2016年11月25日

No.24 意外と低い、上場グループ会社の安定株主比率

エフィッシモの最近の投資先を見ると、比較的規模の大きい会社が増えてきました。川崎汽船やリコー、第一生命などです。でも、彼らの投資先の多くに、上場子会社や上場グループ会社があります。上場子会社を狙うのは、はっきり申し上げると、私もよくわからないのです。「親会社が無視し続ければよいだけですよね?」と思ってしまいます。現に、エフィッシモの投資先で親会社が存在する会社については、保有期間が長くなっています。おそらく、エフィッシモも親会社が何かしない限りは手の打ちようがない、というのも保有期間が長くなってしまった理由の1つかもしれません。

 一方で、上場グループ会社はどうでしょうか?子会社ではなく、持分法適用会社です。実は、上場子会社と違って、安定株主比率が高くない場合があるんです。グループ会社のほうでは、「資本上位会社がいるんだから、持ち合いで安定株主増やす必要ないでしょ?」と思っているのだと思います。1人の安定株主が20%以上持っているから、安定化対策に対する意識があまりないのです。当たり前だとは思います。でも、以下の株主構成を見てください。ダイワボウ情報システムという会社です。今は大和紡績の子会社ですが、2008年までは上場していました。

 安定株主比率を計算してみましょう。その他の法人が28.98%です。それ以外は、上位大株主を見ても、銀行・生損保・従業員持株会などが出てきません。ですので、安定株主比率は28.98%とします。

 この数値、高いでしょうか?低いでしょうか?

 答えは「普通」です。そうです。普通の上場企業の安定株主比率です。あくまで想像ですが、これに、エフィッシモは目を付けたのではないでしょうか。エフィッシモはダイワボウ情報システムの株式を買い付けはじめ、2007年8月20日に大量保有報告書を提出しました。その後、どんどん買い進みます。エフィッシモの保有比率の推移は以下のとおりです。

 2007年8月20日に大量保有報告書を提出して以降、およそ3か月後には保有割合が20%を超えました。そして、保有割合が25%に到達してしまいました。つまり、資本上位会社である大和紡績の保有割合を超えた、ということです。そして、買い増しは止まりません。30%を超え、そして、保有割合は40%を超えてしまいました。この時点で「勝負あり!」です。これだけ買われてしまうと、もうどうしようもありません。ダイワボウ情報システムとしては資本上位会社を頼るしかなくなります。

2008年9月9日、最終的にダイワボウ情報システム株式の24.11%を保有する大和紡績がTOBによりダイワボウ情報システムを完全子会社化すると発表しました。TOB価格は2,400円。エフィッシモは保有するダイワボウ情報システム株式のすべてをTOBに応募しました。

エフィッシモの取得単価は変更報告書に記載のデータから計算すると1株当たり1,559円で、約199億円の売却代金で約70億円の売却益を得たと推定されます。

持分法適用会社って、実は資本上位会社以外は浮動株であることが多いんです。安定化対策をする必要がないんですよね。というか、安定化対策の意識はないと思います。でも、一般的な上場企業と安定株主比率は一緒なんです。

資本上位会社がいることで、「あ、この会社の株式を買えば、おそらく資本上位会社が買い取ってくれるだろう」と思われてしまうのです。つまり、川崎汽船の場合は「株式を買い集めれば、どこかの海運会社が買い取ってくれるのではないか」という想像に過ぎませんが、資本上位会社がいると想像ではなく「この会社が買い取ってくれるはず」という確信になってしまうのです。想定バイヤーが明確に存在するので、ターゲットになりやすいのです。

どうでしょうか。今回のタイトルは「意外と低い、上場グループ会社の安定株主比率」としました。でも、「うちは上場子会社とか上場グループ会社っていないしなあ」と思っていたみなさん!

「あれ、うちの安定株主比率って、ダイワボウ情報システムとほとんど変わらないよね?」

「あれ、うちの安定株主比率って、ダイワボウ情報システムの半分もないよね?」

と思いませんか?

そうなんです。30%程度の安定株主がいても、本気出せば買えてしまうのです。さらに、業界構造がわかりやすくて「この会社とあの会社が一緒になればいいのに」「この会社はあの会社を欲しいんだろうな」という想像が働きやすい場合、ターゲットになってしまうリスクがあるんです。

事業会社による本格的な敵対的TOBの実現にはまだまだ時間がかかるかもしれません。でも、投資ファンドによる株式の買い集めは現に起こっています。それが、業界の大きな再編につながることもあります。

本日、日経平均が一時年初来高値を上回りました。この相場がどこまで続くのかわかりませんが、日本の株式市場に資金が入ってきています。どんなお金が入ってきているのか?どんなプレイヤーが登場してくるのか?

事前準備が大変重要になってきています。

 

 

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