2017年09月15日

No.168 私たちは、個別の投資先企業・議案ごとに、議決権行使結果を公表します。

 出資者にだけ公表してはどうでしょうか?と思ってしまうのは私だけなのでしょう。特にどこの会社の議案にどういう議決権行使をしたかをデカデカと公表しなくても、出資者にだけ「こういう行使をしました」と伝えればよいと思います。と言っても、この流れは私がいくら言っても変えようがありません。まあ、どういう行使をしたのか公表してくれれば、私の仕事上は活用できるのでありがたいのですが・・・。

 本日9月15日の日経18面の広告です。おもしろいことが書いてあります。「日本では特定の株主総会が特定の時期に集中しやすいこともあり、議決権行使の判断を専門に扱う会社であっても、人的資源が不足し、個別の議案に対して適切な判断が下せていないのではないかとの懸念も指摘されている」「そのため、改訂版スチュワードシップ・コードでは、議決権行使助言会社に対して十分な経営資源を投入することを明確に求めている。」

 いいですねえ~、もっと言ってやれ!しかし、この意見は正しいと思われる反面、ズレています。一つは、助言会社に人員を増やせ、と言うのではなく、機関投資家が議決権行使についてきちんと分析し行使できる体制を整えろ、です。「助言会社に経営資源を投入することを求めます!」じゃないでしょ。自分たちが経営資源を投入して体制を整えなさい。自分たちで分析して行使しなさい。アウトソースしない!

それと、もう一つ。助言会社が人員を投入しても、質の高い助言などできる訳がありません。人員の数の問題ではなく、人員の質の問題なのです。川崎汽船の社長選任議案に対して、ROEが数値基準に達していないから反対しまーす!と推奨しちゃうような人たちですよ。日本郵船と商船三井とのコンテナ部門の統合を決断した社長なのに・・・。そういう推奨をしちゃう助言会社の中核人員の質を変えない限り、いくら人員を増やしてもムダです。知恵をしぼり、工夫を凝らした推奨をできる人がいないとダメです。

 日本の株主総会が6月に集中するからしんどい、という意見を言っていますが、それ、違うと思います。川崎汽船の社長選任議案への反対推奨だって、仮に川崎汽船の株主総会が6月ではなかったとして、助言会社が異なる推奨をしたと思いますか?同じ推奨をしますよ。そもそも川崎汽船の社長選任議案が問題になりそうなのは、随分前からわかっていたはずです。エフィッシモも大量に買っていたのですから。その中で同業との事業部門の統合の話が出ました。私なら「川崎汽船のROEは低いけど、この事業部門の統合を選任議案においてどう判断するか?」を事業部門統合の発表があった時点から考え始めると思います。そうすれば、6月に株主総会が集中していたとしても全然問題ありませんよ。だって招集通知が発送される前に、問題となりそうな会社の分析など終わっているはずですから。

 問題とならない会社の議案など分析する必要はありません。時間の使い方が間違っていると思います。そもそも質の高い分析・推奨を行っている訳ではないから、たぶん、問題のない会社の議案の推奨内容の作成にも時間を割いてしまっているのではないでしょうか。質より量という仕事の仕方ですね。問題のない会社の議案など「賛成」とだけ書いておけばOKなのです。助言会社に必要なのは人員の数ではなく質であり、働き方改革です。

 また、企業サイドにも工夫が必要です。助言会社のトンチンカンな推奨がすぐに質の高い内容に変わる訳ではありません。助言会社が反対しそうな議案は前もって「助言会社の推奨内容には反対する」と表明しておくべきと考えます。助言会社が推奨した後では遅いです。「助言会社は基準どおりの形式的な推奨をすると考えられるが、我々は○○と考える」といった内容を前もって公表した方がよいと考えます。助言会社が推奨内容を機関投資家に伝えた後では時間がないです。前もって公表して、助言会社が推奨内容を出したら「ほら、言った通りの推奨しかできないでしょ」とまた反論すればよいです。

 それと、今日の日経18面に「私たちは、個別の投資先企業・議案ごとに、議決権行使結果を公表します。」とデカデカと広告を掲載していますが、これ、企業サイドもやったらどうでしょうか?「私たちは、個別の機関投資家の議決権行使結果に対して、納得できない場合は説明することを要求します」「私たちは、機関投資家に対して議決権行使助言会社を利用するのではなく、自らが適切に議案を分析し議決権行使をすることを要求します」と。機関投資家だけにこんな広告をうたせるのではなく、事業会社も対抗すべきでしょう。

行使結果に納得できない場合は、この議案に反対した理由を明確にしろ、とプレスリリースで反論したらどうでしょうか?機関投資家は「説明する義務はない!」と言うかもしれませんが、その場合は「だったらオレ達もIRなどはしない。株主総会以外での対話はしない」と主張しましょう。機関投資家に対して弱腰になる必要はありません。強気に出て、議決権行使助言会社を利用したいい加減な議決権行使をしないようけん制しましょう。

 

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