2017年02月17日

No.59 ソレキアへの敵対的TOBはどうなるか~大幅増配ではなくカウンターTOBかも?~

 本コラムはあくまで公表事実から推測した内容を掲載しているのみです。株式投資を促す目的で記載している訳ではありません。投資に当たっては自己責任でお願いします。

というのも、今回は株式投資の材料になり得るコラムなので、初めて注意書きを入れさせていただきました。

2月3日にソレキアは「当座のコメント」を出しています。これは「株主の皆さん、佐々木ベジ氏によるTOBは弊社経営陣の賛同を得たTOBではないですよ。我々経営陣はこれからTOBの内容を精査しますから、賛否の意見を表明するまで応募しちゃダメですよ!」という位置付けのコメントです。株主が「お、TOBだ!応募しよう」と即座に思わないように、注意喚起するためのものです。「敵対的TOBなら、即反対!と言ってしまえばいいじゃない」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、そういう訳にはいきません。即反対すると、株主から「なんで内容を検討もしないで反対するんだ?敵対的だから反対というのはおかしい!経営陣の保身じゃないか!」と言われてしまうからです。当座のコメントは財務局に提出する書類ではありません。

2月16日にソレキアは正式な意見表明を公表しました。今回の意見表明は財務局に提出しなければならない書類です。内容を見ると、TOBに対する意見は留保する、となっています。また、質問権を行使しました。5営業日以内に佐々木ベジ氏から「対質問回答報告書」が提出される予定です。その内容を精査した上で、賛否の意見を表明するという流れだと思います。ここまでは敵対的TOBの教科書通りの流れです。

問題は今後提出される賛否の意見表明です。おそらく、「TOBには反対」という意見になるのではないかと考えます。今回のTOBは過半数を取得する予定ではありませんが、約48%の取得を目指していますから、もし最大限買われたとすると、実質的に経営を支配されたも同然です。ですから、ソレキアも何とかTOBを阻止する方向で動くと思います。そうすると重要になってくるのはソレキアが打ち出す対抗策です。

株主が佐々木ベジ氏のTOBに応募しないような対抗策を打ち出す必要があります。だいたい3つくらいの策ではないでしょうか?

1つ目は大幅増配です。私は留保の意見表明が提出されるまでは、おそらく大幅増配で対抗するだろうと思っていました。ソレキアのTOB期限は3月24日です。配当の権利付最終日は3月28日ですので、大幅増配を決めれば、金額次第ですが、TOBには応募せず株式を保有したまま配当を受け取りたいという株主が出てくるでしょう。TOBに応募したいという株主があまりいなければ、佐々木ベジ氏の持株はさほど増えませんので、防衛成功です。佐々木ベジ氏・フリージアマクロスも配当を受け取れますので、ある意味ハッピーです。

2つ目は、ホワイトナイトによる救済です。誰がホワイトナイトになるでしょうか?四季報を見ると「独立系の電子部品商社。システムとソフトの開発、販売にも強み。富士通との関係が深い」とあります。また、ソレキアのホームページにある沿革を見ると「1958年9月東京特殊電線(株)関連会社、富士通(株)特約店、富士電機(株)取扱店として資本金50万円で小林電材株式会社設立」とあります。どうやら富士通と親しいようです。では、ソレキアの株主構成を見てみましょう。

富士通は株主でもあります。富士通がホワイトナイトになるのでしょうか?あり得なくはないですが、大手企業が火中の栗を拾うかどうかは私の経験上、微妙だなと感じます。

では3つ目。マネジメントバイアウト(MBO)です。大株主である小林氏一族によってソレキアは設立された会社のようですので、あり得ます。また、ホワイトナイトも同様ですが、カウンターTOBをかければ、おそらくTOBの終了日は4月以降に設定するのではないでしょうか?そうすると、期末時点で佐々木ベジ氏およびフリージアマクロスの株数は増えません。もちろん、佐々木ベジ氏もTOB条件を引き上げて対抗することが考えられますが、少なくとも今回の株主総会は乗り切れます。

現時点で、私はMBOの可能性が高まっている気がしています。なぜか?

まず、今回のソレキアのプレスリリースが非常に気になっています。プレスリリースを見ると、リーガルアドバイザーとしてアンダーソン・毛利・友常法律事務所を選任した、とあります。なるほど。アンダーソン毛利をリーガルアドバイザーに起用したのですね。では、フィナンシャルアドバイザー(FA)は?記載がありません。雇っていないということでしょうか?不思議ですね。敵対的TOBにおいて、買付価格が妥当かどうかについて言及する必要は出てきます。もちろん買付価格への言及が義務ではありませんが、「買付価格が安い」ということを株主に認識してもらわないと、TOBに応募してしまいます。現時点でなぜFAを公表しないのでしょうか?ちなみにソレキアの四季報上の主幹事は大和証券です。こういった敵対的TOBの局面では、主幹事は何らかの関与をしていると思われます。では、大和証券はなぜソレキアのFAではないのでしょうか?それは、MBOを実施するかもしれない経営陣側のFAに大和証券がついているから、ではないでしょうか?ソレキアは、もしかしたら別のFAを雇っているのかもしれませんが、それを公表すると、「なぜ主幹事の大和がFAではないのだろうか?もしかしてMBOをする経営陣側のFAになってる?」と推測されるからではないでしょうか?賛否の意見表明をする際にFAを公表するのかもしれません。勘繰り過ぎかもしれませんが・・・

