2023年09月15日

No.1602 株主資本主義とは何なのか?

株主資本主義って、言葉としてはよく聞くのですが「じゃあ説明しろ」と言われると、「あれ?なんだっけ?」となってしまいます。ネットで「株主資本主義とは」と検索すると、以下のような説明がありました。

株主資本主義とは、アメリカで主流とされてきた経営方針です。 企業経営において、株主の利益を最大化すべきという考え方であり、ステークホルダー資本主義と対義語にあたります。 株主第一主義であるアメリカとは異なり、日本企業の経営には「買い手よし・売り手よし・世間よし」との概念が根付いています。

以下のような説明もあります。

https://pica.or.jp/qa/qa06.php

A. アメリカで主流となっている「会社は株主のものであり、株主の利益を最大化するために経営されるべきである。」と考える資本主義です。株主の利益を最大化するために会社にかかわる人々に犠牲を強い、企業の長期的な発展を妨げるシステムです。社会に有用な企業を崩壊に導く可能性を持っています。

株主資本主義とステークホルダー資本主義って、まあ対義語なんでしょうね。というか、株主とほかのステークホルダーって対立するのが当たり前ですよね?以下をご覧ください。

売上高顧客から受け取り

売上原価労務費は従業員への支払い、原材料費仕入先への支払い

販管費給料は従業員への支払い、役員報酬も

営業外費用銀行への利息支払い

法人税等国・地方への税金などの支払い

当期純利益これの一部を株主に分配

こういうふうに損益計算書における受取り、支払いを区分すると、株主への支払い(分配)は一番最後なのです。販売先からお金を受け取り、仕入先・従業員・役員・銀行等の金融機関・国・地方公共団体への支払いが終わった後の最終利益が株主の取り分と言えます。余談ですが私は「よく会社は株主のものだと言われるが、それは違う。株主のものであるのは最終利益」と考えています。

基本的に各ステークホルダーは自分の取り分が多くなるように主張します。仕入先であれば仕入れ価格を上げてほしいと主張するだろうし、従業員は給料を上げてくれと主張します。役員もですね。銀行も利息を払ってほしいでしょうし、国も税金を上げることがあります。当然株主も配当を上げろと言います。ここには対立が生じます。

この対立をなくし、会社をうまく運営していく役割を担っているのが経営者でしょう。経営者の大切な仕事は各ステークホルダーに一生懸命がんばってもらい、それぞれに不公平感を生じさせない分配をすることだと思います。

少し話を変えますが、みなさん、株主と言うのは実は弱い立場にあります。なぜなら上記の通り、株主が得るのは最終利益なのです。途中でいろんなステークホルダーに抜かれてしまいます。油断すると株主の利益が食い物にされるおそれがあるのです。だから株主は「オレたちの取り分が少ない!」と声高に主張し、ときにアクティビストという一見過激に見られがちな株主が登場します。ある意味株主は弱い立場にあるので、自分たちの取り分を確保するために大声を上げなくてはいけないし、過激な行動を取らざるを得ない場面があるのです。そして搾取されないよう見張るために、独立した社外取締役を選任するよう求めます。会社の内部に近い役員や従業員のほうが搾取しやすい立場にいますから。役職員は粉飾決算できるけど、株主はできまへん。

米国の歴史は知らんけど、上記リンクには「アメリカも嘗ては企業は従業員や顧客、仕入先などを含めたパブリック(公的)なものと捉える人たちが多かったのですが、1980年代以降になって、明らかに変質していきました。」と書いてあります。まさに米国も日本の経営者と同じように考えていたけど、そこに登場したのが株主の権利を主張するアクティビストなのでしょう。今の日本とおんなじですね。やはり日本の株式市場は米国の後追いなのです。

つまり、分配のバランスが崩れ、その状態が長く続くと、不公平を押し付けられたステークホルダーが声を上げ始めるのです。その声を大きくあげたのが株主だから、株主資本主義と言われ、そして「株主への分配が多くないか?不公平だ!」と思ったステークホルダーが声を上げ始めると、それはステークホルダー資本主義なのでしょう。

なお、分配のバランスが崩れ不満を持つステークホルダーが実力行使に出ると、会社が疲弊し、企業価値向上に悪影響が出ます。そういう悪影響が出ないようにするのが経営者の仕事。ちなみに昨今、関経連が以下のような提言をしています。申し訳ないのですが、やり方が間違っています。こんなことを政府や取引所に求めるのではなく、経営者はステークホルダーとちゃんと対話をすべきなのです。株主にやり方が強引だと思えば、いろんなステークホルダーの主張を背景にしながら、株主に説明し納得してもらう。国を頼って一部のステークホルダーの権利を制限するなどあってはならない。中長期的な会社の価値・利益を守りたいなら自分で守るべきだ。お上を頼るのは間違っている。

https://news.yahoo.co.jp/articles/7335dbfe3edb24b1232e5ef4499c8d9dcdb10af6

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