2023年03月21日

No.1499 またお灸をすえるぞ!

どうして日本の会社はアクティビストにお灸をすえられなくてはならんのですか?お灸をすえられるのは何か悪いことをしたときですよね。日本の会社は何か悪いことをしたのですか?まあ、これ以上はやめておきます。本筋ではないので。

ではまず以下。最も訂正したいところですね。私、ちょっと怒ってます。

アクティビスト、お灸再び 変わらぬ企業の「統治」突く

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC200H90Q3A320C2000000/

「日本の経営者を啓蒙しにきた」。2007年、スティールのウォーレン・リヒテンシュタイン代表(当時)が日本で初めて開いた記者会見で発した「上から目線」の一言は、日本企業から猛反発を受けた。

当時のアクティビストは保有株を高値で買い取らせる「グリーンメーラー」や、会社に一時的に金を吐き出させる「ハゲタカ」とほぼ同義で語られ、企業は比較的容易に撃退してきた。

当時は衝撃的な発言でしたし、経済界の反発もけっこうありました。この発言のおかげで守りやすくなったケースもありましたが、決して「比較的容易に撃退してきた」わけではありませんよ。狙われた会社、LA、FA、当事者は必死です。比較的容易に撃退した事例とはどれでしょうか?2003年にスティール・パートナーズがユシロ化学とソトーに対して同時に敵対的TOBを実施しました。ユシロ化学は当初から大幅増配で対抗した結果、株価がTOB価格を上回り、はたから見たら「容易に撃退できた」とうつったのかもしれません。一方のソトーはMBOで対抗したところ、スティール・パートナーズがTOB価格を引上げ、買収合戦になりました。結果ソトーはMBOを断念し、ユシロと同様に大幅増配で対抗しました。

そりゃ、部外者は「大幅増配して簡単に撃退した」と見るかもしれませんが、中でやっている人にしてみたらそんなに簡単な意思決定じゃないし、そもそも日本で敵対的TOBの事例がない中での対応です。落とし穴がどこに潜んでいるのかわからない状況での対応なのです。

百歩譲ってこれらの事例が「比較的容易に撃退した」という事例としましょうか?じゃあ、明星食品は?スティール・パートナーズに敵対的TOBを仕掛けられ、日清食品をホワイトナイトとして頼った結果、明星食品の独立性はなくなりました。サッポロもスティール・パートナーズに敵対的TOB提案をされ、数年にわたって対応せざるを得ませんでした。他にもたくさんあります。

はじめて有事型買収防衛策で対抗したのもこの時期です。買収防衛策を発動するときのプレスリリース作るの、めちゃくちゃ大変でしたよ。だって事例、ないんですもん。世界初の事例だから参考にするプレスがないんですよ。発動にあたっては、証券会社の決済関連部署、ほふり、信託銀行、といった関係者を集め、手続きを説明しました。比較的容易ではありませんでしたよ(怒) 寝てないもん。

3月期決算企業でもそろそろ株主総会の準備を始めているころだろう。過去にアクティビストに耳の痛い指摘を受けたことがある企業や、経営課題が「分かってはいるが変えられない」という企業は要注意だ。アクティビストは再来するのだ。

まず、複数のアクティビストに狙われたケースは以下のとおりです。

島忠:村上さん、シルチェスター、オアシス

ジャフコ:村上さん、オアシス

セントラル硝子:村上さん、シルチェスター

TBS:AVI、楽天(アクティビストじゃないけど)

東洋建設:村上さん、YFO

JT:TCI、リム

鳥居薬品:エフィッシモ、リム

住友大阪セメント:村上さん、シルチェスター

アルプスアルパイン:オアシス、エリオット、村上さん

大平洋金属:エフィッシモ、村上さん

日証金:シンフォニー、ストラテジックキャピタル

TSI:AVI、村上さん

パソナ:AVI、オアシス

思いつく限りでは以上ですが、まだまだありますよ。同じアクティビストに二度投資されたケースだってあります。日経でも指摘していますが、狙われてしまう根本的な原因を解決しない限り何度でも狙われますし、他のアクティビストも寄ってきます。

ではどうして当時アクティビストに狙われたのに、根本的原因を解決しない会社がいるのでしょうか?痛い目見たんだから、改善すべきはすればいいのにどうしてしなかったのでしょうか?

答えは簡単です。スティール・パートナーズや村上ファンドが日本から撤退しちゃったからです。どうして撤退したのかと言えば、ご存知のとおり村上ファンドはインサイダー事件を起こしてしまい、撤退せざるを得なくなったからですね。ではスティール・パートナーズはどうして撤退したのでしょうか?スティール・パートナーズに限らず、どうしてアクティビストは日本の株式市場から撤退したのでしょうか?

2008年です。この年、事業会社による敵対的TOB提案もありましたが、中止しました。2008年に何が起きましたか?

リーマンショックですね。リーマンショックが起きてスティール・パートナーズをはじめとしたアクティビストが撤退しちゃったんです。本来はあの第一次アクティビストブーム、敵対的TOBブームはもっと長く続いたはずだったし、今もその延長線上だったはずなんです。「ブーム」などで終わるはずのないことだったのです。でも2008年にリーマンショックが起き、アクティビストの動きが沈静化、というよりアクティビストがいなくなってしまいました。上場会社もアクティビストに散々痛い目にあわせられたものの、喉元過ぎれば熱さを忘れる、ですね。アクティビストがいなくなったから、みんな忘れちゃったんですよ。これがあのときの根本原因を解決しなかった理由です。

2008年~2015年くらいまで、アクティビストはあまり日本企業に投資していないし、敵対的TOBもほとんと起きていません。日本の会社の危機感がなくなってしまいました。一方その間、何が起きたかというと、買収防衛策の廃止と持ち合い解消です。みんな「アクティビストはいなくなった」と勘違いし、買収防衛策は不要と考えて廃止しました。そして金融機関による持ち合い解消が始まりました。

で、気づいてみたら、なんか知らんがアクティビストが再び日本に上陸してきました。「あれ?アクティビストっていなくなったんじゃなかったの???」「村上ファンド、復活してんじゃん」と。そして次に衝撃的なことが起きました。伊藤忠商事という日本を代表する総合商社がデサントに敵対的TOBを仕掛けたのです。

すると次々に敵対的TOBが起き始め、聞いたことのないアクティビストも続々と登場してきました。日本の会社は2008年~2015年の間に、本来はアクティビストに狙われないような財務にしたり、体制作りをしたりする必要があったのに、アクティビストや敵対的TOBの存在を忘れてしまい、なにも抜本的な改善をしなかったのです。

そりゃ狙われますよ。安定株主比率が減り、買収防衛策も導入できない。そしてアクティビストの狙いも変化してきました。規模の大きい会社もターゲットになってきたのです。みんな気づいたんでしょうね。「日本の会社は持ち合いで守られていると言われていたが、ちゃんと見てみると時価総額の大きい会社はそんなに安定株主はおらんぞ」と。現に買収防衛策を維持できない会社が多いのですから、そりゃバレますよ。

じゃあここから先、日本の会社はどうすればいいのか?今回は無料公開しているので、詳細な説明はしませんが、もう一度買収防衛策については学びなおしたほうがよいと思います。みんな買収防衛策のことを雰囲気でしか知らないはずです。「買収防衛策?あれだろ?株を大量に発行して薄めるんだろ?」程度の知識でしょうね。

ほかにもやるべきことはあります。大買収時代はもう始まっていますから、気合を入れて乗り越えないといけません。変わらないとダメです。

 

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