 もう一つ気になります。今回、質問権を行使しましたが、ソレキアから佐々木ベジ氏への質問内容は多岐にわたっています。当然、「買付価格2,800円の具体的な算定根拠は?」という質問があるのだろうと思っていたのですが、ありません。え?買付価格についての質問をしていない?ちょっと考えにくいですね。リーガルアドバイザーしかいないから買付価格に関する質問が抜け落ちたのでしょうか?いやー、いくらなんでもアンダーソン毛利がそんなミスをするとは思えません。公開買付届出書には買付価格の算定根拠が記載されていますが、通常、もっと踏み込んだ内容を確認するために質問します。何らかの意図があるので買付価格に関する質問をしなかったのではないか、と勘繰ってしまいます。あまり買付価格について細かい点をつっこみすぎると、MBOで提示する買付価格にいちゃもんをつけられるかもしれないから、あえて買付価格については踏み込まなかった、ということではないでしょうか?

 佐々木ベジ氏・フリージアマクロスがソレキア株式に投資したのは154,342千円で、58,500株保有しています。1株当たりの取得価格は約2,638円ですね。今回のTOB価格は2,800円です。それより上の価格で経営陣がカウンターTOBを実行したら???ちなみに、ソレキアのBPSは6,340円です。

 また、職業柄、細かい点が気になります。今回の留保の意見表明ですが、私の経験上、けっこう遅いタイミングで提出されたと感じます。2月3日(金)からTOB開始です。法律上、意見表明は10営業日以内に行わなければなりませんが、敵対的TOBの局面ではなるべく早めに行います。ですから、私の経験で考えると、先週2月10日(金)か今週の前半くらいには行われると思っていました。気持ち、少し遅いんです。MBOを仕掛けるとなると、公開買付届出書などを準備する必要があります。いくらでTOBをするかなどいろいろと決めなければなりません。場合によっては第三者委員会を設置し、MBOに賛同するかどうかを検討してもらう必要もあります。時間が必要です。2月3日(金)にTOBが開始されましたらから、意見表明の期限は本日2月17日(金)です。しかし、経験上、ギリギリで意見表明をすることはないと思います。万一、手違いなどがあってEDINET登録できなかったらと考えると怖いので、余裕を持って昨日にしたのかな?と思ってしまいます。

 最後にもう一つ。一昔前、スティールパートナーズがソトーという会社に敵対的TOBを実施しました。その際、ソトーは経営陣とエヌ・アイ・エフベンチャーズによるMBOで対抗しようとしました。しかし、スティールパートナーズも買付価格を引き上げました。その後、買付価格の引き上げ合戦になりましたが、最終的にソトーはMBOをやめ、大幅増配を行うことで防衛しました。なお、エヌ・アイ・エフベンチャーズは大和証券系列で、ソトーのMBOにおける公開買付代理人は大和証券でした。

 MBOで対抗する場合、買付価格がポイントです。本来は買付価格の引き上げ合戦などになってはいけないのです。なぜなら、経営陣は会社の内部情報をすべて知っているのですから、最初に提示する価格を適切な価格に設定する必要があります。もし引き上げ合戦になってしまった場合、株主は「最初の買付価格はどういう意味だったのか?会社の内部事情を知る経営者が株主から不当に安く買い付けようとしたということか?」と批判するかもしれません。買付価格は慎重に検討する必要があります。なお、ソレキアのBPSは6,340円です。BPSを下回るような価格で買い付けようとした場合、本当にそんな価格でMBOをしてよいのか、という議論もあろうかと思います。

 昨日の14:40頃に、瞬間、株価が下がりました。14:40にソレキアが留保の意見表明を公表しました。もしかしたらマーケットが「何らかの具体的対抗策が出ると思っていたのに、留保の意見?」と見なして株価が下がったのかもしれません。このタイミングでなんらかの対抗策が出てこないことは敵対的TOBを経験している実務者であればわかりますし、当然、留保の意見表明+質問権行使であることは百も承知です。マーケットは敵対的TOBの流れがわかっていないのかもしれませんね。

繰り返しになりますが、本コラムは株式投資を促すことを目的に記載している訳ではありませんし、ソレキアへのTOBに関して私は外部に公表されている情報以外なにも知りません。あくまで外部情報から分析したコラムです。念のため。

 

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