2017年09月08日

No.163 内田洋行の株主還元

 2017年9月2日の日経15面に掲載されていた記事です。コラムにするのを忘れていました。2017年7月期の年間配当を75円と、従来予想から5円積み増すと発表しました。また、併せて10億円を上限とする自社株買いも発表しました。記事では「大株主の投資ファンドが還元強化を提案しており、市場では対応が注目されていた」とあります。内田洋行の大量保有報告書の提出状況を見ますと、ストラテジック・キャピタルが5.05%保有しています。ストラテジック・キャピタルは丸木強氏が運営しているファンドです。丸木強氏は元村上ファンドですね。ま、元野村證券でもありますが。

 ストラテジック・キャピタルは内田洋行に対して株主提案をしているようです。ストラテジック・キャピタルが公表した内容を見ると、以下のとおり定款変更と剰余金の配当です。

 ストラテジック・キャピタルの主張は政策保有株式を売却しろ、配当を増やせ、ということです。ストラテジック・キャピタルによると、内田洋行が保有する政策投資株式は88銘柄で、B/S計上額は53億円、PBRは1倍を大きく下回り、ROEは5.2%と低い。政策保有株式の目的が「安定的・長期的な取引係の構築」等であるとしても、取引先の株式を保有していると何故に取引係の構築等ができるのか、その因果係が不明です。これでは、株主になれば取引という利益が供与されるとの疑義が生じます。そもそも、取引先との係構築等は、株式保有にるものではなく、社の提供する役務等の品質向上によるべきです。」と主張しています。ごもっともです。持ち合いについては、株主サイドの理屈に乗っかって突き詰めれば説明できません。

 ではストラテジック・キャピタルの株主提案は可決されるでしょうか?内田洋行の株主構成を見てみましょう。

 法人株主が12.21%、東京海上4.77%、三井住友信託3.98%、第一生命3.03%、りそな2.66%、みずほ信託みずほ銀行口2.64%、従業員持株会2.50%の合計31.79%です。まあまあの水準です。株主提案が可決される可能性はまずありません。ゼロと言ってもいいです。株主提案がなされても、基本的には会社側のほうが有利です。

 しかし、敵対的TOBを仕掛けられたら?これだと話は別です。株主提案であれば、個人株主は白紙で投票してくれますので、会社支持とカウントされます。大多数の個人株主は株主総会に興味などありません。「いや、うちの株主総会には個人株主がけっこう参加するし、厳しいことを言ってくるぞ!」 株主総会に出席している個人株主など、総議決権ベースで見れば1%にも満たないはずです。個人株主は議決権行使書など捨ててしまうか、白紙で投票するかです。しかしTOBとなると、敵対的であっても、TOB価格次第では応募してしまいます。個人株主は株価が上がれば売るという逆バリの投資家ですから。

 ストラテジック・キャピタルは敵対的TOBなどしないのでしょうか?基本的には丸木氏の個人資産で活動しているような話を聞いたことがあります。「村上ファンドで懲りただろうし、稼いだとは言ってもそこまではお金持ってないんじゃないの?」 そう考えてしまうと危険です。佐々木ベジだっていくら持っているかわからなかったのですから。

有事に備える基本は「万一仕掛けてきたら?」を想定することですし、有事が近づいてから想定しても遅いのです。

 

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