2017年09月06日

No.161 そろそろ来年の株主総会のことを考え始めるべき時期です

 「今年の株主総会が終わったばっかりじゃん!」という声があるでしょうし、さすがに早すぎるだろうと思われるかもしれません。しかし、そろそろ、です。なぜなら、来年の株主総会議案が否決されるかもしれないからです。

 今年の株主総会で議案が否決された会社がいくつかありました。その会社を私は非難するつもりは全くありません。まさかこの議案が否決されるの?うちの株主構成で?という会社だったからです。その会社が油断したから、ではなく、しょうがなかったのです。でも、来年の株主総会からは「しょうがなかったよな」では済まないのです。今年否決された会社の株主構成を見れば、「うちにとっても他人事ではない」と考える必要があるからです。しつこくてすみませんが、もう一度、今年、株主総会議案が否決された会社の株主構成を見てみましょう。まず、イリソ電子工業。監査役への退職慰労金議案が47.59%の賛成率しか取れず、否決されました。

 安定株主比率は20.7%です。高くはないですが、一般的な水準ですし、外国人株主比率も28%ですから、高すぎる水準でもありません。でも、議案が否決されました。この株主構成で普通決議を取れない時代になったということです。

 そして次に、T&K TOKAの株主構成を見てみます。この会社も退任監査役に対する退職慰労金議案が48.38%の賛成率しか取れず、否決されました。

 安定株主比率は23.09%です(上位個人株主を安定株主と仮定)。この会社も決して安定株主比率が低すぎる訳ではなく、外国人株主比率も高いけれど、普通決議を否決されるような株主構成ではないんです。

 2社とも、今までであれば「普通決議は大丈夫でしょ」というレベルの会社です。たまたまたこの2社の運が悪かっただけだと思います。皆さんの会社の株主構成と比べてどうでしょうか?「うちと似ているなあ」「うちのほうが安定株主比率は低いし、外国人株主比率は高いぞ」という会社もいらっしゃるでしょう。

 「独立性は高くない社外取締役だけど、普通決議だから問題ないでしょ。」「慰労金議案が反対されるのは知っているけど、普通決議だから問題ないでしょ。」 それが問題になってしまう時代になりました。普通決議ですら否決されてしまう時代です。

 どうすればよいのでしょうか?簡単な方法は「反対されるリスクのある議案は出さない」です。まあ、現実的にはそんなことはできないでしょう。反対されるだろうけど、出さざるを得ないというのが現実的な経営でしょう。他の対策と言えば、安定株主対策ですね。1~2%程度安定株主比率を増やしておけば、普通決議は取れるのではないでしょうか。「簡単に書いているけど、安定株主比率を1~2%も増やすのって大変だよ!」 おっしゃるとおりです。時価総額×1~2%のカネがかかるかもしれません。でも他に方法がありますかね?個人株主を増やそうにも、現実には増えません。増えるとしても非常に長い時間がかかりますし、固定化される訳ではありません。そんな時間とコストに見合わない個人株主拡大策を取るよりも、株主に説明のできる持ち合いを考えた方が合理的ではないでしょうか。株主に説明できる持ち合いであれば、事業上のメリットもあるでしょうし、その先の話につながるかもしれません。

来年の株主総会のことを今から考えるなんて、これまででは考えられないことでした。当然、役員選任議案などは現時点でわからないにしても、「社長が独立性の低い人物を社外取締役にしたいと言い出したらどうしようか?」「うちの株主構成だったら、●と▲と■の機関投資家は押さえておかないとまずいな」といったような戦略を練っておく必要があります。もしくは「社長が独立性の低い人物を社外取締役にしたいと言い出す前に、機関投資家の動向が厳しいことを刷り込んでおこう」といった行動を取っておく必要もあるでしょう。また、買収防衛策の更新時期を迎える会社については、今から検討する必要があるでしょう。どうすれば機関投資家に賛成してもらえるか?賛成してもらえない前提で可決できるか?万一、否決された場合はどうするか?などです。「廃止したほうがいいんじゃないか?」などという意見も出てくるでしょう。しかし、それは間違いです。買収防衛策は絶対に廃止すべきではありません。中にはセミプロが「機関投資家が反対しますよ!」とか「賛成率が下がりますよ!」といったアドバイスをするかもしれませんが、それはあくまでセミプロの意見です。

 昨今のいろんな流れを考えると、本当に今から来年の株主総会のことを考える必要があるということではないかと思います。

 

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