2017年09月13日

No.166 時価総額が大きければ現金で買収するのはしんどいか?

 先日、日経ビジネス「英アストラゼネカ、第一三共に買収提案 狙われる日の丸製薬」についてまとめましたが、「いくら海外企業の規模が大きいとは言え、2兆円以上のキャッシュを用意するのは大変ではないか?」というご意見がありました。

 答えは簡単です。「株式対価のTOBであればキャッシュは必要ありません。税制改正もなされます」です。では、海外で行われた敵対的TOBのケースを見てみましょう。事例を調べるのに時間がかかるので、ちょっと手抜きをします。写真ですみません。

 野村證券IBコンサルティング部「敵対的M&A防衛マニュアル」から抜粋しました。2004年時点のデータですので、相当古いです。最も金額が大きなケースはボーダフォン・エアタッチ(英)によるマンネスマン(独)への敵対的TOBです。買収金額は202.7$bilです。為替を110円として計算すると、約22兆円です。トヨタ自動車の時価総額を超えています。いくら当時のボーダフォンであっても22兆円ものキャッシュを用意できるはずがありません。海外における敵対的TOBで金額の大きなものは、ほとんどが株式対価か株式と現金の組み合わせです。

 10年前に「本格的な買収時代がやってきます!」といろんなところで言われていました。「本格的な敵対的TOBなど起きていないよね」と皆さんお考えかと思います。でも、今回の流れに対して、私は「今回は本当に大買収時代がやってくるかもしれませんから、気合いを入れて準備しておいたほうがよいです」と言いたいです。当時は株式対価のTOBも有利発行や現物出資と言った諸問題はあるものの、法律上は可能ではないかという議論がありました。しかし、今は法律上の手当てもなされています。懸案だった税務も改正されます。そして、安定株主神話が崩れました。

※海外企業が日本企業に株式対価のTOBを行う場合、実務上はいろいろと大変なことがあると思います。

うーん、「やってくるかもしれません」と書きましたが、日本企業を敵対的に買収できてしまう時代が確実にやってきました、に変えます。文章を書きながら「本当に買われる」と思った次第です。

なお、株式対価のTOBを日本で初めて行ったのは佐々木ベジさんです。ソレキアに対しては、日本で初めて?敵対的TOBを成功させました。佐々木ベジさんは一番乗りが好きなのかもしれません。次は株式対価の敵対的TOBを実施してくる可能性だってあります。

 

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