2023年05月24日

No.1538 コスモが旧村上ファンドにMoM決議で買収防衛策を発動

以下のとおりコスモエネルギーHDが旧村上ファンドに対して買収防衛策を発動すると公表しました。以下見解などをまとめますが、間違ってたらすみません!

大規模買付行為等への対応方針に基づく対抗措置発動に関する 当社定時株主総会における株主意思確認の議案上程についてのお知らせ

https://www.release.tdnet.info/inbs/140120230523579358.pdf

いわゆる「有事型買収防衛策」の発動ですね。この有事型買収防衛策の「導入」については2023年1月11日に公表されています。取締役会決議での導入です。そして今回は導入された買収防衛策を「発動」するというものです。これは取締役会決議で発動するのではなく、株主総会決議を取って発動します。

で、これは今すぐ発動するというものではなく「大規模買付行為等趣旨説明書を提出せず本対応方針の定める手続に従うことなく本大規模買付行為等に着手したと認められることを条件として、本対応方針に基づく対抗措置を発動することの是非を当社の株主にお諮りする議案を定時株主総会に上程することを決議」です。簡単に言えば、買収防衛策のルールを無視してコスモ株の20%以上を旧村上ファンドが買おうとした場合に発動しますよ、という議案を総会に事前にかけておくという内容ですね。

一般的な平時型買収防衛策は、20%以上の当社株式を取得しようとする場合はルールに従って情報と時間を提供してください、違反したら対抗措置を発動しますよ、という内容を株主総会にかけます。だからこのコスモのやり方は、特段普通の買収防衛策と変わるものではなく、相手を旧村上ファンドに特定しているというものです。

で、ルール違反の場合は取締役会決議で発動するわけですが、コスモは「株主意思の尊重の観点から、定時株主総会で、急速な大規模買付行為等に着手したと認められる場合における当社取締役会による対抗措置の発動について、株主の皆様に予めご承認をお願いするもの」としています。

P12にも「シティらとのこれまでのやり取り等を踏まえると、本定時株主総会後、シティ らは、当社株券等の本大規模買付行為等の実行に着手する蓋然性が高いものと合理的に判断されます」とあります。コスモとしては旧村上ファンドが20%以上の株式取得をする可能性が高く、かつ、旧村上ファンドの言うような経営施策をやれば企業価値を損なうから、買収防衛策を発動する許可を株主に求めているということですね。

なお旧村上ファンドはコスモが1月11日に導入した買収防衛策に対して、株主総会にはかるのかとコスモに確認しているようです。で、今回の買収防衛策の発動議案が否決された場合、おおもとの1月11日に取締役会決議で導入された買収防衛策はどうなるんですかね?これはこれで生きるんですか?⇒P15~16に書いてますね。今回の発動議案が可決されたら買収防衛策ルールは2024年の定時株主総会まで継続、否決されたら今年の定時株主総会で終了、です。

すみません、コスモのプレスを読みながらこのコラムを作成しているのですが、P14~15を読んで驚きました。コスモは買収防衛策の発動を株主総会にはかるのですが、その決議方法は「旧村上ファンなどを除いた株主の議決権の過半数の賛同」としています。プレスにも書いてありますが、いわゆる「MoM決議」ですね。東京機械製作所がアジアインベストメントファンドに対して買収防衛策を発動するときにやった決議方法です。独立委員会が勧告した形ですが、井上龍子委員(社外取締役)を除く委員の一致となっているので、井上委員は勧告内容に賛成していないのでしょうか?井上委員の経歴は以下のとおりです。

井上委員は渥美坂井法律事務所の方なんですね。今回旧村上ファンドがコスモに取締役選任の株主提案をしていますが、その候補者は渥美陽子弁護士です。渥美坂井法律事務所の弁護士ですね。あ、すいません。プレスに書いてました。

