2017年09月20日

No.170 買収防衛策の有効期間~これからは3年ではなく2年がよいかも~

 買収防衛策には有効期限があるのを皆さんご存知ですか?買収防衛策導入企業やかつて導入していた企業の皆さんはよくご存じでしょう。無期限で導入してしまうと株主が反対しますし、ISSが買収防衛策を導入する場合、有効期限は最大で3年までと主張しています。日本企業の場合、だいたい3年にしているケースが多いです。ISSが3年までとしていることに加えて、中期経営計画の期間と合わせて買収防衛策を導入している企業もあるからです。中計って3年の企業が多いですよね。

 一方で、中には買収防衛策の有効期限を2年にしているケースもあります。これは、取締役の任期と合わせたのだと思います。有効期限を2年とした会社から随分前に「2年だと短すぎる。3年にしたい」と相談を受けたことがあります。「シレっと3年にしちゃってください。貴社の株主構成なら問題ありません」とご回答申し上げました。2年だと本当に短く感じるんですよ。例えば、去年買収防衛策を更新したとします。1年たって、また「来年の更新、どうしようか?」と考え始めます。3年の会社だと、さすがにまだ考えません。考え始めるのは来年の今頃でしょうね。

 買収防衛策の導入を現時点で検討している企業に対しては、有効期限を3年にすることをおすすめしています。しかし、よーく考えてみると、2年にすることのメリットもあるのではないかと最近考えを改めました。実務的には3年のほうがよいに決まっているのですが、2年にしている企業は、それはそれでよいことなのではないか、と。

 有効期限2年の企業は、ほぼ毎年と言ってよいほど買収防衛策の検討をします。

・世の中、買収防衛策を廃止する企業が増えているが、当社は更新してもよいのか?

・なぜみんな買収防衛策を廃止するのか?

・よく考えると、持ち合いが減っているのだから今こそ買収防衛策が必要なのではないか?

・ソレキアって聞いたことのない会社だな、敵対的に買収されちゃったのか?

・やっぱり買収防衛策って必要だな!

と。常に買収防衛策のことを考えます。

・買収防衛策だけで防衛できるのか?

・できないとしたら、平時のうちにやっておくべき経営施策があるのではないか?

・自社株買いや増配をすべきではないのか?

・きちんと説明のつく相手先との持ち合いをもう一度考えた方がよいのではないか?

・きちんと説明のつく相手先であれば、将来的にはもっと深い関係になることもあり得るのではないか?

という方向にまで議論がおよびます。2年の有効期限だと、ほぼ毎年検討しますから、買収防衛策を更新するかどうかに加えて、けっこう白熱した議論にまで展開することがあります。買収防衛策を本当に機能させるため、また、役員がきちんと買収防衛策の機能について理解するためには、有効期限を2年にして、きちんと毎年議論することが必要なのかもしれません。

 最近、当社のコラムを読んでいただいている方がたくさんいらっしゃることに気づきました。皆さん、ありがとうございます。でも、皆さん、当社のコラムを読んで、買収防衛策や企業防衛体制などについて、社内で深く議論しましたか?していませんよね?なかにはしている企業もいらっしゃいますし、ご相談を受けることもあります。

コラムを読んで「うん、おもしろいな!」と思ったとしても、その先にまで議論は進んでいないですよね。買収防衛策を導入・検討している企業は、導入していない企業よりも敵対的買収について真剣に考えていますし、議論しています。ましてや買収対象になった企業などは、より深く検討していています。また来たら大変ですから。

うちは買収防衛策などではなく時価総額の拡大という王道で守るんだ!教科書的には正しいのですが、如何せん、買収者は善人ではありません。いろいろなスキームを考えています。中にはあくどい方法だって取ってくることがあります。それに対して丸腰で挑むなど、愚の骨頂です。ちなみに、買収防衛策は買収を防衛する策ではありません。時間と情報を確保するための策です。皆さん、敵対的に買収提案をされた際に、時間と情報が必要と思いませんか?買収防衛策がないと、30営業日しかありません。「うちは30営業日あれば十分!」 本当ですか?ちなみに、第三者に対してホワイトナイトを依頼する場合、貴社の都合だけでは済まないのです。第三者にとって検討するための時間が必要なのです。時間があれば、ホワイトナイトともっと条件交渉できたのに!別のホワイトナイトとも協議できたのに!ということになりかねません。30営業日なんて、あっという間です。

「買収防衛策をいまだに導入している企業なんて、保身だ!時代遅れだ!ガバナンス改革に逆行している!」と考える方もいらっしゃるかもしれません。特に学者などの有識者!しかし、私に言わせれば、買収防衛策を導入していない企業、検討していない企業のほうが、真の意味で時代遅れです。敵対的買収が成功する時代になったのですから、もう一度導入を検討する必要があります。敵対的買収が成功する時代になったと気付いたのが、佐々木ベジです。株主提案はまた可決できると考えたのが村上ファンドです。時価総額が大きくても相当規模の株式を買えると考えたのがエフィッシモです。彼らと皆さんとの違いって何だと思いますか?それは「彼らは常に敵対的買収や株主提案のことを考え、策を練っている」ということです。

何から社内で議論すればよいかわからない?そういうときは当社が社内議論のきっかけを作ります。

 

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