2017年10月17日

No.189 私のガバナンス改革

 昨日10月16日(月)の日経に「私のガバナンス改革 元経営トップ「独立取締役の会」提言」という記事がありました。「取締役会は社長を定期的に評価し、いざとなれば解任すべきだという。」とあります。これ、私も賛成です。社外取締役の重要な役割の一つに「いざというときにちゃんと社長のクビを切れること」というものがあると思います。株主のため、会社のために、社外取締役は「社長!退任すべきです」といざというときに声を上げる必要があると思います。

 多少書いてはありますが、ここの議論で足りない論点があります。役員報酬の議論が圧倒的に足りません。「社長の解任権限を!」「いざとなれば解任すべき!」と主張するのであれば、いつ解任されてもいいように役員報酬を十分な水準に引き上げるべきと考えます。確かに「優秀な人材を早期に抜擢し、経験を積ませ、十分な報酬を与えるべきだ」と書いてはいますが、報酬の議論が少なすぎます。社長解任に関して議論をするのであれば、報酬の議論も同じだけすべきです。社長になっても、リスクだけ増えてリターンが増えないのであれば、まったくもってバランスしません。

コラムNo.169「役員報酬」で指摘しましたが、私は日本企業の役員報酬引き上げに大賛成です。日本の株式市場で指摘される諸問題は、私は役員報酬を増額させることでほとんどが解決されるだろうと考えます。なぜかと言うと、たくさんの報酬をもらっていれば、当然ROEを意識せざるを得なくなるからです。自分たちだけたくさんの報酬をもらっていながら、株価を上昇させない訳にはいかないと考えるでしょうし、そうすれば、自ずと自己株取得を実施する企業も増えるでしょう。増配する企業も増えるはずです。M&Aだってもっと増えるかもしれません。そして、失敗したらいさぎよく辞任するでしょう。

役員報酬を増やす前にROEを引き上げる施策を実行しろと株主は批判するかもしれません。しかし、これは逆です。まず役員報酬の増額が先です。以下、東洋経済のデータです。http://toyokeizai.net/articles/-/177387?page=2

 ソフトバンクの方は「おおー!」という金額ですが、他の企業については、米国と比べたらかなり低いのではないでしょうか?以下、同じく東洋経済のデータですが、米国企業の報酬ランキングです。http://toyokeizai.net/articles/-/54938?page=2

 ざっくり言って日本企業の3倍近い額をもらっているというイメージではないでしょうか?はっきり言って、日本企業は今の報酬を2~3倍にしてもよいのではないかと考えますが、乱暴でしょうか?

 ここから先は私の専門領域ではありませんので、雑感までですが、役員報酬を引き上げれば日本社会も変化するように思います。先ほど申し上げた通り、当然ですが、株主を軽視した経営などできなくなります。株価も意識せざるを得ません。株価を上げるためにはどうするか?を真剣に考えます。積極的なM&Aに打って出るか?めぼしいM&A案件がないのであれば、手元にあるキャッシュをどう活用するのか?だったら自己株取得するしかないのではないか?配当を増やす方がよいのではないか?M&Aや財務戦略が失敗したら、当然、経営陣は責任をとって辞任するでしょう。そうしたら、他の会社からお呼びがかかるかもしれません。人材の流動化も進みます。顧問・相談役制度も「役員時代にあんなにもらっていたのだから、もう高額報酬などもらえない」と考えて、廃止する企業が増えるかもしれません。そうすれば、社外取締役になる人だって増えるかも知れません。

更に「役員だけ高額報酬でよいのか?」という議論も起こるでしょう。従業員の報酬制度の見直しも積極的に行われるようになるのではないでしょうか?当然ですが、全従業員の報酬を引き上げる訳にはいきませんから、良い悪いは別として、自ずと優秀な従業員の報酬が引き上げられます。格差社会が良いのか悪いのか私にはわかりませんが、優秀な人材に経営資源を集中投下しないと、世界では戦えなくなってしまうのではないでしょうか。役員の流動化に伴い、従業員の流動化も進んでいくような気がします。

役員報酬の引き上げは、細かい引上げではなく、2倍・3倍といったドラスティックな水準で引き上げた方が企業価値・株主価値の向上によりつながるのではないかと考えます。

 

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