MoMの詳細についてはP16~に書いてあります。議案の決議から除外されるのは、シティインデックスイレブンス(7,818,600株)、野村氏(3,854,025株)、レノ(6,007,900株)及びコスモの取締役(8名、合計83,471株)、役員持株会、取締役の親族などだそうです。MoM決議での発動を勧告した要旨はP17~に書いてあります。簡単に言うと、

  1. 再生可能エネルギー事業子会社については分離・上場させるのではなく、当社グループのバリューチェーン全体で成長させていくことが企業価値・株主共同の利益の向上に資すること
  2. 旧村上ファンドの株主還元に関する要求は、当社の必要自己資本額を下回ることとなる水準の自己資本の払い出しを要求するものであること
  3. 旧村上ファンドの真の目的は自らの短期的な利益のみを追求するため、過度に大規模な自己株TOBを実施させ保有株の売り抜けにあることが合理的に推認されること
  4. 大規模買付行為等が行われた場合、当社の経営に重大な支障を生じさせるおそれがあること

そして対抗措置発動の必要性と相当性についてはP19~20にあります。旧村上ファンドが定時総会後買い増しを行う蓋然性は高い、企業価値・株主価値が毀損される、強圧性、情報開示が不十分・・・旧村上ファンドの持ち分を希釈化させ損害を与える可能性はあるが回避可能性は確保している、軽減措置もある、などなど。

MoM決議の妥当性についてはP20~にありますが、以下簡単にまとめます。

・旧村上ファンドによる大規模買付けの是非については株主の意思に基づき判断されるべき。

・旧村上ファンドによる大規模買付けは一般株主に対して強圧性が存するが、旧村上ファンドは買付者として一般株主とは異なる利害状況にある。既に保有する当社株についても、強圧性及び情報開示の点で問題のある市場内買付けにより取得されたもの。だから旧村上ファンドを含めた通常の普通決議を取った場合、当該決議結果は株主の意思の発現とは評価できず歪められているおそれがある。

・したがって、本対抗措置の発動の是非に関する株主意思の確認は、旧村上ファンドなど一般株主と異なる利害状況にある株主を除いた株主による決議によるべき。

・大規模買付けに強圧性が存する状況においては、強圧性の影響を受け得る株主が強圧性のない状況で判断をする必要がある。

・旧村上ファンドが保有している株式は、そのほとんどが強圧性のある市場内買付けにより取得されたものであり、一般株主に対する十分・適切な情報開示をせずに取得したものであり議決権を認めるべきではない。

・したがって、本議案の決議に際しては、旧村上ファンドが保有する株式に係る議決権を決議から除外することも許容され得ると考えられる。

こんな感じです。今後ですが、株主総会でMoM決議を取り、買収防衛策の発動が認められた場合、旧村上ファンドが裁判所に差止請求をする可能性があります。ただし、MoM決議でも株主総会で否決される可能性はあります。また、コスモは旧村上ファンドに「2023年12月31日までの間、大規模買付を行わないと誓約できるか」と確認したところ拒絶されたそうなので、旧村上ファンドが折れて「やっぱり誓約してやる」となれば決議を取らないかもしれません。村上さん、裁判になったら金もかかるから誓約しますかね?

株主がどう判断するか?非常に興味深いです。コスモは1年以上、旧村上ファンド対応をしているわけですが、コスモは株主構成上しょうがない面もあります。大事なのは有事になったら勝つではなく、有事にしないことですよ。平時型買収防衛策を導入できる会社はいますぐ導入すべきですよ。有事になってしまったら、勝てるかもしれないけど、莫大なコストがかかりますし、社長やCFOが経営に専念できなくなります。平時からちゃんと企業防衛、企業価値・株主価値向上について考えておく必要があります。

 

このコラムのカテゴリ

関連する
他のコラムも読む

2023年01月11日 有料記事

No.1460 よい敵対的買収

先日少しご紹介した西村あさひの太田先生の記事です。

続きを読む

カテゴリからコラムを探す

月別アーカイブ