TOBの実施やTOB総額を公表するものの、1株当たりの取得価格の公表は控え、TOBの実施やNRI株の売却、株主還元方針の変更の公表などを踏まえた市場株価をベースにして価格を決める、という方法を取ったのでしょう。

今回の公表を踏まえて、11月28日の株価は上がるでしょうし、11月30日~12月7日の市場株価は「VWAPが2,525円以上2,828円以下」というラインで動くでしょうね。上がり過ぎることはなく、無事、自己株TOBが実施されるでしょう。

「どうしてプレミアム価格で自己株TOBをやらないの?西松建設はたしかプレミアムを付けて自己株TOBをやったのでは?」 そういう考え方もありますが、野村さんはある意味固いです。たぶんですが、ジャフコが旧村上ファンドに大量の株を買われて圧力をかけられている状態において、プレミアムを付けて旧村上ファンドから自己株TOBをする場合、「特定の株主への利益供与じゃないか」と指摘されるリスクがあります。そういうリスクを取りたくないから、形式的にはディスカウントになる価格の決め方をしたかったのではないかと推測します。もちろん11月24日の価格に対してはプレミアムになりますが、11月30日から12月7日の価格設定期間のVWAPから1%ディスカウントという形なので一応ディスカウント価格である、と(笑)

「いやいや、形式を整えただけでプレミアム付きの自己株TOBだろ?」 誰もがそう思うでしょうね(笑) ま、形式は大事ですから。

ちなみに旧村上ファンドは13,904,500株を保有しています。議決権割合は19.53%です。取得資金の総額は28,101,359千円なので、1株当たり2,021円で取得していることになります。ただこれは11月9日に提出された変更報告書で計算した数値なのですが、野村絢氏から2,235円で他の会社に異動した結果、単価が上がっています。10月28日に提出された変更報告書で計算すると、1,995円です(株数13,444,700株、取得資金の総額26,821,891千円)。

以下のコラムで、平均取得価格が2,000円前後の状況で市場株価が2,300円なのに、この辺りの価格をベースにした自己株TOBで旧村上ファンドが納得するかね?と書きました(有料でしたが、のちほど無料公開します)。やはり納得していないから、なんとかTOB価格を上げるための方法をFAが考えたということでしょう。

No.1425 先日旧村上ファンドが提出したジャフコの変更報告書について

ただ、この策はそれほど目新しい発想ではありません。似たようなことをイノテックがやってますし、私も数年前にアドバイスしたことがあります(同じようなアドバイスしとるやんけ!とは思わないでください。詳しいことは言えませんが、私がアドバイスした先は、置かれている状況が全然違いましたので)。イノテックは以下のコラムをご覧ください。これも有料でしたが無料公開します。

https://ib-consulting.jp/column/462/

ジャフコは旧村上ファンドに出て行ってもらいたかった。でも今の2,300円程度の株価ではイヤだと旧村上ファンドが応じてくれなかった。だったら市場株価を上げよう!どんな方法で?自己株TOBやNRI株の売却、株主還元方針の変更を公表すれば市場株価が上がるだろう!そして上がった価格をベースにすれば、村上さまが納得してくれるTOB価格を出せる!

こういうことです。

 

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