2017年02月23日

No.62 対質問回答報告書を見ると~やっぱり1回だけの質問権では機能しません~

 現在、佐々木ベジ氏がソレキアに対して敵対的TOBを実施中です。先週2月16日(木)にソレキアが質問権を行使しました。本日2月23日(木)に佐々木ベジ氏が対質問回答報告書を提出しました。質問権の行使からちょうど5営業日ですね。回答内容を精査した上で、ソレキアがTOBに対する賛否の意見を表明する流れになります。

 では、ここで、佐々木ベジ氏からどういう回答が提出されたのか見てみましょう。と言っても全部掲載すると21ページになってしまうので、特徴的な回答をいくつか列挙します。全文はEDINETでご覧いただけます。

 まず回答の冒頭です。

 回答の冒頭において、「突然TOBを実施して驚かせてしまってすみません」という趣旨のお詫びを書いています。いやー、謝られても・・・ソレキアからすると「謝るんならするなよ!」でしょうか・・・

そして、デューディリしてないから回答できない質問もありますよ、と言っています。冒頭から「あんまり具体的な回答してないんだろうな」と思わせる内容です。そして、リーガルアドバイザーにはソレキアから多額の報酬が支払われているのだから「独立した存在であり、公平な存在であると言われても、私にとっては大いに違和感がある」とケンカを売るような主張をしています。まあ、ソレキアは単に外部の法律事務所に助言をお願いしたと言っているだけだと思いますが・・・

 そして個別の質問に対する回答です。

 同業他社との比較は回答していませんね。ソレキアは「うちがROEやPBRを重視していないって何で言えるんだ!」と聞いているのですが、「だって結果的に低いじゃん!」と答えているということです。

 具体的かつ詳細に事業上のシナジーを説明しろと質問しましたが、詳細についてはソレキアとの面談で話し合いましょうとかわされましたね。

 具体的かつ詳細に教えろと質問しましたが、具体的な質問じゃないから具体的な回答はできませんと回答されてしまいました。

 たぶん「大幅な自己株取得や増配をして回収しようとしているんだ!」とソレキア側が主張したいからこういう質問をしたと思われますが、当然、こういう回答でしょうね。

 これもですね。話し合いで決めましょう、という回答です。質問に対する回答にはなっていないですね。

 

 いかがでしょうか?これが法律で認められている質問権を行使して得られた回答内容です。敵対的TOBに対する賛否を判断するための十分な情報が得られたでしょうか?これが買収防衛策を廃止する際に言っている、整備されたTOB制度です。当然、回答内容が不十分であることを理由に反対しても構いません。

 私は決して買収者側の対応が不誠実と言っている訳ではありません。「話し合わないと回答できないよ」「そんな重要なこと、おおやけの場で言えないよ」という質問もありますから。これが、買収防衛策に則った質問と回答のやり取りであれば、もっと実のある対応になっているはずなんです。たった5営業日でまともな回答が作れる訳がないんです。そして、1回だけしか質問できないのだから、まともな回答を作る気もないでしょう。

 もし買収防衛策導入企業に対して買収提案がなされ、質問と回答のやり取りの中で「重要な経営施策だから回答できない」という趣旨の回答をしてきたら、「じゃあ守秘義務契約を締結した上で回答してください」と返します。それでも回答しないようだったら、「ここまでお願いしたのに買収者は回答しなかった」という反論材料になる訳です。回答してこない、もしくは、回答しても内容が不十分な場合、買収防衛策があれば追加で質問できるんです。でも、買収防衛策を導入しておらず、突然TOBを仕掛けられると、この程度の回答しか得られないということです。

 もちろん、ソレキアの件においては、プロであるリーガルアドバイザーはこの程度の回答しか来ないことは十分認識していたと思いますよ。TOBが始まってしまった以上、抜本的な対抗策を打つしかないんです。少なくともソレキアのケースにおいては・・・

 以前申し上げた通り、大幅増配・MBO・ホワイトナイトによるカウンターTOBの3つくらいではないでしょうか?もちろん、放っておく、という選択をすることもできます。

 ソレキアは対質問回答報告書が提出されたということをプレスリリースし、本日公開買付者から提出された対質問回答報告書の内容を精査し、公開買付者が公開買付届出書において開示したその他の情報とあわせて本公開買付けについて慎重に評価・検討を行った上で、早急に株主の皆様へ本公開買付けに対する当社の意見を表明する予定です。株主の皆様におかれましては、今後当社が行う予定の再度の意見表明及び当社から開示される情報に引き続き十分ご留意いただき、慎重に行動していただきますようお願い申し上げます。」としています。ちなみに、すでに意見表明報告書を提出していますから、賛否の意見表明の期限はありません。提出している意見表明報告書の訂正、という形で書類を提出します。かと言ってあまり遅いと、株主が佐々木ベジ氏のTOBに応募してしまうかもしれませんから、ある程度のスピード感をもって対応すると考えられます。

 あくまで想像ですが、来週中くらいには賛否の意見表明がなされるかもしれませんね。

 

このコラムのカテゴリ

関連する
他のコラムも読む

カテゴリからコラムを探す

月別アーカイブ